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みなさんこんばんはtakuです。
いいねありがとうございます。
第3話の続きです。
<爆豪視点>
三人で飯を食う。
ただそれだけのことのはずだ。
なのに、胸の奥がざわつく。
デクが俺の隣に座るのは当たり前だ。
昔からそうだったし、今さら疑う理由もねぇ。
……なのに。
向かいに座る轟の視線が、やけに気に入らねぇ。
(ンだよ、その目)
じっと、静かに、デクだけを見てやがる。
喋らねぇくせに、存在感だけは無駄にでかい。
「デク、野菜残すな」
口から出たのは、いつもの言葉だ。
放っといたら栄養も考えねぇで無茶するヤツだって、俺が一番知ってる。
「出久、無理はするな」
……は?
同時に聞こえた声に、思わず舌打ちしそうになる。
(テメェ、何被せてきてんだ)
デクが困ったように笑うのを見て、
胸の奥がチリっと焼けた。
(その顔、俺だけに向けろよ)
「……轟」
箸を動かしながら、低く名前を呼ぶ。
「デクに甘ぇこと言うな。コイツは放っとくと本気で倒れる」
事実だ。
俺は間違ったことは言ってねぇ。
「爆豪は、無理をさせすぎる」
淡々とした声。
感情が見えねぇのが、余計に腹立つ。
「ハァ?」
睨み返す。
一瞬、空気が張りつめる。
(コイツ……)
デクを挟んで、真正面からぶつかってるみてぇだ。
「ち、ちがうよ! 二人とも、心配してくれてるだけで……!」
デクが慌てて割って入る。
その声が、やけに必死で。
(……クソ)
守らせてやってるつもりが、
逆に追い詰めてんのか?
俺は皿を指で叩く。
「ほら、早く食え。冷めるだろ」
言い方は乱暴だ。
でも、手放す気はねぇ。
轟は何も言わず、コップをデクの近くに寄せる。
(触れもしねぇくせに)
その距離感が、気に食わない。
デクが礼を言う。
その声が、轟に向いてる。
――それだけで、腹の底が煮えた。
(取られるわけねぇ)
そう思うのに、
「もしも」が頭をよぎる。
もし、デクが俺の隣を
「当たり前」だと思わなくなったら?
その瞬間、息が詰まる。
(……冗談じゃねぇ)
デクは、俺のだ。
昔から。今も。これからも。
名前を呼ぶ。
「デク」
それだけで、轟が反応するのが分かった。
(やっぱりな)
均衡なんて、最初からねぇ。
あるとしたら、それは――
俺が、譲らねぇって前提で
成り立ってるだけだ。
<轟視点>
三人で食事をするのは、珍しいことじゃない。
少なくとも、そう思っていた。
だが最近、緑谷出久を挟んで座る爆豪勝己の距離が、やけに近い。
(……前から、あんなだったか)
爆豪は当然のように隣に座り、肘が触れる距離で出久を見ている。
世話を焼く口調も、苛立ちを隠した声も、どこか独占的だ。
「デク、野菜残すな」
その言葉に、胸の奥がわずかにざわついた。
反射的に、俺は口を開いていた。
「出久、無理はするな」
言ってから気づく。
同じことを、同じタイミングで言っている。
出久が戸惑ったように笑い、礼を言う。
その表情を見た瞬間、ざわつきが確かな形を持った。
(……奪い合っているみたいだ)
そんなつもりはない。
少なくとも、理性ではそう否定する。
だが、爆豪が俺の言葉に噛みつくのを見て、
俺の中に小さな苛立ちが芽生えた。
「爆豪は、無理をさせすぎる」
自分でも意外なほど、言葉が冷たくなった。
「ハァ?」
爆豪がこちらを見る。
その視線は敵意そのものだ。
(なぜ、俺は挑発している)
出久を守りたいだけだ。
ヒーローとして、仲間として。
そう言い聞かせるが、
胸の奥は納得していない。
出久が慌てて間に入る。
「ち、ちがうよ! 二人とも、心配してくれてるだけで……!」
その必死さが、余計に胸を締め付けた。
(出久は、何も知らない)
自分がどれほど見られているか。
どれほど大切に扱われているか。
爆豪は、出久の皿を指で叩く。
乱暴だが、そこに迷いはない。
俺は無言で、コップを出久の方へ寄せた。
触れない距離で、気遣う。
それが、俺にできる精一杯だった。
「ありがとう」
出久の声は、柔らかい。
その一言で、胸の奥が熱を帯びるのを感じてしまう。
(……違う)
これは友情だ。
仲間意識だ。
そう定義しなければならない。
だが、爆豪が出久の名を呼んだ瞬間、
俺は、ほんのわずかに反応してしまった。
身体が、先に動く。
(俺は、何を恐れている)
答えは、分かっている。
この均衡が崩れること。
そして――
崩れた先で、出久が自分を選ばない可能性。
その考えが浮かんだだけで、胸が軋んだ。
(……認めるべきじゃない)
だがもう、気づいてしまった。
俺は、緑谷を 爆豪と同じ場所で、
見てはいけないのだと。
1814字お疲れ様でした。
次は第4話揺動です。
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