テラーノベル
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最近まで私には家族がいた。
私、リナと妹のリサ、お父さんにお母さんの四人家族で、幸せに過ごしていた。
だけどある日、お父さんとお母さんは誰かに殺されて死んでしまった。
私とリサが遊びに行って帰って来たら、あったのは物言わぬ両親の死体だけ。
そんな事はこの世界ではよくある事、らしい。
私達は泣いた。とにかく泣いた。
今を生きる方法なんてどうでもいい。大好きだったお父さんとお母さんがいない、それが苦しくて、悲しくてとにかく泣き続けた。
でも現実は非情で、すぐに私達に更なる不幸が訪れる。
それからの私達の生活は酷いなんてものじゃなかった。
お父さんとお母さんは強盗に殺されたせいなのか、家にあった物の殆どが奪われ、お金も無い。
そして住んでいた街の偉い人は、税金を払えない私達に街を出て行けと命令してきた。逆らって殺されるのだけは嫌だったからそこから私達は人目を避け、ゴミを漁りつつ生きてきた。
そんなある時、冒険者ご呼ばれる人達を見て、冒険者になれればお仕事をしてご飯を食べるくらいは出来るんじゃないかって期待をして向かってみれば、登録出来るのは10歳になってからだと言われた。
それでもなんとか生きる為にゴミを漁ったりしながら妹と一緒に街の中を転々としながら生きてきた。
だけど、そんな日々も長くは続かず、終わりを迎える事になった。
「このクソガキ共が、最近ずっとゴミを漁ってたのはテメェらだな!」
「ひぅ、や、やめてください!」
ゴミを管理していた人に見つかると言うミスを私は犯してしまった。
「すぐにでも街から追い出してやる、殺されないだけマシだと思え!」
「いやっ! 外に出たら、死んじゃう!」
お母さん達に言われた記憶を思い出す。
外には魔物と呼ばれる生き物が居て、人間なんてすぐに食べられちゃうって。
そんな所に妹と二人で投げ出されたらきっとすぐにでも私達は食べられて終わり。
あと、あと一年で10歳になれるのに!
そのまま私はゴミの管理人に引き摺られながら、街の外へと連れて行かれた。
妹のリサだけは街に残っていれば、生きられると思い、着いて来ないように目線を送るも、一人になる方が嫌なのか、こっそりと私に着いて来てしまっていた。
そして街の外に出されると、私達が街にもう戻れない事を知らされた。
「これでテメェみたいなクソガキは街に入れない」
「な、何でですか!?」
「街に入るには入街税が必要だからな!銀貨一枚、用意出来るか?まぁ、テメェらには無理だろうがな!」
そう私達に厳しい言葉を吐き捨てたその男はそのまま街の中へと戻って行った。
街の中に入る時に、銀色に輝くコインを門番に渡して。
それから私達の生活は大きく変わって行った。
午前中に街の側にある森へ入り、食べられそうな葉っぱや薬草などを採取する。
薬草に関して言えば、お母さんのお手伝いで何度も見た事があったからなんとか分かった。
他にも不味いけど栄養があるってお母さんに教えてもらっていた葉っぱや、小さな動物を素手で捕まえては川で洗って生のまま食べたりと言った事をしてなんとか食べ物を食べる。
薬草は生のお肉を食べて壊したお腹を治す為に使ったりと、とにかく必死だった。
夜は街の側に近付いて街の壁に寄り添いながらリサと一緒に寝て、朝になったらまた森へ⋯⋯と言った生活をこれから約一年続ける事になる。
下手をすると一生かもしれないけれど。
だけど、そんな生活が上手くいく訳もなかった。
森へ行けば魔物がいる時がある。
そんな時はリサと一緒に一目散に街のある方へと一気に走って逃げるんだ。襲われて死ぬのは嫌だったから。
そんな生活をしていれば自ずと栄養が不足してくるのは分かっていた。
もう昔のようなふっくらとした体型は維持出来る訳もなく、私の体は骨が見えるんじゃないかってくらい痩せ細っていた。
でも私はリサにはそんな思いをさせたくなかった。
だから少しでも多くの食べ物をリサに分けていた。
そのお陰か私と比べるとリサは少し大きくなっていた。
私は身長も伸びずに、小さなままだった⋯⋯
だけど、それでリサが大きくなれるならお姉ちゃんとしては嬉しい。
それから暫くすると私達の運命を変える時期がやって来た。
「⋯⋯ねぇちゃん! おねえちゃん!」
私を呼ぶ声が聞こえる。
「ダメ! おねえちゃん! わたしを一人にしないで!」
あぁ、もう私は限界なのかな?
