TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する


仙田隆太は自分のベッドに横たわると、頭の後ろで手を組んだ。


今頃、土井尚子は生き返った世界で何を思っているだろう。


部屋に入る直前、花崎は隆太の肩を叩きながらこう言った。


「土井さんのことなら気に病むことはないですよ。彼女はあんなに若いんだから、いくらだってやり直せます」


そうだといい。

そうなら、いい。


隆太は昨日彼女が寝息を立てていた自分の隣を撫でた。


生き返りたくないといっていた美穂と尚子。

自殺したのは彼女たちのいずれかだったのだろうか。


自分ではない。

花崎でもない。

尾山でもない。


隆太はギリッと奥歯を噛んだ。



――尾山。あの野郎……。

涼しい顔しやがって。

ド変態のサイコパス野郎が……!!



花いちもんめのゲーム中、二人きりになった際に花崎は大きく息を吐くと、隆太のピアスだらけの耳に口を寄せた。


「―――この中に犯罪者がいる」


「………犯罪者あ?」

隆太は眉間に皺を寄せながら笑った。

「ああ。殺人犯がいる」

花崎は静かに言った。


「―――まあ、死神ってくらいだからな?大量殺人犯に間違いはないわな」

隆太は、尚子と何やら話し込んでいるアリスを振り返った。


「違う。人が人を殺すから、殺人犯なんだ」

花崎は隆太を睨むようにして言った。


「は!なんだなんだ?コナン君の登場かあ?」


面倒くさい話は苦手だ。

頭を使わなくてはいけない話も嫌いだ。


それならば―――。

わからないままの方がマシだ。


しかし花崎はこちらの気持ちを知る由もなく話を続けた。


「2020年12月から今年の5月にかけて、都内を中心に小中学生の男女4名が誘拐され、性的暴行を加えられた後、殺され遺棄された連続殺人事件があっただろ……?」


「―――え、あ、ああ」


普段ニュースなどほどんと見ない隆太は目を逸らした。


「あれ?でもなんか、犯人捕まったんじゃなかった?」


ありったけの記憶を引っ張り出して言う。


「ーー参考人として警察に呼ばれただけだ……」


花崎は半分馬鹿にしたようにため息混じりに言った。


「都内の精神障がい者が事情聴取で連行された。3人目の被害者と接点があったというだけで、だ。無論彼は犯人じゃなかった」


「―――へえ……」


「代わりに容疑者名簿に浮上したのが、埼玉県の会社員、尾山雅次。―――あの男だ……」


花崎は横目で尾山を睨んだ。


「4人目の被害者の身体から検出された精液と、職場の紙コップについた唾液のDNA鑑定により、本当なら6月19日、彼は逮捕されるはずだった」


「………はあ?ナニソレ……」

隆太は花崎を覗き込んだ。


「てか、それってみんな知ってること?」

聞くと花崎は首を横に振った。


「じゃあなんで、あんたそんなに詳しいの?」


「俺は―――」


花崎は一度3人を振り返った後、より一層声のトーンを落として言った。


「俺は、埼玉県警の刑事だ」


「は……!?」


目を見開いた隆太に、花崎は小さく頷いた。


「あの男は精神異常者だ。逃がしたらまたどこかで犯行を繰り返す」


花崎は小鼻を引くつかせながら言った。


「それならば、ここであいつを殺す。あいつを自殺で、殺す。協力してください……!」


「協力って?」


花崎は言った。

「このゲームで土井さんを負けさせる。そして次のゲームでは仙田さんが負けてほしい。そうしたら」


花崎の拳がグッと握られる。


「その次のゲームで、俺が何としてでも負ける」


「―――つまりあいつを何としてでも勝ち上がらせると」


「そうです」



小中学生4人を誘拐し、

性的暴行を加え、

殺した。



あいつを殺す。

あいつを自殺で、殺す。



花崎の言葉が頭の中を反芻していた。



「―――ん?」


でももしそんな奴なら……


あの男を蘇らせたのは―――誰だ……?



――そもそも、俺を生き返らせようとしているのは誰なんだろう。


親父―――はあり得ない。あの人は俺を愛していないどころか、俺に興味がない。


弟?

んなわけない。結婚して子供ができたばかりなのに。


お袋―――?

あの人にそんな勇気なんてあるだろうか。


あれかな。

かわいがってくれた室蘭の祖父ちゃんか、祖母ちゃん。そうかもしれない。



でも、

いざ、自分が死んで、



急に父親が責任を感じたのかもしれないし、

小さい頃はよく遊んでやった弟が、人肌脱いだのかもしれないし、

いつも父の言うことに意見せず、隆太がグレたときも叱責ひとつできなかった母が、勇気を振り絞ったのかもしれない。



全員に可能性はなくはないがーーー


あいつにだけはない。


あいつだけはあり得ない。



俺の―――嫁だけは……。

この作品はいかがでしたか?

1

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