月明かりの下、俺は再び木刀を構え直した。だが、視線は定まらない。脳裏に焼き付いているのは、瑞が楽しそうにdnの乱れた髪を結い直している光景だ。無意識に彼女の手首を掴んだ時の、あの温もり。…他者の存在に動揺している自分がいた。
「…っ」
集中力が途切れた。一瞬の隙。dnは見逃さなかった。俺の重心が僅かにぶれた瞬間、彼の木刀が俺の胴に鋭く触れた。乾いた音が響き渡り、勝負ありを告げる。
「え…あ、ごめん…当たっちゃった」
「、俺の負けだよ」
俺は肩を落とし、苦笑いを浮かべた。心の乱れが招いた結果だ。木刀を脇に置き、演武場の端にある石段に腰を下ろす。
ひんやりとした夜風が、火照った頬を撫でた。空には満月が煌々と輝き、無数の星々が瞬いている。
「綺麗…」
「そうだね」
隣に座るdnを見つめる。化粧を少し施した眦が月明かりに照らされ、いつもよりずっと艶やかに見える。先ほど瑞に結い直してもらったという髪も、今は月光を受けて白銀に輝いていた。
「疲れたでしょう。今日は忙しかったって言ってたし…」
dnはそう言って、もたれるように俺の肩に頭を乗せた。ふわりと、甘い香りが鼻腔をくすぐる。俺の心臓が早鐘を打った。
「…少し」
「‥少し休んで行く?」
dnは俺の肩に体重を預けたまま、満足そうに目を閉じた。穏やかな寝息が聞こえ始める。俺は隣で眠る愛しい人を見つめ、自然と口元が緩むのを感じた。
結局のところ、こうして無防備に寄り添い、一番近くにいるのは自分だ。彼の香りも、温もりも、この心臓の音を聞いているのも、他ならぬ自分自身。
「…本当に、敵わないな」
俺はそう呟き、ゆっくりと立ち上がった。眠りこけたdnを、そっとお姫様抱っこで抱え上げる。戦の時より幾分か体重が戻ってきていて安堵して。大切そうに腕に抱いた。
演武場から宮へ戻る廊下は静寂に包まれていた。月明かりだけが二人を先導する。腕の中の温もりを噛みしめながら、彼が自分のものであるという揺るぎない事実に、深く満たされながら。
NEXT1000
どうでしょうか…ちょうど母が今帰ってきました笑間に合ったー!!!
コメント
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はわぁ、今回もなんてなんて文章が美しいのか……すごいですわ……そして、しっっかりときゅんきゅんさせらる。。dnさんを思うmfくんの気持ちがもう、、きゅんきゅんです✨🥰抱っこして体重戻ってるなって安心してるの好き!! お母様との時間勝負最高!!w
今更なんですけど…モチーフは薬屋のひとりごとでしょうか? 今回も最高です!! Mfくんがdnちゃんの無防備な姿を見れるのは自分だけということがわかって嬉しそうなのが神です!! 次も楽しみにしてます!!
うん、とんでも良きです!! きっと剣技で負かしてしまうのも、mfくんを全てにおいて乱してしまうdnさんだけなんでしょうね! お互いに愛ゆえに乱して乱されて…なんて尊い関係性なのでしょうか…‼︎ 純愛ありがとうございます、摂取しました癒されました💕