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◻︎日下千尋と森下茜、結城宏哉との出会い
【タカギテクニカル】
これが私が入社した会社。概要はよくわからない。志望動機は、ホームページに掲載されていた写真に、好みの男性がいたから。
私の目標は、狙った男性を片っ端から撃ち落とすこと。もちろん、その中にいい物件がいたら旦那さんにすることが最終目標だ。
私の入社式の日は、戦闘開始の日。まずは、あのホームページにいた男性を見つけないと。
6階ホールに集められた新入社員と、偉そうなおじ様たち。くるりと見渡してもそれらしき男性は見当たらない。
「……であるからして、今こそ我が社には君達のような若い力が必要であります……」
社長の長いつまらない挨拶が続いている。こんなことに時間をとられるのは性に合わない。私はこっそりスマホを出して、あのホームページの写真をもう一度見た。
_____よし、おぼえた!
「そこ!」
「ひっ!」
不意に後ろから声をかけられて、驚いた。低い声で指摘してきたのは、グレーのパンツスーツを着た女性だった。年齢は30過ぎ?
「す、すみません」
「没収!」
私の手からスマホを取る。
「え、そんな…」
まるで授業中に、スマホを取り上げられた生徒のようだ。
_____マジで?
咄嗟に女性の首からかけられた身分証を見た。
“森下茜、新規事業開発室チーフ”
その森下チーフは、私のスマホをポケットに入れて、そのまま後ろへ下がって行った。
_____えっ、私のスマホは?
式典はまだ続いていたので、仕方なくそのままでいた。
入社式も終わり、今後の日程と新入社員研修についての説明があった。研修でいろんな部署をまわって、配属先は希望を出せることになっている。人気部署だとそこの上司が配属させるかどうか決めるそうだけど。
「…というわけで、明日からは本格的な研修が始まるから、心してかかるように。解散!」
説明をしてくれた男性が部屋を出ようとした。
「あの、すみません、お聞きしたいことが」
「はい、何でしょうか?」
「森下茜さんという方はどちらに?」
「森下?」
「新規事業開発室のチーフ?とか」
「あー、それなら4階ですよ」
「ありがとうございました」
私は慌てて4階へ降りる。スマホを取り返さないと、電車にも乗れない。
エレベーターは人が並んでいたので、階段を使う。
【新規事業開発室】、あった!
「あの、すみません、森下チーフはどちらに?」
「森下なら…あれ?今いたのに、ちょっと待っててくださいね」
奥へ入って行った女性が、パーテーションへ回り込むのが見えた。コーヒーTimeと、入り口にプレートがかかっているのが見えた。
しばらくして手招きをされたので、恐る恐る中へ入る。
「森下チーフは、今休憩中だからここで話してね」
「はい」
パーテーションを入ると、コーヒーのいい匂いがした。そこにはさっき私のスマホを没収していった女性がいた。
「さきほどはすみませんでした!」
目を合わせるより先に深々と頭を下げる。
「え?何したの?チーフ。こんな可愛い子に」
森下チーフが答えるより前に、一緒にいた男性が答えてくれた。私は、そっとその男性を見た。
_____あっ!!ホームページの人だ!!
ここにいたんだ、ラッキー!