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「へぇ〜、アルテアと会ってたんだ」
王都を出て、遺跡のある湖畔へ向かっているニティアとフィニス、そしてルシオの3人。
「らしいんだけどさ、何を話してたか全然教えてくれないんだぜ?」
昨日の会話での自分のセリフを思い出すニティア。
【アルテアの言う通り。1番大切な人……だとおもう……】
顔が熱くなり、フィニスから無理やり視線を外した。
「べ、別にただの世間話だって言ってるじゃない!」
「さてはお前ら……」
「なによ」
横目でニヤニヤしながらニティアに視線を送るルシオ。
「女の子同士……言えないあんなことやこんなことを……!」
茶化すように言うルシオに、ニティアが一瞬考え込み、ゆっくりと口を開いた。
「まぁ……確かにおっぱいは押し付けられたけどね」
冗談混じりにいったその瞬間……
細めていた目を大きく見開くルシオ。
「クソっ!!なんで俺は昨日……朝イチギルドに顔を出さなかったんだ……絶景が見れたと知っていればっ!!」
そう言い、膝から崩れ落ちるルシオ。
フィニスは優しくルシオの肩を叩いていた。
⸻
「んで、フィニスは何か情報得られたの?昨日ずっと調べてたみたいだけど……」
「あぁ、一応調べられる範囲でだけどな」
前を歩くニティアとフィニス。
ルシオは大きく肩を落としながらトボトボ後ろを歩いていた。
「湖畔にある遺跡は、確かに紅の魔女直下の魔族と勇者が戦った場所で間違い無いみたいだな。ただ……」
「ん?」
「魔族を倒して以降、数百年の間は綺麗な湖畔だったらしいんだが、ここ十年くらいで水が急激に汚染……しかも、水質を調査に行った人や旅人なんかも数人行方不明になったこともあるらしい」
「え……なんでそれを放置してんの?」
疑問を口にするニティアに、いつの間にか真後ろまで歩みを進めていたルシオが口を開いた。
「必ずしも人が消えるわけでもなければ、そこに行かなければ別に害もない。遺跡も一応……調査はされ尽くしてるってことになってるからな」
「ん?」
首を傾げるフィニスに、笑いながら答える。
「まぁ誰も関心も示さなければ、気にもとめてない、言わば忘れられた遺跡ってことかな?」
ルシオは一歩前に出て、先頭を歩いて行く。
「忘れられた……か……」
「なに?聞こえなかった」
「いや、なんでもねーよ」
無意識にニティアにも聞こえないほど小さな声で呟いていたフィニス。
そのままくすりと笑い、雲ひとつない空へと視線を移しながら歩いて行った。
⸻
数日後……
綺麗な森の中に、木々が大きくひらけた空間。
茶色く濁っている大きな湖の正面に、3人が立っていた。
「ここかな?」
あたりをキョロキョロと見回すニティア。しかし、遺跡と言われるような建物はどこにも見当たらなかった。
「遺跡らしい物がどこにもないわね……ここじゃないのかしら?」
遺跡の入り口を知っているフィニスはニヤッと笑う。
「ニティアさん!入り口はあそこにあるんだぜ!」
そう言って湖の水が流れている方向をドヤ顔で指差すフィニス。
湖から水が流れ出ている所のすぐ近くにの地面をよく見てみると、大きな木々の根に隠れるように、石でできた階段があった。
「おぉ、やるじゃんフィニス」
簡単の声を上げるルシオと、ドヤ顔に少しイラついているニティア。
「そりゃ歯ブラシがここに眠ってるかもしれないんだからな!」
そう言い、根を掻き分け、3人は階段を降りて行った。
⸻
「なにここ……」
湖畔の地下遺跡。当然空も見えなければ、外からは明かりひとつ入ってきていない。
それにもかかわらず、遺跡の中全体がうっすらと青白く光っていた。
「この遺跡全体が、光る魔道石でできてる……ってことか?」
見たことのない光景に唖然とする3人。
「世界にはこんな景色もあったんだな……」
湖畔の水が流れ込んでいるのか、川のように遺跡の中を水が流れ込んでいる。
3人はその流れに従うかのように、奥へと進んでいった。
しばらく歩いていると……
「しっ……」
先頭を歩いていたルシオが口元に指を当て、身を低くしてその場で立ち止まった。
「……スライム?」
ニティアが小さく呟く。
3人の視線の先には、4〜5体のブニョブニョしたゲル状の塊が1箇所に集まりもぞもぞと動いていた。
「あいつらって魔力に反応して集まるんだよな?」
「集まるって言うか、魔力が好物なだけよ。別に魔力を食べなくても死なないのにね」
