※attention
対峙する2人はいません。快新(快)、K新です。長くなったので前編後編に分けました。今日か明日に後編を更新します。
※この物語は以前公開していた「They’re like two peas in a pod‼︎」の再掲です。この物語を公開するにあたって非公開にさせていただきました。
大幅に加筆修正し、タイトルも変更しましたが、話の大筋は変わりません。
怪盗と名探偵の対峙。一見、いつもと何ら変わりないように感じる場面だが、
闇夜に包まれた月のように、怪盗もまた絶体絶命の闇に包まれるような窮地に陥っていた。
実際いるのは学校だけれども…
「よう、黒羽快斗さん?、いや…怪盗キッド?」
「お、オメーは…」
そう、正体を知られてしまったのだ。
「ケケケ!今回も楽勝だったぜー!」
自分が大々的に取り上げられたネット記事を見た快斗の声が、部屋中に響きわたった。
それほど興奮するのも無理はないだろう。今回の現場には工藤新一はおろか、白馬探すらおらずあまりにも楽勝過ぎたのだ。
コナンとその仲間たちによって黒ずくめの組織が討伐されて以来、コナン、もとい新一は現場にほとんど来なくなった。「楽勝」には名探偵がいないと犯行にスリルが足りない、という意味も含まれているのだ。
加えて、白馬は一時的にイギリスに帰国しているらしい。
「さてと、次の獲物は…」
“深紅の涙”
現在、このビッグジュエルがパンドラという説が最も有力らしい。 むしろこの宝石以外あり得ないと言った方がいいだろう。
その説を裏付けるかのように、この宝石に関する情報は天下の大怪盗でさえ全くと言っていいほど手に入らなかった。あのとき、紅子に聞くまでは。
紅子には散々と忠告を貰ったが、ここまでやってきて今更諦めるつもりは毛頭ない。
最後になるであろう犯行では怪盗キッドの死を偽り幕を閉じようと考えている。
しかし、組織を壊滅させるためにはあいつの力が必要だ。ちょーっと利用させてもらうぜ。
オメーならオレの意図に気づいてくれるだろうか。
「えーいキッドめ!お前たち何をしてる!追いかけろ!!」
館内に中森警部の声が響き渡ると、定位置についていた警官が次々に外へと出ていく。
「名探偵にも予告状を出したのにこんなにスムーズに盗み出せたのはおかしいな。っつーかそもそも来てないのか?」
こんなことでブルーな気持ちになっていたらだめだと、これからすべきことを考えながら気持ちを切り替えた。
裏口から屋上に着いた快斗はまず深紅の涙と呼ばれるビッグジュエルをかざした。
すると、名前にそぐわない青色の見た目をした宝石が月に照らされ、中心部分が赤く輝いた。
「ハッこれがパンドラか!?」
思っていたより簡単に見つけられてしまったことに対して、言葉にならないほど思いが込み上げてきて、快斗はしばらくパンドラらしきその宝石から目を離せずにいた。
組織が狙っていたパンドラ──
涙を飲むと不老不死になれる?ふざけるな。この宝石のせいで今まで何人もの命が奪われてきたと思ってんだよ。
そんな思いを持ちながらなかなかその宝石を壊す気にはなれなかった。
これを破壊すればこの姿はもう必要なくなってしまう。しかし、まだ組織壊滅には至っていない。必要に応じてまた怪盗キッドという姿を利用し、裏で動くことがあるかもしれない。
ただ、これを破壊したらもう名探偵には──
オレは一体何が名残惜しいんだよ。…きっと名探偵が来ていないせいだ。
それもただ寂しいからではない。利用しようと考えていた相手が来なかったことによって計画を少しだけ変更せざるを得なかったからだ。そうに違いない。
予想に反して組織は快斗を狙うことはなかった。おそらく、本当に紅子すら今まで知ることのできなかった極秘情報なのだろう。
じゃあな、名探偵。
パンドラに力を込め、宝石を粉々にした瞬間、屋上の扉が開いた。
「キッド!!」
声のする方を向くと、そこにはもう二度と会わないと決意をしたばかりの相手がいた。
「め、名探偵、なんでここに!」
「なんでってオメーがここに呼んだんだろ?」
「でも、今日来てなかったんじゃ」
「悪ぃ。たまたま別件と重なって遅くなった。っつーかオメーらしくないな。やっと監獄に入る気になったか? 」
快斗の目にうつったのはいつもの名探偵だった。しかし、ここで悠長にしてる場合ではない。”怪盗キッド”はここで終わらなければならないのだ。
「ハハハッ確かに私らしくありませんでしたね。あいにく捕まるわけにはいきませんので。ではまたいつか、幻の舞台でお会いしましょう……名探偵。」
「なっ!キッド!!」
「───ですよ」
怪盗が名探偵へチュッと口付けをすると、何かを耳元で囁かれ、屋上からスッと姿を消した。
新一はいつも通り怪盗キッドが逃走したものだと思ったが、今日はどこか様子が違った。
嫌な予感がし、屋上から下を覗き込もうとした瞬間ドスッと鈍く大きい音が響き渡った。
慌てて下を覗き込むと、何か大きいものを慌てて運んでいる手下であろう姿があった。
まさか…死んだ?いや、そんなはずがない。手下が構えていた時点でそれは違うだろう。そうなるとあいつはそう見せかけようとしたのか?一体何の為に?
急いで階段を駆け降りていったが、そこには遺体はおろか怪盗キッドのものと思われる血痕すらなかった。
続く
コメント
4件
良いところで終わるやん
やっぱ最高……!!! しかもタイトルもめちゃくちゃかっこいいし……✨✨ 改めて読むと快斗にとって"キッド"という姿は本当に大切だっていうのがよく伝わってきた💭