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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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実践魔法学の授業は、時間通りに始められた。生徒たちに語りかける博神先生の声が、中庭の空に響く。



博神青紫

「はい、今日の授業では一節詠唱をしていきましょう。一節詠唱がどんな魔法かは、みなさん知っていますか? ……はい、そこの人。説明できますか?」



指名された美音は、やや緊張した声で答える。



美音

「えと、術名の詠唱のみで発動させる魔法のこと……ですよね?」


博神青紫

「そうです、正解です。よく予習していますね」



博神先生は冷淡に答えながらも満足そうに頷き、言葉を続ける。



博神青紫

「一節詠唱はやや特殊な魔法。通常の魔法が『起源・形態・命令』の三節の後に術名を詠唱する形式が基本であるのに対して、一節詠唱では術名の詠唱だけで魔法が完成する。通常の魔法に比べると威力や規模には劣るし、応用性にも乏しいのは事実。しかし、詠唱が短い分発動が速く、使い方次第では非常に有益な魔法でもある」



菜乃葉と同じ一般クラスの生徒たちは、皆が博神先生の話に熱心に耳を傾けている。一方特選クラスの生徒たちは、大半が馬鹿にしたような態度で博神先生の話を聞き流していた。貴族として英才教育を受けている彼らは、一節詠唱程度の魔法はとっくに習得しているからだ。それに、貴族たちの中では一節詠唱を低俗で下らない魔法だと見る風潮が主流だ。貴族たちは伝統的に、格式ある詠唱や魔法の規模を重視する傾向にあった。



博神青紫

「今日は【〜弾ストラクタ】と【〜壁ウォーレン】の2つの一節詠唱を練習していく」



そう言って、博神先生はそれぞれの魔法を実演してみせる。


【〜弾ストラクタ】は所持魔法で拳ほどの大きさの球を生成し、狙った方向に飛ばす魔法だ。威力という意味では、拾った石を投げるのとそう変わりはない。しかし、その発動の速さは魔法使いにとって貴重だ。ちなみに、【〜弾ストラクタ】の『〜』の部分には、所持魔法の共通語が入る。光魔法の場合は【光弾ストラクタ】のように。



一方、【〜壁ウォーレン】は地面から所持魔法の壁を作り出す魔法だ。生成速度や壁の厚さ、強度は術者の練度やコントロールによって変化する。しかし習熟しておけば、とっさの時に頼もしい防御手段となる。



博神青紫

「魔法の概要はわかったか?では散らばって、練習を始めてください。私は回りながら指導していく。ああそれと、魔法は決して人に向けて撃たないように!」



博神先生の指示に従い、生徒たちは各々に練習を始めていく。



美音

「ええっと、こんな感じかな……【炎弾ストラクタ】!」



美音が作り出した炎弾は弱々しく前方に飛びだしたものの、すぐに失速して地面に落ちてしまった。


美音

「あ、あれ〜?」


氷流

「う〜ん…生成までの流れはいい感じだけど、少し魔法力が込め足りないかな。体の芯から持ってきてあげるイメージでやると、少し良くなると思うよ」


美音

「あっ、そっか! ありがとう、氷流!」



氷流の言葉を受けて、美音は笑顔で練習を再開させる。


一方、菜乃葉は眉間に皺を寄せていた。


菜乃葉

「ッ…【光弾ストラクタ】!」




詠唱はするものの、なかなか光の生成が終わらない。たっぷり時間をかけて生成された光弾は、数秒経った後にやっと発射された。



氷流

「菜乃葉は逆に、ちょっと余計な力が入り過ぎかな。一節詠唱といっても、術式の構築過程や魔力の流れ方は普通の魔法とそう変わりない。無駄なく魔力を流すように意識すると、発動も速くなるんじゃないかな」


菜乃葉

「ふーん…ありがと、意識する」


ちなみに、今日は菜乃葉は杖を持ってきていない。なので杖に魔力を込めるような感じを意識してしまい、魔力を込めすぎるというのは杖がないときによくある菜乃葉の癖だ。


氷流のアドバイスを受けながら練習する2人。しばらく練習を続けると、2人の魔法は見る見るうちに上達していった。


夏菜

「この短時間でこんなに上達するとは……すごいな2人とも」


美音

「ううん、氷流の教え方が良いんだよ!」


菜乃葉

「本当に。とても同じ新入生とは思えない……」


氷流

「ああいや、一節詠唱はたまたま得意なんだよ。だからかな、うん」




菜乃葉の鋭い指摘に、氷流は首を振って慌てて誤魔化す。もっとも、氷流が一節詠唱を比較的得意としているのも事実だ。一節詠唱は余計な詠唱部分がない分、無詠唱と近い感覚で使うことが出来る。氷流にとっても制御しやすい魔法。


夏菜

「よし、【ストラクタ】の練習はこんなもんでいいんじゃない? そろそろ次の魔法の練習を始め_」


「【炎弾ストラクタ】!」



夏菜が言葉を続けようとした時、背後から鋭い詠唱の声が響く。と同時に、弾丸のような速度で火球が迫り来る。



シャークん

「__【風壁ウォーレン】」



応えるようなシャークんの詠唱。瞬時に生成された鉄壁の風が炎の弾丸を防ぎ、鈍い衝突音が大きく響く。


結果だけ見れば、誰も何も傷ついていない。しかし、夏菜は苦りきった顔をしていた。



シャークん

「…………ざけるなよ」



そんな夏菜に、炎弾を放った張本人_モブクズ・クラウドは半笑いで話しかける。



「おーおー、よく防いだなぁ、庶民。ついうっかり魔法がそっちに飛んでしまったみたいだが、やっぱりお前は運が_」


夏菜

「ふざけるなッ!」



夏菜の怒号に、一瞬場が静まり返る。


夏菜

「お前いま、瑞夏を狙ったな? それがどういう意味か……お前は本当にわかっているのか?」


「……な、なんだよ急に。ち、違うぞ? 今のはただの事故で……」



ゆっくりと迫る夏菜に、モブクズは思わず、といった様子で一歩後退る。瑞夏はカタカタと震え、菜乃葉の腕に必死に掴まっている。そんな瑞夏を見て、さらに夏菜は怒りで震えが止まらなくなった。



夏菜

「魔法、それはお前が遊びで人に向けていいものじゃない。瑞夏に謝れ、モブクズ!」


「だ、だから事故だって言ってるだろ! それに、俺が庶民に謝る理由は何もない!」




濁りきった目で、開き直った態度を取るモブクズ。



夏菜

「……理由、か。そっちがその気なら、俺にも考えがある」



夏菜は普段使わない『俺』という一人称を使い、そう言って、モブクズの足元に自身の手袋を投げつけた。その様子を見て、突然の事態の連続に硬直していたシャークんや菜乃葉が、一斉に悲鳴のような声をあげた。



シャークん

「待て、夏菜!お前がどれだけ強いだろうが、貴族を敵に回したら……!」


菜乃葉

「おい、夏菜。それは…」



そんな2人の声が聞こえないかのように、夏菜は躊躇なく言葉を続けた。



夏菜

「モブクズ・クラウド。夏菜の名において、貴様に決闘を申し込む」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


シャークん

男性


天然味があるサイコパス

この物語内では騎士の家計で産まれた、氷流の双子






すみません氷流さん!!少しこちらで設定をつけてしまいました!!!

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