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「次は、ストロベリームーンです!」
ある音楽番組。
会場に歓声が弾ける。
ピンクと白のペンライトが、波のように揺れた。
魔法少女衣装に身を包んだ5人組アイドル――
ストロベリームーン。
通称、べりむ。
大手事務所ではない。
デビュー当初は、地下アイドル扱いだった。
それでも、地道な努力と、確かな実力で、少しずつファンを増やしてきた。
その中心にいるのが――
「みんな……ありがとう……!」
透き通る高音。
柔らかい笑顔。
センターのコトコ。
童顔で、少し抜けている。
静かで、守ってあげたくなる存在。
そして、その隣で歌うのが――
「最後まで、ついてきてね!」
力強く、安定した歌声。
頼れる最年長。
メインボーカルのモカ。
年上なのに妹キャラ。
そして何より、
コトコを溺愛する“ガチファン”。
「コトコが世界一かわいい!!」
楽屋でも、カメラが回っていても、それは変わらなかった。
そんなべりむに、
異変が起きたのは三ヶ月前。
「……コトコ、活動休止?」
「体調不良……?」
公式発表は、それだけだった。
理由は、“健康上の都合”。
だが、
ファンもメンバーも、本当の理由を知らない。
「コトコ……大丈夫かな……」
モカは、誰よりも心配していた。
「絶対、戻ってくるよね?」
「うん……」
他のメンバーも、
不安を隠しきれない。
だが、コトコの“家”について、
彼女たちは何も知らなかった。
コトコの本名は、宝生 心音(ほうしょう ここね)。
実家は、世界的リゾート企業――
宝生リゾート。
海外にいくつも
高級リゾートを持つ、
超名門一家。
だが、
その事実を知る人は少ない。
芸能界では、
「庶民派アイドル」として売り出されていたからだ。
宝生家の日本の本邸には、
・コトコ
・専属執事の霧島
・数十人の使用人
だけが残っていた。
両親は、
海外事業に集中しており、ほとんど帰国しない。
ある意味、さみしげな家庭だ。
そして――
この屋敷には、
“極秘の存在”がいた。
コトコの部屋の奥。
静かな寝室。
そこに、小さなベビーベッドが二つ、並んでいた。
「……すぅ……」
眠っているのは、
双子の赤ちゃん。
心愛(ここあ)
心真(ここま)
二人の存在を知っているのは、
・霧島
・事務所のごく一部
・医療関係者
だけ。
モカにすら、言っていなかった。
コトコは、アイドルとして活動しながら、誰にも言えない“母”だった。
「……霧島さん」
「お任せください、心音お嬢様」
霧島は、完璧な執事だった。
無表情で、
冷静で、
忠実。
だが、
双子を抱くときだけ、
ほんの少しだけ
表情が柔らぐ。
「お二人は、宝生家の未来ですから」
ある雨の夜。
モカは、仕事帰りに一人で帰宅していた。
「……今日も、コトコの話ばっかりしちゃった。でも…ほんと心配…」
彼女は、スマホの待ち受けを見つめる。
そこには、センター衣装のコトコとのツーショット。
「早く戻ってきてね……」
その瞬間――
背後で、足音。
「……?」
振り返る間もなく、
衝撃。
視界が、
暗くなる。
翌日。
ニュースは、
“事故死”として報じた。
《アイドルグループ・ストロベリームーン、メンバー、モカさんが不慮の事故で死亡――》
だが、
それは“事故”ではなかった。
犯人は、捕まっていない。
逃げたのだ_
次に目を覚ましたとき。
モカは、声が出なかった。
体が小さくて、視界が低くて、手足が短い。
「……?」
見上げた先に、
見覚えのある顔。
「……コトコ……?」
「こあ…?」
「コトコ!!コトコ!!元気にしてたの?」
声にはならない。
だが、心は叫んでいた。
モカは、
**心愛(ここあ_こあ)**として生まれ変わっていたのだ。
隣には、双子の弟。
心真(ここま_こま)。
彼もまた、別の“前世”を持つ存在だった。
こまの記憶の奥には、
・仕事帰りの夜
・ライブ会場
・ペンライト
・モカの歌声
が残っている。
「……モカちゃん……」
推しだった。
生きる意味だった。
愛していた。
全てだった。
人生で初めて、“心から応援した人”。
だが、
彼はまだ知らない。
隣にいる双子の姉が、その“モカ”本人だということを。
夜。
宝生 心愛_こあ、としての生活も少しは慣れてきた。
そう思う。
宝生家の庭に、赤い月が浮かぶ。
ストロベリームーン。
こあは、その月を見つめながら、前世の記憶を思い出していた。
(きれいなストロベリームーン…)
(……事故じゃなかった)
(……誰かが、私を……)
(……許さない)
その胸には、もう一つの想いがある。
(……コトコを守る)
(……今度こそ)
こうして、
・アイドルの光
・財閥の闇
・殺人事件
・転生
・秘密の双子
すべてが交差する物語が、静かに動き始めた。