コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「なんだよそれ!」
「――――」
「だったら飯塚たちのことはどうすればいいんだよ?」
「私だって悔しいよ。出来るなら、1人ずつ引っ叩いてやりたいよ。でもね、本当にマナを守ろうと思うなら今は耐えるしかないの。冷静になって何が一番大切なのかを考えなきゃいけないの」
「くっそぉぉぉぉーーあぁぁぁぁぁぁーー」
俺は屋上を取り囲んでいるフェンスに向かって何度も何度も拳を打ちつけた。
「圭太――」
「わかった――。マナのためにここは我慢する。でも、今度何かあった時はおっ――」
「その時は私も一緒させて!」
「そっ、そうか――」
ゆずきは胸の前で握りこぶしを作って怒りをあらわにしていた。
「そうは言っても、私もこれからどうしたらいいのかわからないの。でも1つ言えることは、お腹の子をおろすようにマナを説得しなきゃいけない」
「マナは産みたいって言ってるんだよな?」
「言ってるけど仕方ないよ。高校生のマナに子供を産むなんて無理なんだから。それに親が許す訳ないし、議員のお偉いさんをやってる父親にこんなことがバレたら、スキャンダルを隠すために高校を辞めさせられて、どこか遠くの高校に入れさせられちゃうかもしれないよ」
「そうなると誰も頼る相手がいないじゃないか」
「だから困ってるの。先生にも親にも言えないし、頼れる大人もいないし、もうどうしていいかわからない」
ゆずきは頬を流れる涙を人差し指で拭っていた。
「おろすにしても、未成年のマナには保護者が一緒じゃなきゃおろせないだろ」
「圭太、マナを助けてあげてよ」
「――――。何とかやれるだけのことはやってみる」
学校が終わると、俺は1人で駅に向かって歩いていた。いつもと同じ道を歩いているのに、今自分がどこにいるのか、どこに向かって歩いているのかさえわからなかった。それでもずっと考えていることがあった。どうしたら誰にもバレずにおろすことが出来るのか? どうやったらマナが素直におろすと言ってくれるのか? そればかりを考えていた。家に帰ってからもそんな感じだった。夕飯を食べている時も、風呂に入っている時も、テレビを観ている時もずっと考えていた。寝ている時でさえもそのことでうなされたぐらいだ。
そして朝を迎えた。1つだけ良い案が浮かんだ。でも、これは諸刃の剣であり、自ら身を滅ぼすことにもなりかねない。でも、やるしかない。あとはマナを説得するだけだ。学校に行くとゆずきを屋上に呼び出した。
「悪いな呼び出しちゃって」
俺はフェンスを掴み、ゆずきに背を向けたままそう言った。