「こ、こんにちは~、約束通りやって来たんだけど…… お取り込み中だったのかな? それとも、この池ではコレが普通なのかな?」
『?』
『あれがナッキ様が会いに行ったニンゲンのリーダーナガチカだよ』
『へー、あれがぁ』
『そうそう、我々が何も話さずにじっと動かない事にビビッているみたいだね、さて、この後どう出る事やら』
『言葉が判ればもっと面白いんだけどねぇ』
『そこは私ランプやヘロン、ドラゴが通訳しますよ、お任せを』
『『助かるね』』
『ねえナッキ、ナガチカが凄く不安そうだよ? 放って置いて良いのかな?』
『なるほど、んじゃ話し返してみようか――――』
「いつもはもっと賑やかだよ! 皆動き回っているしね!」
「うわあっ! びっくりしたぁっ! 急に大声で…… ふぅ、驚きましたよナッキ殿ぉ」
ナッキとサニーはナガチカのほうに向き直って笑顔を浮かべているが、それ以外のメンバーは水中、陸上を問わず固まったままで無言を貫いている、例の三匹が他の面々にナガチカの言葉を実況しているのだ。
死んだ様に動かない剥製みたいな鳥や虫、水中で停止している魚も基本存在しないのだから、ナガチカ的には周囲を気味悪そうに眺めながらナッキに聞かざる得なかったようだ。
「あ、あの…… コレ皆さん大丈夫なんですか? 魚類って止まったら死ぬんじゃないですか? 生きてるんですよね?」
ナッキはナガチカを安心させる為だろう、ヘロンを意識した笑顔を浮かべて答える、口元を歪(いびつ)に引き上げながらだ。
「大丈夫ですよぉ、いひひひ、皆生きていますからねぇ、イヒヒヒ、ご心配なく、イヒヒ、イヒヒヒ」
何故だろうか、小さく身震いしたナガチカは顔面を蒼白にさせている。
無言で固まっているナガチカにナッキの言葉は続く。
「ところで『存在の絆』が通じなくなった件は大丈夫だったの? 僕たちも仲間と話し合って自分達なりの予想をしたりしたんだけどさ」
「あ、ああ、急に普通に戻るんですね、まあ、その方が安心ですけど…… 絆の不通に関してはですね、原因とかは見当も付かないんで仲間達に対処方法を伝えた所ですよ、具体的には出掛ける時なんか周囲に告げてから、ですとか、帰宅予定の時刻を出来るだけ伝えようね、とかですね」
随分緩い…… 一大事じゃなかったのか?
んまあ、『存在の絆』が使えない事に気が付いてもいなかったみたいだし、死蔵(しぞう)スキル的な感じだったのかもしれないな。
コユキと善悪の観察をしていた時であれば遠慮無く自分の思いを口にしてきた私、観察者であったが、それ以降の観察では出来るだけ私見を控えていた事は、賢明な読者諸氏であればお気付きであった事であろう。
だが、今、この時、この場面ばかりは私、観察者も声を大にして言わなければならない! そんな事態であった。
言うなよ? 言うなよ? 絶っ対っにっぃ! 言うなよナッキィっ! と……
いつも通り観察は一方通行である、こちらのシャウトは届けられないのだ。
ナッキはシラっとした表情で何気ない感じで言う、くうぅっ! チキショーッ!
「それなんだけどさぁ、カーリーさんとか言う悪魔が死んだからなんじゃないのぉ? それ以外考えられ無いじゃーんっ!」
あああぁぁ、言っちゃったぁ…… さて…… 我が父、ナガチカの反応は如何に?
「カーリー神が? は? 死んだ? ま、まさか…… そんな馬鹿な事は…… ええっとぉ、いや? 有り得るのだろうか? えっ? だとしたら…… み、美雪と、せ、聖邪(せいや)は……」
ほらほらぁ、そうなっちゃうじゃないのぉっ!
父ちゃん、ショック状態じゃないのさぁ!
んまあ、結論、所謂(いわゆる)ネタバレ的に言っちゃうとね、ナッキ達の分析は的を射ている、つまり大正解だった訳なんだよ。
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