せめて、リサが10歳になるまでは、死にたくなかったんだけど⋯⋯
「ごめんね⋯⋯」
私は掠れるような声で妹に声をかける。
「おねえちゃん! いや! いやだよぉ!」
その時だった。
【10歳になった為、特殊スキル:異世界配信を取得しました】
私の運命を変える事になるスキルを覚えた。
なんて皮肉なんだろう。
もう私の命の灯火は消えかかっていると言うのに。
「異世界、配信⋯⋯?」
【はじめまして! スキル:異世界配信へようこそ! まずは配信設定をしよう!】
なんだろう? このスキルは。
【よくわからない場合は最初はおすすめ設定でも大丈夫! おすすめ設定で良いならOKと念じてね!】
よく分からないのでOKと念じると突然私の視界に薄らと何かが浮かび上がった。
「なに、これ」
「おねえちゃん!?」
「心配、かけてごめんね。
お姉ちゃん、やっとスキルを手に入れたみたい」
「身体は、身体は大丈夫なの?」
「あんまり、大丈夫じゃないかも。
多分、後一日保てば良い方かな⋯⋯せめて、スキルでご飯をどうにか出来れば⋯⋯」
そうリサに喋りかけると突然、私の視界に文字がぽんっと現れた。
【初めてのリスナーが来たみたいだね!何か挨拶をしてみよう!】
謎の声が私にそうアドバイスをしてくる。
正直喋りたくないけれど、これが最後の命綱になる、そんな予感がした私は最後の気力を振り絞って喋る事にした。
「⋯⋯はじめまして、でいいんですか?」
:これってCG?
視界の右側に薄らとそんな言葉が浮かび上がった。
文字は読めないけど、何故か意味が分かる。
「しーじーっていうのが何かわからないですけど、多分違うと思います⋯⋯」
:なんでそんなにボロボロなの?
「街から追い出されてから服を買えていないので⋯⋯」
:街から追い出された!? キミまだ子供だよね?
「はい。さっきやっと10歳になったみたいです」
:お母さんやお父さんは?
「お母さんとお父さんは⋯⋯殺されました」
:えっ
「おねえちゃん、さっきから一人で何を言ってるの?」
リサが不安そうな顔をしながら私を見つめていた。
「あぁ、ごめんねリサ。なんかスキルで人とお話が出来るみたいで」
:ん? その子は?
「この子は私の妹のリサです」
「えっと、わたしもはじめまして?って言えばいいのかな?」
リサには私の視界にあるこの文字は見えていないみたいで、私の言葉に合わせて喋っているみたい。
:た、大変なんだね⋯⋯
「最後にこうして誰かとお話し出来て少し、嬉しいです」
「おねえちゃん! そんな事言わないで!
わたしがご飯持ってくるから!」
:最後ってどう言うこと?
「あはは、実はもう5日間ほど何も食べて無いんです」
:いや待てよ、何でか知らないけどスパチャ投げれるな⋯⋯少ししかないけど良かったら受け取ってくれないかな
「すぱちゃ? ってなんですか?」
【おめでとう! 初めてのスパチャを受け取ったよ!】
スパチャ残高:500
スパチャポイント:5
「何ですか、これ」
:受け取れたかな?
「受け取れた?みたいです」
【スパチャ残高を使ってアイテムやお金に交換が出来るよ!スパチャポイントは消費する事でスキルを入手する事が出来るよ! 大人気配信者になって強くなっちゃおう!】
「スパチャを使う?ってどうするんですか?」
そう呟いた瞬間に私の視界に一気に情報が流れて来た。
【スパチャショップの説明だよ!スパチャショップでは各カテゴリ毎に分けられたアイテムの中から好きな物をスパチャ残高を消費して購入出来るよ!】
【お金に交換する場合は100スパチャ残高につき1銅貨に交換が出来るよ!いっぱいスパチャをもらってアイテムや食料を購入しよう!】
「食料⋯⋯?食べ物!?」
「おねーちゃん、食べ物はないよ?」
:もしかして本当に異世界に繋がってるの?
