「そういえば初めてこの家に寄らせてもらった時にも、こうして本を読みましたよね?」
初訪問時の緊張感がふと頭をかすめる。
「そうだったな」と答えた彼が、次に思い出したようにも口にしたことに、よぎっていた緊張も相まって、ドキリとさせられてしまった。
「ここで初めて本を読んだ時には、君を膝に座らせていたと思うんだが、良ければまた……どうだ?」
自らの膝をぽんぽんと叩く彼に、「えっ……」と、固まる私──。
なんだか貴仁さんってば、時たま思いがけず積極的なんだもの……。それって、よけいにドキドキさせられちゃうっていうか……。
「えっと、あっ……いやでも、あれは私がつまずいたからの、その……つまり不可抗力でして……」
しどろもどろで断ろうとするも、
「……ダメか? 座ってはくれないのか?」
ちょっと照れ顔の彼にそんな甘えたなお願いをされたら、あまつさえ断われるはずもなくて……。
おずおずと膝の上に座ると、彼が後ろから手を回しバックハグのかっこうで本をめくった。
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