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(……手伝って、ほしい)
イギリスはその言葉を頭の中で何度も繰り返していた。
フランスと日本に言われた通り。ほんの少し言い方を変えるだけ。それだけでいいはずなのに——
「……無理だろうが」
小さく呟いた瞬間。
「何が無理なんだい?」
「うわああああ!?」
振り返ると、いつの間にか後ろに立っていたアメリカが首を傾げていた。
「お前いつからいた!?」
「さっきからだぞ!」
(最悪だ……!!)
心の準備が一切できていない。
「で?何が無理なんだい?」
「なんでもない!!」
即答。
アメリカは不思議そうにしながらも、いつものように部屋に入っていく。
「今日も来てやったんだぞ!」
「来なくていい!」
反射的に言い返してから、イギリスははっとする。
(違うだろうが!!)
「……いや、その」
言い直そうとするが、言葉が詰まる。
アメリカはそんなこと気にせず、勝手に椅子に座っている。
「なんか手伝うことあるかい?」
「……っ」
チャンスだ。
今だ。
(言え……言うんだ……!)
イギリスは拳を握る。
「……ひとつ、ある」
「お、なんだ?」
まっすぐな視線。
逃げ場がない。
「その……」
喉が詰まる。
(言えない……いや、言え!!)
「……手伝え」
沈黙。
「え、それだけ?」
(違うだろ!!!!)
内心で叫びながら、イギリスは顔を背けた。
「……嫌ならいい」
「いや、やるけど?」
あっさりと答えるアメリカ。
「で、何すればいいんだ?」
「……こっちだ」
結局、いつも通りの流れになってしまった。
(何も変わってない……!)
内心で頭を抱える。
庭に出ると、少し伸びた草が目に入る。
「これ、手入れするのか?」
「……ああ」
二人で並んで作業を始める。
しばらく無言。
(気まずい……)
普段ならこんなことはないのに、意識してしまうせいで変に緊張する。
そのとき。
「なあイギリス」
「な、なんだ」
「これ、こうした方が早くないかい?」
アメリカが自然に距離を詰めてくる。
近い。
「……好きにしろ」
「冷たいなー」
笑いながらも、アメリカは手際よく作業を進める。
「こうやって、まとめて——ほら」
「……っ」
手が触れる。
今度は、はっきりと。
「……!」
思わず固まるイギリス。
だがアメリカは気にした様子もなく、普通に作業を続けている。
(……またか)
ほんの一瞬の接触。
それだけで、こんなにも意識しているのは自分だけ。
「どうした?」
「なんでもない!」
強めに言ってしまう。
アメリカは少しだけ驚いた顔をしたが、すぐに笑った。
「変なの」
「うるさい」
少しだけ、空気がやわらぐ。
作業が終わる頃には、夕方になっていた。
「意外とすぐ終わったね!」
「……ああ」
達成感よりも、別のことで頭がいっぱいだった。
(結局、言えなかった)
“手伝ってほしい”
ただそれだけの言葉なのに。
「じゃあ俺そろそろ帰るね!」
「……っ」
その一言に、胸が少しだけざわつく。
(このまま、帰すのか……?)
気づけば、口が動いていた。
「……待て」
「ん?」
振り返るアメリカ。
イギリスは一瞬目を逸らし、そして——
「……また、来い」
「え?」
「……その、今日は助かったからな」
精一杯の言葉。
不器用で、遠回りで、それでも——
アメリカは一瞬きょとんとして。
そして、にっと笑った。
「当たり前だろ!ヒーローだからね!」
「……馬鹿」
呆れたように言いながらも、どこかほっとしている自分がいる。
「じゃあまた来る!」
「……ああ」
去っていく背中を見送りながら、イギリスは小さく息をついた。
(……少しは、前に進んだか?)
分からない。
でも。
ほんの少しだけ。
前よりも——
悪くない気がした。
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