「食料⋯⋯パン一個で100スパチャ残高⋯⋯」
私は他の事に目も暮れずに食料の欄を見ていた。
「スパチャ残高は500⋯⋯パンが5個も⋯⋯」
幸い水は川に行けば飲める。
パンが食べられれば私も自分で移動出来る様になるはず。
:待って! 最近食べられていないなら、栄養素が不足してるはず!
「エイヨーソ?」
聞き覚えのない言葉を聞いて思わず聞き返すとお返事はすぐにやってきた。
:もしかしてオンジェリーっていう物とかあったりしない?
私とおしゃべりしている人の言っているオンジェリという物があった。
「1個で200残高⋯⋯」
:パンは後で買って二人で分ければ良いと思う
「⋯⋯わかりました。買ってみます」
元々はこの人がくれたものだから、私は信じてこれを2個買うことにした。
【スパチャ残高400を使用してオンジェリーを2個購入しますか?】
「⋯⋯はい!」
【マスカット味、ラムネ味、ヨーグルト味、巨峰味の4種類から選べますが、どれにしますか?】
「⋯⋯味?」
そんな声が聞こえたせいで私は思わず声に出してしまった。
:味も選べるのか、だったらマスカットがおすすめ。
「わかりました、それにしてみます」
そして目の前にある購入するのボタンを押す。
すると、突然ぽんっ!と音がしたと思ったら銀色に青色の線が入った何かが現れた。
「これが⋯⋯ご飯になるの?」
「おねーちゃんそれ、なに?」
「私もよくわかんない⋯⋯でもこれ食べられるって」
「そうなんだ⋯⋯ねぇ、おねーちゃんが心配ならわたしが先に食べるよ」
「ううん、私が先に食べる。
もし私に何かあったらこれは捨ててね」
「⋯⋯わかった」
ちょっと納得していない様子のリサだったけど、私に何かあっても死ぬのは私だけで済む。
リサが危険な橋を渡る必要は無いんだ。
:飲む時は上についてる白いのを回すと中身を飲めるようになるよ。
「⋯⋯白いの?」
「あ、ここかな?これを回して⋯⋯あ、開いた」
思ったより力を入れずに開いてくれて助かった。
:その白い部分を咥えてゆっくり吸ってみて。
「ありがとうございます⋯⋯それじゃ食べさせてもらいますね」
そうして私はそれを口に入れ、吸ってみる。
涙がポロポロとこぼれてくる。
「⋯⋯」
「お、おねーちゃん? 何で泣いてるの?」
:だ、大丈夫!?
「美味しい⋯⋯おいしいよぉ⋯⋯」
甘くて、すごく美味しい。思わず涙が出てきて、止まらない。
「お腹壊してもいい、リサも食べよう!
これ食べて死ねるならもうそれでいいよ!」
そして私は一気にオンジェリーという食べ物を食べきった。一瞬で無くなってしまって寂しさを感じる。
:でももう送れないんだ、本当にごめんね
「いいえ、最後にこんな美味しいもの食べられて幸せでした」
「おねえちゃん、これ美味しい! 美味しいよ!」
「リサ、良かったね」
「うん! 誰かわからないけど、ありがとう!
えへへ、今、人生で一番幸せかも⋯⋯」
:こんなのでそこまで喜んでくれるなんて
「私達にとってここまでちゃんと美味しいって思える物食べたのは一年ぶりなので⋯⋯」
:そっか⋯⋯
「ふぁ、何だか妙に眠たく⋯⋯」
:おやすみ。俺も頑張ってみるよ
私はお腹が膨れて安心したのか眠りについてしまった。
瀬名 紫陽花
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コメント
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やはり、いせこんはいい
なるほどそういう世界観。 現代日本人視点のリスナーのおかげでお話がちゃんと頭に入ってくる感じがします