「ってことは、あそこになんかあるのか?」
2人がやり取りをしている間も、周りに視線を配っていたルシオ。だが、他に危険性がないことがわかると、体勢を元に戻し、ゆっくりとスライムに近づいて行った。
重なっているスライムの中心に見える小さな影。
そして、ニティアが近づいたことで、スライムの標的が小さな影からニティアへと移り、もぞもぞとニティアへと近づいきた。
「うわっキモっ!」
そう言い、後ずさるニティア。
フィニスはそんなスライム達を踏まないように避け、スライムがいた場所を覗き込むと……
「なんだこれ……?」
薄い蒼色の体毛。猫のような耳。しかし、顔の横にはヒレ。全体的には猫のようなフォルムをしているが、尻尾は魚の尾鰭のようにもなっている不思議な生き物。
その謎の生き物は体を丸めて蹲っている。
足元に集まるスライム達を蹴飛ばしながら、ニティアも謎の生き物を覗き込む。
「私も初めて見る……コアも無いし……魔物ではなさそうだけど……」
ルシオも首を傾げていた。
フィニスは、そんな生き物を抱きかかえようと、そっと手を伸ばし……
「ちょっ!危ないわよ!」
腕に抱きかかえると……その生き物が薄らと目を開ける。
「……」
「おぉ……生きてたか……」
しばらくぼーっと目を開けていたかと思うと、再びフィニスの腕の中へくるりと収まり目を閉じた。
その愛くるしい動きに、興味津々のニティア。
「え、可愛い……」
その生き物に触れようと、ニティアが手を伸ばすと……
「シャー!」
その生き物は大きく目を見ひらき、ニティアに威嚇をした。
「うわっ!なんなのよ!!」
「はっはっはー嫌われたもんだな〜」
そう笑いながらルシオも手を伸ばすと……
ペシっ
手を伸ばすと……
ペシっ
尻尾で手を振り払われた。
「うぉ……なんだこいつ……」
「あんたも嫌われてるじゃない!……でもなんでフィニスだけ平気なんだろう……人に懐いてるって感じでもなさそうね」
ニティアとルシオが目を合わせてそう話していると……
『お前達の魔力、気持ち悪いんだよ』
フィニスの方から聞こえた。フィニスを見つめるニティアとルシオ。
「いや、俺は何も言ってねーぞ」
そう言って腕の中にいる生き物を見るフィニス。
その生き物は目を閉じて大きなあくびをした後、フィニスをじっと見つめ、ゆっくりと口を開く。
『お前不思議なヤツだな……』
「喋ったぞ……!?」
腕の中の生き物が喋り出し、驚くフィニス。
『なんだ?そんな驚くことか?ボクはリヴァレー』
「お、おう。俺はフィニスだ……」
そんなやりとりを見てポツリと呟くルシオ。
「……精霊か」
「精霊?」
「多分な。同じ波長の魔力を持つものに懐いて、力を貸してくれる存在と言われているんだ。だから俺らの魔力とは波長が合わず気持ち悪がられ……魔力がない、逆に言えば波長が何にでも合ってしまうフィニスに懐いた……ってところかな」
「こいつがねぇ……」
じーっとリヴァレーを見つめる3人。
『お前ら、ボクらのこと知ってるのか』
そう言いながら、リヴァレーがニティアの足元を蠢くスライムをじっと見つめると……
川から大きな波が押し寄せ、スライム達を川へと飲み込んでしまった。
「!?」
「!!」
驚くニティアとルシオに、リヴァレーは偉そうに口を開いた。
『気持ち悪いそこの女。助けてやったお礼に、ボクの言うことをひとつ聞け』
「なっ!?誰が気持ち悪いよ!!それにあんな雑魚倒すのも面倒だっただけで、別に助けられてない!」
歪み合う1人と1匹。
「まぁまぁ……とりあえず話だけでも聞こうぜ」
『お前はやっぱり話のわかるやつだな』
フーフー鼻息が荒くなっているニティアには視線を合わせずに、とりあえずリヴァレーを撫でるフィニス。
ゴロゴロと言いながら、上機嫌になるリヴァレー。それを見て、さらに機嫌の悪くなるニティア。
八方塞がりのフィニスを見たルシオはくすくす笑いながら盾と腰を下ろした。
月白
969
羽海汐遠
10,439
コメント
1件
おお、第36話読んだけど、リヴァレーめっちゃ可愛いな!猫っぽいのにヒレと魚の尾ヒレ持ってて、しかも喋るって…精霊ってやつか。フィニスにだけ懐いて、ニティアとルシオには塩対応なのが笑えるわ。「気持ち悪いそこの女」ってニティアに言い放つとこ、最高にウケた。でも急にスライムを川に流す場面は「やるじゃん」って思った。フィニスの魔力が空っぽだから波長が合うって設定、なるほどね〜。次が気になるわ!