ギルの刃が、レイヴンの顔すれすれを斬り裂いた。
「オマエ、相変わらず鈍いな。煌王の騎士ってのは、その程度か?」
「黙れ」
レイヴンの剣が鋭く光り、ギルの肩を斬り裂く。
だが――血は出ない。
「……っ、影化してる……!?」
ギルの口元が歪む。
「俺は“影”じゃねえ。“煌の残骸”だよ」
その言葉と同時に、ギルの背から黒い羽根のようなものが生えた。
だがそれは羽根ではない。
無数の“剣”――影と煌の合成武器だった。
「王に刃を向けた者たちの、“記憶の残骸”さ」
「お前……どこまで、冒涜する気だ……」
レイヴンが全力で突撃。
刃と刃がぶつかり合い、部屋が崩れ、壁が砕ける。
「やめてッ!!」
リネアが叫ぶ。
アリアは、傷ついた身体を引きずりながら立ち上がる。
「……リネア……逃げなさい……!」
「やだ……やだよ!!アリア様が……死んじゃう……っ!!」
その瞬間――
リネアの胸が、激しく脈打つ。
「っ……なに、これ……わたしの中に……なにかが――」
ギルが、ピクリと反応する。
「へぇ……?反応したな。やっぱり、オマエの中か……!“あの欠片”」
「欠片……?」
アリアが目を見開く。
(まさか……この子の中に、“煌の核”の一部が……!?)
ギルの動きが変わる。
「騎士は後回しだ。
……俺の目的は、煌王じゃない。“その子”だよ」
リネアの前に、一瞬で現れるギル。
「ようこそ、“鍵”の器(うつわ)さん」
ギルの手がリネアに触れた、その刹那――
「やめてッ!!!!」
爆発音。
だがそれは煌でも影でもない。
もっと根源的な、世界を震わせるエネルギー。
“純白の火”が、ギルの身体を焼いた。
「ぐ……っっっ、アアアアアアアッ!!?」
ギルの身体が吹き飛び、壁にめり込む。
リネアは……泣いていた。
でも、その手から放たれた“光”は――どこまでも美しかった。
「わたしは……もう誰も、失いたくないのッ!!!」
***
数秒の静寂。
そして、倒れたギルが、かすかに笑う。
「ハハ……ハ……
やっぱり……あったな、“アリアの中”と同じ煌……いや、それ以上かもな……」
そのまま、黒い霧となって姿を消す。
レイヴンが警戒するが、アリアはリネアのもとへ駆け寄る。
「リネア……あなた、今の……!」
「わかんない……でも、でも……誰かを“守らなきゃ”って思ったら……体が勝手に……」
アリアは彼女を抱きしめた。
「あなたの中にあるのは、“力”じゃない。“心”よ」
リネアの頬に、涙が落ちた。
それは――アリアのものだった。
***
そのころ。
遥か離れた山脈の奥。
黒い玉座の前で、ギルが膝をついていた。
「“核の器”、確認。
アリアが目覚めさせたようだ」
その玉座に座るのは――クレイズ・アークライト。
「よくやった。
なら、次は――“煌王”ごと、器を奪いに行け」
「了解。次は……全員殺す」
ギルの目が、完全に“赤”に染まる。
その光は、“生”の光ではなかった。
👑To be continued…👑