テラーノベル
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翌日、
またカフェ。
望央は、
私の顔を一目見て言った。
「……あんた、
疲れてる?」
「え?」
「疲れてる“顔”じゃないのに、
中が静かすぎる」
「昨日さ」
私はストローをいじりながら言った。
「なんか、
嫌なことあったはずなんだけど」
「うん」
「言葉にできなくて」
「うん」
「そのまま、
終わった」
望央は、
しばらく黙ってから、
ぽつっと言った。
「それさ」
間。
「人として、楽すぎない?」
「……楽だよ?」
私は即答した。
「めっちゃ」
「だよね」
望央は頷いた。
「でもさ」
彼女は、
私のコーヒーを指さした。
「それ、
砂糖もミルクも入ってないのに、
“味、まあまあ”って言ってる感じ」
「味は、
あるんだよ?」
「あるよ」
「でも、
選んでない」
私は、
言い返そうとして、
やめた。
言葉が、
浮かばなかった。
「ねえ」
望央は、
声を落とした。
「感情ってさ、
面倒だけど」
少し笑って、続けた。
「省略すると、
自分の番が来なくなるんだよ」
胸の奥で、
何かが、
小さく鳴った。
「……私さ」
やっと出た言葉。
「このままでも、
困らない気がしてて」
「知ってる」
望央は即答した。
「困らないように、
してくれる人が居るんでしょ」
彼女は、
カップを置いて立ち上がった。
「だから言っとくね」
振り返って、
はっきり言った。
「それ、
夢としては最高だけど、
現実に持ち込むと、
自分が薄くなるやつ」
私は、
何も返せなかった。
でもその夜、
彼の「おかえりなさい」が、
少しだけ、
遠く聞こえた。
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