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『神童のバケモノ』
それは後に神童の3人の天才のうちの1人と言われるようになった小学生の呼び名。バスケ部へ突如現れた彼女は小学生とは思えないくらい運動神経が良く、日本代表を1人で圧倒するほどの実力の持ち主だ。
しかし、5年前にいきなり姿を消した。神童のバケモノは伝説となり実在したことを忘れかけられてる今、再び現れることになるのを知る人はまだいない。
星蘭高校では入学式が終わり、部活動勧誘に必死な2、3年生で校庭が溢れかえっている。その人ごみを避けながら歩いていたまどかは呟く。
「あんな思いするならバスケは二度としない」
一緒にいた大和は、心配そうな顔でまどかに話しかける。
「また卓球部に入るのか?」
まどかは小さく頷いて入部届けを出しに行った。
全員の自己紹介が済み練習が一通り終わった頃、まどかは先輩に話しかけられた。
「伊集院さんってもしかして神童の怪物って呼ばれてた?」
それを聞きまどかは頷いた。
その後部内がざわざわしだす。当然だ。強豪校でもない公立高校に全国優勝した事のあるお嬢様が入学していたのだから。
1週間が経ち、東京都予選が始まった。
各地区の予選を勝ち抜いた選手達が続々とコートに揃ってくる。この中から全国大会へ行けるのは団体1校と個人ベスト4まで。それを感じ、緊張する者、萎縮する者がほとんどだ。会場のほとんどの人達が神童学園を初め、強豪校が上位を占めるだろうと思っている。それを覆すかのような試合が今、始まる。
1回戦ではまどかが圧勝し、第1シードの神童学園と対戦していた。沢山ラリーをするがいつも決まるのはまどかのスマッシュだ。神童学園の応援団も思わず息を飲む。最後の1本をまどかが決めた時、相手が呟いた。
「こんな強い子誰が勝てるの?」
相手は高等部の3年生。まどかが神童学園中等部の卓球部に入ったのは2年生後半なので上級生はほとんどまどかが神童学園出身だと知らない。
まどかは着々とトーナメントを勝ち進み、決勝までたどり着いた。相手は神童学園キャプテンでエースの成瀬美和だ。美和はまどかに話しかける。
「まどか、久しぶり。今日こそ私が勝つよ。」
まどかが答えた。
「うん、久しぶり。今日も私が勝つよ。私に勝ったこと1度でもある?」
美和は「今日勝つの」と言い、ポジションにつく。
審判のコールで激しい打ち合いが始まった。まどかが圧倒的な差で勝つかと思いきや、お互いに1歩も引かず、デュースになった。しかし、そこからは会場にいた人々の目に焼き付く結果が出た。まどかがスマッシュを鮮やかに、ラリーを許さず撃ち抜いたのだ。
東京都予選個人戦の優勝者が決まった。
神童の怪物、伊集院まどかが星蘭高校へ進学したことを皆が知る瞬間となった。