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あの夜の爆発以降、
煌王アリア・レグリス・セラフィーナに対する空気は明らかに変わった。
民衆は囁く。
「煌王様が、影と戦ったって……」
「いや、むしろ影を“呼んだ”んじゃないか?」
「“名づけ”が、災いを呼ぶって話……本当かも」
――世界は、煌の美しさだけでできていない。
妬み、猜疑、恐怖……その“色”のない感情が、噂という名の刃となって王を突き刺す。
***
聖煌宮。王座の間。
アリアは正面からその言葉を聞かされていた。
「陛下。近隣六国の代表が、“煌王の暴走”について調査を要求しています」
老齢の参謀たちが目を伏せる。
そのどれもが、かつてアリアを称賛していた者たちだった。
「……“暴走”ね。私が名を与えただけで、世界が揺れるのなら――
私の存在自体が、災厄だというの?」
「……言葉を選んでおります、陛下」
「もう選ばなくていいわ」
アリアの声は凍てつくほど冷たかった。
「それがこの世界の“本音”なら、私はそれを受け入れる」
そう言い残し、アリアはその場を去る。
部屋の隅、レイヴンは傷だらけの身体で彼女を見つめていた。
「陛下……」
「大丈夫よ。私はまだ、立ってる。……でも」
アリアは立ち止まる。
「……リネアを、王宮には置いておけない」
「……っ」
***
その夜。
リネアは王宮の奥深く、誰にも知られない小部屋にいた。
「ねえ、私、やっぱり……帰った方がいいのかな」
「世界がこんなに揺れてるの、私のせいかも……」
「違う」
アリアの声は、迷いなく響いた。
「あなたが“ここにいる”ことで揺れる世界なら、最初から歪んでいたのよ」
リネアは、涙をこぼした。
「……ありがとう。でも、だからこそ……アリア様に、迷惑かけたくない」
アリアは少女の髪を撫で、優しく抱きしめた。
「……あなたの居場所は、ここよ。
誰に何を言われようと、私はあなたを守る」
その時――
“パチン”と、どこかで音がした。
何かが、空気を断ち切った。
***
次の瞬間、世界が赤く染まった。
窓ガラスが一斉に粉々に砕け、
黒い刃が、アリアの肩を裂いた。
「……ッ!!!」
アリアがリネアをかばい、倒れる。
背後に、“影のような男”が立っていた。
それは――
《影刃のギル》
煌を持たず、すべての煌保持者を狩るためだけに育てられた、
“煌殺し”専門の暗殺者。
「やあ、煌王。
久しぶりだね。
いや、会うのは初めてだったかな?」
その口調は軽やか。
だが、足元には血の痕。
入り口の兵士たちは、すでに全員――沈黙していた。
「お前が“名”を与えたあの子。
彼女の煌、かなり“美味そう”だ。
でもその前に、まず――」
ギルが一歩踏み出した瞬間、
部屋中の煌が振動する。
「死んでくれる?」
***
そして――
“ガキィィン!!!”
ギルの刃を、別の刃が受け止めた。
「陛下に手を出すな」
現れたのは――
白銀の鎧をまとった、若い騎士。
「貴様……まだ死んでなかったのか、レイヴン」
「私の使命はただ一つ。
煌王を守る。
例え、それが“世界”を敵に回すことになっても――」
レイヴンの剣が、ギルを弾き飛ばす。
「……面白ぇじゃん。だったら……二人まとめて、死にな?」
ギルが笑い、そして闇がうねった。
ついに――“煌王暗殺”が、本格的に始まった。
👑To be continued…👑