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初めは変わった人だって思った。
体調が悪いと言っている割には顔色は良いし、話をしようとか言ってくる1個うえの先輩。
それでも君のことが知りたいなんてセリフについ頷いてしまった俺も大概だったけれど。
色んなことを聞かれた。先輩自身のことも教えてくれた。
俺の話を優しい顔で聞いてくれた人が初めてで嬉しくてつい話しすぎてしまった気もするけれどそれでも嫌な顔ひとつせず頷いてくれた。
話すことが楽しいと思ったのは初めてだった。
また話がしたくて別れ際ついまた話したいなんて言っちゃって、それでも頷いてくれたのが嬉しくて飛び跳ねるほど喜んだ。
さとみ先輩さとみさんさとみくん。
何度も名前と顔を思い出して、次がくるのを待ち侘びた。
話を重ねていくうちにどんどん仲良くなっていった。うっかり零した過去の話。さとみくんは俺がいるよと抱きしめてくれた。
何度も望んだものをさとみくんは全てくれる。
それが幸せで嬉しくてカッターも薬もいらなくなった。
….けれどそんな時、誰かにストーカーされ始めた。
どうしてこうも俺の人生は上手くいかないのだろうと思った。
初めはポストに入った盗撮写真。
次は下校中の尾行、シャッター音。
怖い。誰。なんで。目的は何。
さとみくんに相談して一緒に警察にも行ったけれどまともに取り合って貰えなかった。
そしたらもう俺には頼れる人なんてさとみくんしかいなくて、
毎日不安でまたカッターも薬もないとだめになっていった。
学校で疲弊してストーカーに恐怖して、さとみくんに縋り付く。
どんな俺も受け入れてくれるさとみくん。
さとみくんがいない世界を想像するのは怖い。
だからしばらく会えない不安の期間の中でさとみくんに恋人がいるかもしれないと思った時どうしようもなく動揺した。
また独りになってしまう。それ以上にさとみくんを取られてしまうのは嫌だなんて子供じみた我儘。
泣きながら縋り付く俺の情けないこと。
でも実際はそんなことなくてさとみくんは俺が1番だって言ってくれた。
もう君がいるならなんでもいいんだ。
誰でもいいと叫んでいたはずだった。でも今はさとみくんじゃななきゃだめだと叫んでる。
一緒がいい。ずっと一緒にいたい。なんて
優しさに絆されてつい零した我儘もさとみくんは拾ってくれた。
あの日たまたま保健室で出会った君が俺を救ってくれるなんて思ってなかった。
ファーストキスはレモンの味だとかいちごだとかよく聞くけれど感じたものはもっと別の何かで、
優しい瞳じゃない初めて見たその目に心臓がうるさいほど音をたてていた。
気がついた。さとみくんにキスをされるまでこの気持ちの理由を知らなかった。
愛なんて無縁の世界で生きていたから。恋なんて見えない世界で生きていたから。
再び降ってきたその唇に全てを委ねて目をとじた。