テラーノベル
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山奥の閉鎖性は、インターネットの闇とは別のベクトルで、父・和田を追い詰めていた。
地域で立ち上がった『地域もりあげ隊』という組織。その実態は、古くからの同権意識を押し付ける強制的な集まりだった。
「和田さん、あんたの店も協賛金と、当日の炊き出し協力、義務だからね。地域の顔を立ててもらわんと」
そう言って店に上がり込んできたのは、町内会長であり、PTA会長も兼任する、清水という男だった。事あるごとに「自分がこの地域の顔だ」と言わんばかりの傲慢な態度を取り、村の人間は皆、清水を嫌っていた。だが、波風を立てるのが面倒なため、誰もが愛想笑いを浮かべて従っている。
和田の胸の奥で、黒い感情がとぐろを巻いた。
(あいつが生きていた頃、外国人の嫁をもらったと、村に汚い血を入れたと、さんざん奇異の目で見て爪弾きにしやがったのは、どこのどいつだ。清水、お前だろ……!)
自分たちの都合で地域を盛り上げるとなった途端、掌を返して「義務」だの「協力」だのと命令してくる態度に、和田は吐き気がしていた。だが、娘たちの生活を思えば、ここで孤立するわけにもいかない。
しかし、この清水の仮面の下には、さらにおぞましい歪みが隠されていた。
表向きには「地域の顔」として大声を張り上げ、道徳を説く清水だったが、夜の帳が降りると、彼は村の誰にも言えないような不穏な活動に身を投じていた。夜間巡回を口実に、誰の目も届かない暗がりへと消えていく清水の背中には、昼間の厳格さは微塵もなかった。
彼が闇の中で貪っていた、村の人間には絶対に知られてはならない歪んだ欲望。そして、その暗がりで行われていたおぞましい行為の全貌に、村の男衆がどう関わっていたのかは、この時点ではまだ、誰も知らない深い闇の中に隠されていた。
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