テラーノベル
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まだ私が冥府軍に襲撃される前。ここはまだ緑が広がる平和な樹林そのものだった。自分はそこで生まれ育った。決して人間界のような人盛りの多い場所ではなく、静寂。
だけどある時から冥府軍の活発さによる襲撃で私の居場所はなくなった。ヤツらのせいで。
でも武器だけは無事だった。それは――古き弓。
それを活用して今まで敵と少しずつだが戦いを繰り広げ。
頭を打ったせいか、途中で記憶が抜け駆けていたことに気づく。
そして気がつけば、
油断していたせいで攻撃を目前にして避ける間もなくくら…ってはいなかった。
黒い影に守られたことを。
地上にはびこる冥府軍を次々と自身の弓で射撃していく。
見ての通り、なんとか弓自体はもちこたえているがいずれは――。
風によって黒髪が揺らされ、服装もボロついたまま最後に残ったミックを撃ち抜き。
「ふぅ……」
何とか倒せたものの、汗ばみながら地面に座り込む。その様子を誰からも見られることなく。
弓使いの彼女が街に帰還すると冥府軍の出現を解決してくれた自分のためにある人から褒美を受け渡された。
「はい、コレ。」
「……?」
「毎日のように冥府軍の退治を任されているだろう?その詫びをさせて欲しいんだ」
「君みたいな優秀な戦士はなかなかいないからさ」
「せん…し」
「もしや、無自覚?そんなことあるんだね」
「思いも…しなかった」
今回だけ特別と感じた彼女はその詫びを受けとり、ありがと、とだけ伝える。どういたしまして、とすぐに返事が返ってきた。
そのあとは、ボロかけの服装をどうにかしようと新服に着替え始める。もちろん場所は部屋にて。そこは和風を感じさせる空気と畳。両方がベストマッチしている。
新品に着替え終わるとスッキリしたかのように満点の青空を眺める。外はなんの異変も起こらず平和が長引いている。嘘みたいに思えるが本当だ。
貴重な弓を所持し、次の旅へ向かおうと――だがそれはもうとっくに手遅れであった。なんならこれは昔の話なのだから。
「うぐ……ッ」
息絶えながら片目で前方を見る。予想を遥かに超えた敵軍に地上を襲撃され今に至る。もう自身の体力など限界を超えてしまっている。次の一発で確実に……死確定。立ち上がろうにも立ち上がれず。既に弓が敵の目の前に。踏み潰される前に必死にもがこうと片手を必死に伸ばす。
だが相手は待ってくれないことを悟る。とっくに次の攻撃が迫ってきていることに気づいた彼女は死を覚悟し、目を伏せる。だがその時全くノーダメだった。何が起きたかとゆっくりと視界を再開させ。
「……!?」
大丈夫か。突然立ち塞がれた悪魔のような影にそう声をかけられた。しばらく返事が整ってないため、無言。彼女から視線を逸らすと己の神弓シルバーリップを強く握りしめ、相手と対抗する。
「なに…起きて…」
そこからの記憶が全くなく、地面に伏せるよう気絶。
それからというもの、
あの時黒い影に助けられた借りがまだ返していないと思った彼女は街並みから外れた場所を訪れる。
「……いない、か。」
「こんなところ…いるわけ…」
それでも必死に探索を行う。朝から朝食なんぞに手間をかけてる場合ではないと思い、あえて食事を摂取してこなかった。その黒い瞳の視力でできる限り行けそうな地帯まで歩こうとしたその時、黒とは逆に白…天使の少年が翼を広げ、飛翔中の後ろ姿が。
「いやぁ参ったな。その女の子が冥府軍を浄化するって…マグナの次にスゴイなぁ」
「ええ。人間の中で最も最強なのはマグナだけかと思っていましたが、肩並べにもちょうどいいですね」
パルテナ軍の中で最も最強と記される天使の少年、ピットとその上司であり、天界エンジェランドを治める光の女神パルテナ。ちょうどビジョンを確認しながらピットと頭に付けられている月桂樹越しに通信を繋いで話しかけている。そのある女とはすぐ真下に。
「ん?あの子…」
どうしたのかとパルテナに聞かれる、それよりも先程から追ってきている姿を見て我慢ならず目の前に降下。
「ねぇキミ、さっきからボクのあとをついてきてない?何か話でも…?」
話しかける前に「ピット、彼女の背中!」と驚いて注目するパルテナの声に動揺しつつ背中を拝見。
「翼…?!それも…黒い…!」
「…?天使」
「天使…!?」
これにはパルテナも「まあ!」と片手を口に当て、驚愕。
「そういえば、キミの名前は?ボクはピット!女神パルテナの使い。」
「ここからの距離だと遠いけど、天界ってとこのエンジェランドから来たんだ!」
「そう。
私…名前…分からない」
「え…」
「いわゆる記憶喪失…でしょうか。」
「でもそんな簡単に名前を失うこと…あるのかな」
うーんと考える様子に「あの…」と彼女から話しかけられ、考えを辞め、何?と答える。
「黒い人…見なかった?」
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