テラーノベル
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しかし、甘い時間は長くは続かなかった。
麗奈がどれだけ新しい歌を歌っても、突飛なことをしても、視聴者は徐々に飽き、投げ銭の額は目に見えて減っていった。一人暮らしの資金には、程遠い。
「このままじゃ、ここから抜け出せない……」
焦りと、暗い山奥に閉じ込められる恐怖が麗奈を苛む。そんな焦燥感の中で、彼女のスマートフォンが、これまでとは違う特別な通知を鳴らした。
アカウント名:『渉』。フォロワー数8万人を誇る、SNS界隈の人気配信者だった。20歳の彼は、都会の洗練された空気を纏い、麗奈にとっては雲の上の存在だった。
『君の配信、面白いね。よかったら今度、一緒にネットゲームでもしない?』
「嘘……渉くんから、DM……っ!?」
麗奈はベッドの上で跳ね起き、胸の鼓動が耳の奥でうるさいほどに鳴り響くのを感じた。
自分が一番不安で、誰かにすがりたかった絶妙なタイミングで、憧れの人が自分を見つけてくれたのだ。
それからというもの、麗奈は毎日のように渉とネットを通じて連絡を取り合うようになった。
歳の近い、都会の優しいお兄ちゃんのような存在。毎晩オンラインで渉と一緒にゲームをして、他愛のない会話を交わす時間だけが、孤独な麗奈にとって、唯一の救いであり、息ができる空間だった。
『麗奈ちゃんは本当に素直で良い子だね。僕はいつだって君の味方だよ』
スマートフォンの冷たい画面に映る渉の優しい言葉を見つめながら、麗奈は甘やかな依存の心地よさに深く、深く沈んでいく。
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