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みなさんこんばんはtakuです
いいねありがとうございます
いいねがたくさんきてびっくりしました
第3話を書こうと思います
前回の続きです
「……あ、ありがとう」
僕は曖昧に笑って、箸を動かす。
視線を落とせば、皿の上の野菜がやけに色鮮やかに見えた。 かっちゃんは僕の手元を睨むように見ていて、 轟くんは僕の表情を読み取ろうとするみたいに、静かに目を細めている。 (なんだろう、この感じ) 三人でいるのは、昔から珍しくなかったはずなのに。
最近は、空気が少しだけ張りつめている。
「……轟」
爆豪が箸を止めずに名前を呼ぶ。
「ンだよ」
「デクに甘ぇこと言うな。コイツは放っとくと本気で倒れる」
「事実だろう」
轟は淡々と返す。
「爆豪は、無理をさせすぎる」
「ハァ?」
火花が散る前触れみたいな空気に、
俺は慌てて割って入った。
「ち、ちがうよ! 二人とも、心配してくれてるだけで……!」最近、三人でいるときの空気が、少しだけ重い。
いや、正確には――
俺が、その重さに気づいてしまっただけなのかもしれない。
(前は、こんなふうに考えなかった)
爆豪くんが隣にいるのは、当たり前だった。
轟くんが向かいにいるのも、自然な配置だった。
それが今は、
一つ一つの距離や視線が、やけに意識に引っかかる。
「デク」
爆豪くんに呼ばれて、反射的に顔を向ける。
「ボーッとすんな。次、俺と組め」
「え? あ、うん!」
即答すると、爆豪くんは満足そうに鼻を鳴らす。
その瞬間――
向かいから、視線を感じた。
轟くんだ。
「……緑谷」
静かに名前を呼ばれる。
「俺とも、あとで話せるか」
その言い方は、どこか遠慮がちで。
それが、胸に刺さった。
(どうして、そんな顔をするんだろう)
二人とも、俺を気にかけてくれている。
それは分かっているのに――
同時に求められると、息が詰まりそうになる。
「ご、ごめん。時間、調整する……」
そう答えた俺の声は、少し震えていた。
爆豪くんが舌打ちする。
「無理すんなっつってんだろ」
「……それは、俺も同意見だ」
珍しく、二人の意見が重なる。
なのに、
空気はまったく和らがない。
(なんで……)
放課後。
一人でノートを広げながら、考える。
爆豪くんは、昔から俺を引っ張ってくれた。
厳しくて、乱暴で、でも誰よりも真っ直ぐで。
轟くんは、静かに隣にいてくれた。
何も言わなくても、俺を見てくれる人。
(どっちも、大切だ)
そう思うたびに、
胸の奥が、ゆっくり揺れる。
欲張りだと、分かっている。
でも――
「失いたくない」
小さく呟いた言葉は、誰にも届かない。
その夜、訓練の反省を書きながら、
俺は初めて、こんなことを考えてしまった。
もし、どちらかが
俺を「仲間以上」に見ているとしたら――?
ペンが止まる。
(……そんなわけ、ない)
慌てて否定する。
否定しなければいけない。
だけど、
爆豪くんの独占欲の滲んだ視線も、
轟くんの抑えた熱を帯びた目も、
もう、見なかったことにはできなかった。
この関係は、静かに揺れている。
音も立てずに、でも確実に。
僕が真ん中に立っているせいで。
二人の視線が、同時に俺に向く。
その瞬間、胸がぎゅっと締め付けられた。
(……まただ)
僕を中心にして、見えない綱が張られている。
引っ張られているわけじゃない。
でも、どちらかに傾けば、もう一方が揺れるのが分かってしまう。
かっちゃんが舌打ちして、
僕の皿を指で叩いた。
「ほら、早く食え。冷めるだろ」
「う、うん」
轟くんは何も言わず、水の入ったコップを俺の近くに寄せる。
「喉、詰まらせるな」
「ありがとう……」
同じ優しさ。 同じ気遣い。
なのに、二人のそれは、決して重ならない。
かっちゃんの隣は、
近すぎて息が詰まりそうで。
轟くんの視線は、遠いのに逃げ場がない。
(俺は……)
どちらかを選ぶ資格なんて、ない。
選びたいとも、思ってはいけない。
それでも――
「デク」
かっちゃんが僕の名を呼ぶ。
同時に、轟くんがわずかに身じろぐ。
たったそれだけで、空気が揺れた。
この均衡は、きっと脆い。
触れれば壊れる。
何もしなくても、いつか崩れる。
それを分かっていながら、
僕は今日も、何も言わずに笑っている。
三人でいる、この時間が、
まだ「普通」だと信じたくて。
長文読んでくれてありがとうございました
いいねとコメントよろしくお願いします。