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朝起きると、私の頭に猫耳が生えていた。もれなくしっぽもついている。昨日の薬の実験が原因だろうか…?いや、別に飲んだわけでも爆発したわけでもないし、そうれはないはず。だとしたら考えられるのは…
いつもの帽子と服で猫耳としっぽを隠しながら目的の人物の部屋の前に行き、思いっきりドアを開ける。
「私に何を盛ったんですか???」
「別に何もしておらんが?????」
帽子を脱いでキッと睨んで問い詰めたが、表情をピクリとも動かさずに将校殿はそう答えた。貴方ではないのですか、と驚いた表情で見つめていると、失礼なこと考えてないか?と指摘されてしまった。
「とにかく、オレは何も知らん」
「はぁ…じゃあこれは一体……」
原因不明。それが一番怖い回答だ。私はため息をつきながら少しでも何かやらかしたかを思い出そうと頭を抱えた。
しばらく考えてからふと横を見ると、何か考えているような仕草をとった将校殿が、あと少しでも動けば触れあってしまうほどの近い距離で私のことを見ていた。
「に゛ゃっ!?!?」
変な声を出してしまいながらも急いで将校殿から距離をとる。ばくばくという心臓の動悸が煩い。驚いたからか、それとも将校殿に向けた恋心からか。どちらにせよ心臓の動悸がなかなかが治まらない。顔が赤くなっていることを気づかれていないだろうか?いや、気づかれていないことにしよう。恥ずかしさでどうにかなりそうだ。
しばらくの沈黙の末、やっと将校殿が口を開いた。
「なあ、参謀。撫でてみてもいいか?」
急に近づいてきて、急に喋ったと思ったらなんなんですかいきなり!?
「嫌です!!」
反射と言っていいほどの速度で否定の言葉を将校殿に投げかける。今の私が貴方に触られて冷静でいられる自身が全くない。だが、身体が言う事を聞かず、将校殿の方へ歩いていってしまう。
「身体は正直だな」
「その言い方やめてくださいませんか?」
二ヤリと悪戯っぽく笑った将校殿がにじり寄ってくる。せめて視界だけでも制限しようとギュッと目を瞑る。
将校殿の手が私の頭に触れ、さらりと撫で始めた。正直言うと、気持ちがいい。すごく撫でるのが上手い。撫で続けて欲しい気持ちと恋心と羞恥という感情の関係で止めて欲しい気持ちが混ざり合い、もう心の中がぐちゃぐちゃだ。おまけに、自身の喉からごろごろといった猫が気持ちいいと感じた時に出す音が聞こえてきてさらに顔が熱くなる。将校殿もそれに気がついたのか頭を撫でていた手をするりと顔の下に下ろし、再び撫で始める。だめだ、気持ちよすぎる……。ごろごろと言う音が更に大きくなって喉から聞こえてくる。
「可愛いな、お前」
「貴方はもう黙っててください」
しばらく撫で続けられた後、「もういいぞ、感謝する」という言葉と共にようやく解放された。きっと真っ赤であろう私の顔を隠すように俯きながら帽子を被る。では失礼します!!と叫び、逃げるように将校殿の部屋を出た。
はぁ…本っ当に貴方って人は……っ!!
仕返しに、私から薬を盛ってやろう。それで今日の将校殿以上に撫でまくってやる……!
私は自分の部屋に行き、将校殿にいずれ飲ませようと思い昨日調合した「猫耳が生える薬」のある場所へ移動する。が、昨日までそこにあったはずの薬が消えている。おかしい、絶対にここに置いたはずなのだけれど…。まさか…盗まれた?誰が?何のために?いや、理由に関しては今は重要では無いか。夜には鍵を閉めているし、窓が割れた形跡もない。ならば昨日部屋に来た人物が犯人だと考えるべきだろう。確か、昨日1人だけ……
「はっ…将校殿……っ!!!」
帽子を被ることも忘れて部屋を飛び出し、再び将校殿の部屋のドアを開けた。