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無気力組はアイドルだった第3話「合宿」
「……合宿、めんどくさ」
国見がバスの窓にもたれながら呟いた。
「お前それ毎回言ってるだろ」
隣の及川が笑う。
「だって一週間ですよ」
「バレーできるんだからいいじゃん」
「……それはまあ」
国見は少しだけ顔を上げた。
今回の合宿は、複数の高校が集まって行う合同合宿。
普段は別々の学校に通っている選手たちが、一週間みっちりバレーをする。
そして国見には、もう一つ楽しみがあった。
スマホを開く。
そこには、いつものグループLINE。
《チョコレート🍫》
あき:もう着いた?
けい:あと少しです
けん:俺も今向かってる
ほたる:眠い
かい:同じ
りん:俺まだ
あき:遅
りん:うるさい
国見が小さく笑った。
全員、別々の学校。
普段は仕事の時間も学校も違う。
それでもこうして連絡を取り合っている。
そして今日は――
久しぶりに、6人が同じ場所に集まる。
体育館。
「集合ー!!」
監督の声が響く。
「今日は合同合宿だからな! 一週間、死ぬ気で動け!」
「はい!!」
体育館にはたくさんの選手が集まっていた。
烏野。
青葉城西。
音駒。
梟谷。
白鳥沢。
稲荷崎。
それぞれの選手が準備を始める。
その中で――
「……あ」
国見が体育館の端を見る。
白布がいた。
「けん」
「おう」
白布が軽く手を上げる。
「久しぶり」
「昨日LINEしたけど」
「直接会うのが久しぶり」
「まあな」
二人が話していると、
「国見ちゃん!」
「英!」
及川と岩泉がやってくる。
「今回もよろしくね~!」
「よろしくお願いします」
国見が軽く頭を下げる。
その少し離れたところでは、月島が山口と話していた。
「ツッキー、今回も一緒に練習できるね!」
「うん」
「楽しみだね!」
「……まあ」
さらに別の場所。
研磨は黒尾の後ろに隠れるようにしていた。
「研磨、ちゃんとアップしろよ」
「やってる」
「それストレッチじゃねーか」
「アップの一部」
「屁理屈だなぁ」
そして――
「赤葦!」
木兎の声が体育館中に響く。
「今日も俺にトス上げてくれ!」
「はいはい」
赤葦はいつものように冷静に返す。
「赤葦! もっとテンション上げて!」
「無理です」
「なんで!?」
そんな中。
まだ一人だけ姿が見えない。
「角名は?」
赤葦がスマホを見る。
既読はついている。
けい:もう着きましたか?
少しして。
りん:今入口
赤葦が顔を上げる。
1
6,863
127
らーゆダヨ🍜
1,318
「来たみたいです」
その直後――
体育館の扉が開いた。
「お待たせ」
角名が入ってくる。
「遅い」
白布が言う。
「ごめん」
「お前またギリギリだろ」
「間に合ったからいいじゃん」
「よくねえよ」
6人が自然に集まる。
ただし――
周りから見れば、ただの別々の高校の選手たち。
誰も知らない。
この6人が、今話題の超人気アイドルグループ――
チョコレートのメンバーだということを。
「じゃ、アップ始めるぞ!」
監督の声。
「はい!」
一斉に動き出す。
そして練習が始まった。
ボールが飛ぶ。
「国見!」
及川からのトス。
国見が助走を取る。
――バンッ!
強烈なスパイクがコートに叩き込まれる。
「ナイス!」
「……普通」
国見は淡々と戻る。
一方、白布。
「白布、もう一本!」
「はい!」
正確なトスが上がる。
月島がブロックに跳ぶ。
「……!」
バンッ!
研磨が相手コートの空いた場所を見つける。
「そこ」
ボールが落ちる。
「ナイス、研磨!」
「……疲れた」
「まだ始まったばっかだぞ!」
そして赤葦。
「赤葦、もう一回!」
「はい!」
木兎へ完璧なトス。
「うおおおお!!」
スパイクが決まる。
「ヘイヘイヘーイ!!」
「……うるさいです」
角名はブロックの位置を見ながら、相手の癖を観察していた。
「……ここ」
指先を狙って打つ。
ブロックアウト。
「ナイス、角名!」
「どうも」
6人とも、普段の無気力さからは想像できないほど真剣だった。
アイドルとしてステージに立つときも。
バレーをしているときも。
6人は誰にも負けない。
そして――
この一週間の合宿で。
6人の「もう一つの顔」が、少しずつ周囲に知られていくことになる。
コメント
1件
わあ、第3話読了です!合宿編、始まりましたね✨ それぞれ別々の学校で練習してるのに、グループLINEで繋がってる6人の距離感がすごくいいなと思いました。国見がスマホを見てちょっと笑うところ、体育館で自然に集まるシーン、どちらも「アイドル」と「選手」の顔の切り替えが丁寧で好きです。普段の無気力さと練習中の真剣さのギャップも魅力的。続きが気になります!