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「…すいません…ことはさん、ありがとうございます…」
風呂場にて、拾ってきた子供が女の子だと分かり、パニックになりつつも楡井はこの”家”にいる数少ない女性、橘ことはを連れてきたのだ。
「いーのよ、にれだってビックリしたんでしょ。それに、謝るのは私にじゃなくてこの子にしなさい。わざとじゃなかったとはいえ嫁入り前の女の子の裸見ちゃったんだから。」
「ぅっ、はい…」
ことはは仕方がないと言うふうにして楡井に返答し、チラリと自分より頭何個分も小さい女の子を見る。現在女の子はどうすればわからないのか視線を彷徨わせつつ、ちょこんと椅子に座っている。ことはによってお風呂に入れてもらい、着替えた後だった。まだホカホカとゆ立つ頬が紅く染まっている。
楡井はスッと、女の子の前に目線を合わせるように膝立ちし、謝罪する。
「…わざとじゃなかったとはいえ、嫌だった…ですよね、すいません。」
女の子は一瞬目を見開き、ブンブンと首を横に振った。きっと、大丈夫だと言う意思表示なのだろう。そんな様子を見ていたことはがふと思ったように問いかける。
「…ねぇ、君、名前は?何処から来た、とかわかる?」
それは確かに楡井としても気になっていたことだ。予めことはにはこの女の子を拾ったわけを説明しているが遠くからの迷子、と言う可能性がある。名前や来た場所を教えて貰えればなにかしらこの子を帰す準備ができる。
女の子は無言で楡井とことはのことを見あげたかと思うと、キョロキョロと目線を彷徨わせる。なにか探しているのだろうか。
「なにか、探してるんですか?なにを…」
ここでふと、思い出す。この子を風呂場に連れていく時に声をかけられた。この”家”の誰かに。誰だったかは覚えていない。ただ、「なにか落としたよ」的なことを言われた気がする。楡井はパッと自分の持ち物を確認する。何も落としている物はない。ということは、この子の持ち物を落としたのかもしれない。
「…あの、もしかしたらここに走ってくる途中に貴方が探してるモノ落としちゃったかもしれないです…!ちょ、ことはさん!この子お願いします!オレ、探してきます! 」
「あっ、ちょ、にれ!」
楡井が全速力で風呂場の脱衣所から走り出す。ちょうど銭湯にあるような暖簾を潜る…と、暖簾の先には急ぎすぎて気づいていなかったが誰かいたようだ。楡井が勢いよく誰かにぶつかる。
だが、楡井とぶつかった人物は倒れることなく、ぶつかった人物が楡井を支えていた。
続く