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#ロマンスファンタジー
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「あ……っ!」
シエルの瞳に私の「正体」が映り込んだと悟った瞬間、私は弾かれたようにその場にしゃがみ込んだ。
頭が真っ白になり、指先が凍りつく。
ずぶ濡れになった重いドレスの裾を必死に手繰り寄せ、虹色に光る足首を
その罪悪の証を覆い隠そうと、爪が食い込むほど強く布を握りしめる。
けれど、一度溢れ出した魔力は無情にも止まってはくれない。
濡れた布地を透過して、呪いの鱗は闇夜を切り裂くほど美しく、そして異形な輝きを放ち
そこに私の本性があることを残酷に主張し続けていた。
つい、顔を伏せてしまう。
10年間、片時も忘れず、ただこの日のためだけにすべてを捨てて生きてきた。
けれど、いざ目の当たりにした彼は、あまりにも気高く、完璧な「人間」だった。
こんなおぞましい鱗に覆われた姿を見られたら
彼は私を「化け物」だと怯え、拒絶するのではないか。
恐怖で全身の震えが止まらず、歯の根がガチガチと鳴り、呼吸の仕方さえ忘れてしまいそうになる。
しかし、私の予想に反して、シエルは逃げ出すことも、恐怖に満ちた拒絶の言葉を吐くこともなかった。
代わりに聞こえてきたのは、激しい雨音を切り裂くような、切実で、どこか確信に満ちた深い呼吸の音。
「ラム……。君、なんだよね? ラムなんだろう?」
震える私の肩に、大きな、温かな手がそっと置かれる。
シエルは私の震えに構うことなく、迷いのない力強さで私の腕を掴んだ。
そして、壊れ物を扱うような慎重さと
決して離さないという意志の強さで、私を地面から助け起こした。
「み……見ちゃダメ……っ! 見ないで……!」
私は必死に抵抗し、顔を背けようとした。
こんな光を放つ醜い足を、彼の清らかな瞳に映したくなかった。
けれど、彼は離さなかった。
次の瞬間、私の視界は彼の燕尾服の漆黒に覆い尽くされた。
シエルが雨に打たれて芯まで冷え切った私の体を、折れそうなほど強くその腕の中に抱き寄せたのだ。
彼の胸からは、雨の匂いに混じって
先ほどまでステージで放っていた情熱の名残のような、熱い体温が伝わってくる。
その鼓動は驚くほど速く、私の胸の音と重なって響いた。
「シエル…わ、私のこと、覚えてるってこと…?」
私の掠れた問いかけに、シエルは抱きしめる力をさらに込めた。
「…当たり前だよ。忘れるはずがない。でも、まさか……本当に、わざわざ僕の元に来てくれたんだね」