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第77話 「届かなかった一歩」
2023年春。
センバツ準決勝。
柳城高校―宮城育英高校。
甲子園は満員だった。
一年前の夏。
延長十二回。
雨の甲子園。
パスボールによるサヨナラ負け。
あの日以来の再戦。
両校とも負けられなかった。
試合は予想通りの投手戦となる。
塁も好投。
宮城育英のエースも譲らない。
五回終了。
0対0。
均衡は破れない。
六回裏。
柳城が先制する。
史陽のタイムリー二塁打。
1対0。
アルプススタンドが沸く。
舞も立ち上がって拍手していた。
だが。
宮城育英は全国屈指の強豪だった。
七回表。
二死一、三塁。
宮城育英の四番。
レフト前へ運ぶ。
1対1。
同点。
試合は振り出しに戻る。
そして八回。
宮城育英が勝ち越す。
二死二塁。
右中間へのタイムリー。
1対2。
柳城、初めて追いかける展開となる。
九回裏。
最後の攻撃。
甲子園全体が柳城を後押しする。
一死。
史陽が四球を選ぶ。
二死。
二塁へ進む。
一打同点。
打席は四番。
しかし。
打球はセカンド正面。
宮城育英の二塁手が捕球。
一塁送球。
アウト。
ゲームセット。
宮城育英高校 2-1 柳城高校。
再び。
再びだった。
夏も。
春も。
宮城育英が立ちはだかった。
整列。
両校が礼をする。
宮城育英の選手たちは決勝へ向かう。
柳城の選手たちはその背中を見送る。
塁は空を見上げた。
悔しかった。
去年ほどではない。
だが悔しかった。
勝てると思った。
勝たなければならないと思った。
それでも届かなかった。
史陽が隣に立つ。
「またやられたな」
塁は苦笑する。
「ああ」
しばらく沈黙。
そして史陽が言った。
「なら夏や」
塁はゆっくり頷く。
夏。
三年生最後の甲子園。
最後のチャンス。
もし再び会うなら。
次は決勝で。
次こそ。
勝つために。
アルプススタンドでは舞が静かに涙を拭いていた。
そして遠く東京では。
大学野球で活躍する啓介も試合結果を知る。
スマートフォンの画面を見ながら小さく呟いた。
「まだ終わりじゃない」
宮城育英。
二度敗れた相手。
だが。
柳城の物語はまだ終わらない。
夏が来る。
最後の夏が。
第77話 終
#高校生
コメント
1件
読了しました……76話、めっちゃ重かったです。去年の夏のリベンジマッチ、あの雨のパスボールから一年越しの再戦だったのに、また宮城育英に1点差で敗れる。塁と史陽の「またやられたな」「なら夏や」のやり取り、短いのにぐっときました。舞が涙拭いてるシーンも印象的。啓介が東京から見守ってるのも含めて、このチーム、まだ終わらないんですね。夏、絶対勝ってほしい……🥀