ー潜入当日ー
総悟「そろそろ暗くなってきたな」
栞「ところでこの格好で合ってます?」
総悟「女中に変装して行くんだ。他にどんな格好がある」
栞「もっとこう、ナ〇トとか忍たま〇太郎とかの『The・忍者』って感じのカッコイイのを期待してたんですけど」
総悟「忍者舐めんな」
栞「すみません」
完全に日が沈み人気が少なくなった。
総悟(今だ!)スッ
総悟さんから事前に教え込まれた合図が送られる。
それと同時に警護に見つからないよう物陰に隠れながら城の裏に回って行く。
城の裏さえ来てしまえばこっちのものだ。
栞「?!。これどうやって…」
表からでも分かってはいたが入口までかなりの高さの石垣があった。
総悟「途中まで登ってそこからこいつを使って窓に引っ掛ける。あとは綱を登って窓に入るだけだ」
そう言って渡されたのは長い綱の先端に先が鋭く尖ったフックが3つ付いた物だった。
(これで引っ掛けるのか……出来るかな)
不安だがやってみるしかない。
総悟さんは、持ち前の身体能力でスイスイと登って行く。
置いて行かれないよう私も必死で喰らいついていく。
栞「ここまでくれば…よし!」
渡された綱を窓目掛けて投げた。
窓の淵にフックが引っ掛かりあとは登るだけ。
窓の近くまで登った瞬間引っ掛けたフックが外れてしまった。
栞「うわっ!!!!」
パシッ
咄嗟に窓の淵に片手を掛けたお陰で落下せずに済んだ。
恐怖で汗が止まら無い。
(手汗が…)
総悟「栞!掴まれ!」
総悟さんが私の腕を掴み上まで引っ張ってくれた。
窓から中に入るや否や2人して地べたに座り込む。
栞「し、死ぬかと思った〜〜!!」
総悟「ヒヤッとした」
それから2人で側室達の部屋を目指して行く。
見つからないよう物陰に隠れながら進むが城の中は何やら騒がしい様子。
バタバタ…
廊下の奥から足音が聞こえてくる。
焦って近くの部屋に飛び入った。
中は誰も居らず、窓も無いためとても暗い。
すぐ近くで男2人組の話し声が聞こえ、障子に耳を当てる。
御家人A「まだ見つからぬか!!」
御家人B「あの娘の故郷も捜したが見つからぬ…」
御家人A「このままでは義時様の怒りが治まらぬ!そうなれば俺たちもあいつらみたいにされるぞ…」
御家人B「探せーーー!!!」
(「あいつらみたいに」……殿様は他の人にまで八つ当たりしてるの)
バタバタ…
栞「今殿様にここに居ることがバレたら私たちどうなるんですかね…」
総悟「さぁな。ただ、絶対に無事では済まされないという事だけは言える」
拷問か、または打首かそんな事を考えていると総悟さんは部屋の中を物色し始めた。
栞「何してるんですか?!」
総悟「確かここに…」
そう言いながら総悟さんは押し入れの布団を取り出し中を空にした。
総悟「あった!」
栞「何があったんですか?」
押し入れの壁の板を外すと小さな通路が現れた。
栞「コレって……隠し通路?!」
総悟「噂には聞いていたが本当にあるとわな。行くぞ」
栞「はい」
入口が小さい為四つん這いになりながら進んで行く。
栞「何であの部屋だって分かったんですか?それに噂の内容も気になりますし」
総悟「俺がまだ幼い頃、義時様には奥方様が居た。 奥方様は大層美人で知的な方だった。だから屋敷の者は皆奥方様の事をお慕いしていた 」
栞「素敵なお方ですね。それなのに殿様は離婚を? 」
総悟「いや、殺されたんだ」
栞「殺された?!一体誰に?!」
総悟「義時様だ。奥方様がここに嫁いで来てから義時様の政治に関する事に意見したのが気に入らなかったらしい
実際、奥方様がここに嫁いでくるまで義時様の政治への取り組みは最悪だった。」
栞「奥方様のお陰で政治が成り立って居たのにそんな事で殺されたの……」
総悟「嫉妬に満ちた義時様は奥方様を部屋に閉じ込めて表に出られないようにしたんだ。食事も愚か、出来るだけ人と接触させぬ様に制限した。月日が経ち、義時様自ら奥方様に逢いに行くとそこには糞尿で汚れた部屋に頬がこけ目は虚ろ、ほぼ皮一枚の奥方様が居た。義時様はその場で奥方様の首を刎ねたらしい。 」
栞「………。」
総悟「ほんと、痛ましいよな」
栞「あの部屋とこの話どういった関係が?」
総悟「奥方様が閉じ込められていたのはあの部屋だ」
栞「え…」
総悟「噂では人目を盗んで隠し通路を作りここから出ようとしたのではないかと言われている」
(きっと辛かっただろうな…そんなの私は耐え切れない)
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