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県庁所在地(水戸市を想定)にある大きなホテルの宴会場。立食パーティー形式の婚活イベント会場にいる玲奈。
男女それぞれ20人ずつで、各自番号札を胸につけ1対1の対話に臨む。
玲奈「これが婚活パーティーかあ。タイトスカートにヒールの高い靴なんて滅多に着ないから、動きにくいなあ」
司会者「7番の男性と12番の女性の方、こちらのボックス席へおいで下さい」
玲奈「あ、あたしだ」
玲奈が小さなテーブルをはさんで向かい合わせに椅子が一脚ずつ置いてある,衝立で区切られたスペースへ歩いて行く。
相手の男性は玲奈より干支一回り年上の中年。
男性「よろしくお願いします」
玲奈「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」
しばし二人で話しているが、玲奈の表情が微笑みながらも困惑した感じになっていく。対話の時間が終わって、玲奈が料理と飲み物が並んだ広いホールに戻ってため息をつく。
玲奈「はあ。もう、なんでみんな同じ話ばっかりなのよ」
司会者「10番の男性の方。次は2番のボックス席へおいで下さい」
ボックス席からボックス席へと足早に移動する男性の後ろ姿が玲奈の目に入る。
玲奈「へえ、あの男と人、さっきから引っ張りだこじゃない。なんか見覚えがあるような気がするな」
司会者「では1対1のお時間は終了となります。しばらくの間、みなさん、ご自由にご歓談下さい」
ホールに参加者全員が出て来る。
玲奈「ひゃあ、こうして見ると壮観だな。反対側の人たちはよく見えないわ」
玲奈の背後から、30代半ばの男が近寄る。服は高級なスーツだが、チャラそうな顔立ちで、髪は茶色に染めて、ピアスをあちこちに付けている。名は豪田(ごうだ)慎一(しんいち)。
豪田「よう、ここにいたのか」
玲奈「あ、さきほどはどうも」
玲奈の心の声
「わあ、今日会った中で一番苦手な人だ」
豪田「じゃまあ、とりあえずどっか行こうぜ」
玲奈「はあ? いえ、これからカップルの組み合わせの発表があるはずでは?」
豪田「そんな物すっ飛ばせばいいんだよ。俺はこの地方の名士の跡取り息子なんだってさっきも言ったろ。その俺が結婚してやってもいいと、そう言ってんだぜ」
玲奈「話が飛び過ぎです! そもそも、ついさっき初めて会ったばかりじゃないですか」
豪田「いいから来いよ。あんたみてえな庶民の女にゃ玉の輿ってやつだろうが」
豪田がなれなれしく玲奈の腰を片腕で抱き、無理やり連れて行こうとする。
豪田「親父が早く跡取りの子ども作れってうるせえんだよ。あんたの体ならいい子どもが出来そうだ」
玲奈は側にあるテーブルの上のコップを手に取り、豪田の顔にかける。豪田を突き放して後ずさる。
玲奈「いいかげんにして下さい! 非常識にも程があります!」
玲奈の怒号に、周りがざわめく。ハンカチで顔を拭きながらなおも玲奈に詰め寄ろうとする豪田。
豪田と玲奈の間に一人の男性が割って入る。その顔を見て玲奈が驚く。
玲奈の心の声「え! 北野さん!」
北野「ああ、よかった。はぐれたかと思った。さあ、運営に登録しに行きましょう」
豪田「ああん? 何だてめえは?」
北野「こちらの女性と交際する事になった者です」
北野がウインクして玲奈に合図する。玲奈もとっさに話を合わせる。
玲奈「あ、ええと、はい、そうです。こちらの方と先約がありまして」
豪田「ちっ、後悔しやがれ。庶民の分際で」
豪田はそのまま、近くの椅子を蹴飛ばして外へ去って行く。
北野「大丈夫ですか、玲奈さん」
玲奈「ありがとう、助かりました。北野さんも参加してたんですか。全然気がつかなかった」
北野「僕もですよ。まさか玲奈さんがいたなんて」
玲奈「ねえ、一緒にここ出ませんか? もう、なんか嫌になっちゃって」
北野「そうですね。運営の人たちに嘘つく事になるけど、逃げだしましょう」