岩本との仲が拗れて、距離を置いている2人…
「俺達、もう駄目かも知れない…」
辛そうに呟いた渡辺を抱きしめそうになって、グッと堪える
『まだ俺は、自分の気持ちを翔太君に伝えていない…』
そんな中途半端な立場のままで、自分に何が出来ると言うのだろうか…
しかし、やっと思いを告げて…愛する人をこの胸に抱いた時…この人の為に、何でもしようと心に決めた
「目黒、本当に俺で良いの?」
腕の中で、渡辺が問い掛ける
「俺は、翔太君が良いんだよ」
そう伝えると、恥ずかしそうに頬を寄せた
「?」
人通りの無い夜の公園…
何処かで、足音が聞こえた様な気がして振り返るが…そこには誰れも居らず、人影も無い
気の所為かと考え直して…岩本には明日、自分が話を付けて来ると渡辺にそう伝えた
◇◆◇◆
「それで?何で翔太は、ここに居ないの?」
岩本が珍しく不機嫌を隠さずに聞いて来た
「それは、俺が止めたんです」
渡辺は、自分も話合いに参加したいと頼んで来たが…目黒がそれを許さなかった
「何で止めた?」
「それは俺が、岩本君と2人きりで話を付けたかったから…」
「翔太は、お前と付き合う事…了承してるの?」
「まだ、迷ってるって言われました…」
「迷ってる?」
その言葉に、岩本の眉がピクリと動く
「岩本君と、中途半端な関係のままで…俺と付き合う事は出来ないって…」
「正論だな…」
「それで、目黒はどうするつもり?俺に別れてくれって…たった1人で、頼みに来たの?」
いつになく高圧的なその態度に、押されそうになったものの
「岩本君…翔太君を俺に下さい!」
勢い良く頭を下げて、目黒は岩本にそう告げた
「………」
静かに、それを見下ろす岩本…
「何で?何の為に、目黒は翔太の為にそこまでするの?」
「それは…」
「それは?」
「俺は、翔太君の事が好きだから…あの人を手に入れられるなら、何だってしたいと思っています」
ハッキリとそう言い切った目黒に、岩本が言葉を詰まらせる
「もう、その辺にしといてあげたら?」
物陰から深澤がひょこりと姿を現した
「翔太の気持ちは、昨日聞いたんだし…。目黒の気持ちも確認出来た。どうするのが1番良いのか…本当は照ももう気付いてるんでしょ?」
「………」
深澤の言っている意味が理解出来ない…【翔太の気持ちは昨日聞いた…】確かに先程そう聞こえた
「昨日聞いた…翔太君の気持ちって…」
「あぁ…目黒には内緒って言われてたんだっけ?」
ニヤリと笑って深澤が言う
「おい…」
止めに入った岩本を押しのけて、深澤は目黒の前に立ちはだかった
「翔太がね…明日は一緒に行けないけど、ちゃんと照と話したいって…昨日、電話掛けて来たんだって」
深澤の話によると、渡辺は岩本に謝り…目黒と付き合いたいと告げたと言う
それでも、岩本が認めてくれるまでは付き合えないと…認めて欲しいと頼まれたらしい…
元々、気持ちのすれ違いで距離を置いたていた2人が…そのまま修復出来ずに終わりを迎える
岩本も、渡辺に謝って…お互いに、次へ行こうと覚悟を決めた
「じゃあ何で、岩本君は俺に…」
岩本は、何故…あんなにも目黒に強く当たったのか?
すでに別れを決めていたのなら、もう少し冷静に対処出来たのではと…疑問に思う
「翔太の事、まだ引きずってるんでしょ?」
深澤に図星をつかれ、岩本の目線が不意に逸れる
「笑いたいなら、笑ってくれて構わない…俺は…それだけ、アイツの事が好きだった」
今の岩本には、宮舘の気持ちが良く分かる
「目黒が翔太を泣かせたら、俺が奪いに行くからそのつもりでいてほしい…」
岩本は、目黒を見つめてそう告げる
「絶対、俺が幸せにしてみせます」
目黒も負けじと、そう答え…
「それじゃあ、試す様な事をして悪かった…」
岩本は頭を一度だけ下げ、深澤と共にその場を後にした…
◇◆◇◆
「翔太君、何で言ってくれなかったの?」
「だって、目黒が一緒に行っちゃ駄目って言うから…」
少しでも、目黒の力になりたかった渡辺が…岩本と先に話をつけていた…
「だからって…」
この人は、どうしてこんなにも自分の思い通りにならないのだろう…
どうして俺に、守らせてくれないんだろう…
自由にならないこの人の…その全てが、愛しくて堪らない…
「絶対、離さないから…」
目黒は、渡辺の腕を引き…その身体を抱き締める
「俺だけを見て、側に居てね」
耳元で囁くと、渡辺は恥ずかしそうに頬を染めて頷いた
『大丈夫…。俺達なら、きっと上手くやっていける…』
この人が、するりと逃げて…別の男の元へ行かない様に
俺は、力を込めて…しっかりとその身体を抱き寄せた
コメント
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……私がこの後の二人のセンシティブを読みたい理由わかりました! まあ、もともとセンシティブ大好きなのもあるけど、今回のお話、❤️→💛→🖤って、相手が推移していくから、💙が本当に🖤で落ち着くのか読みたかったんだと思います。なんか、尻軽みたいで、それがちょっとイヤだったんだなって😅😅次話読みます!