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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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「来たぜ! 俺達の夏が! 皆、行くぞぉぉぉ!」
「出っ歯、うるせぇ、マジで」
「駅では止めよう、ね。止めよう、めっちゃ見られてるから」
男性諸君からは、色々な声が上がっているが。
黒沢君の隣で「おー!」って小さく口にしながら、振り上げてしまった拳は行き場を失い。
皆にバレない内に静かに下ろしていく。
しかしながらナナさんには目撃された様で、ものっ凄くニヤニヤされてしまったけど。
普通に恥ずかしい。
今私、完全に出っ歯さんと同じテンションだ。
駅まではお兄ちゃんに送って貰い、お泊りセットを詰め込んだ大きなバッグをワッセワッセと運んで来た訳だけど。
そっちは駅で待っていた黒沢君に回収されてしまい、現在手ぶら。
その後合流した出っ歯さんとグレーさん、そして最後にナナさんがやって来たところで。
二人はナナさんの荷物は自分が運ぶんだと、両者共譲らない戦いを繰り広げたが。
勝者はグレーさんに決まり、その代わり出っ歯さんは手が空いている私と一緒に売店に駆け込み、一緒にお菓子やお弁当などをいっぱい買うという。
これ等を両手に持った出っ歯さんは、電車に乗る前からテンションが上がりっぱなしだ。
そしてソレは、私も一緒な訳で。
「本当に大丈夫だった? シロさん」
「はい! 全然問題ありません! 楽しみです!」
未だにちょっとだけ心配そうな瞳を向けて来る黒沢君に対して、今日ばかりは自信を持って元気よく答えた。
だって、こんなに楽しみな旅行って初めてなのだ。
目的地に着けばtimelimit:10から色々教えてもらえるし、それまでの道中だって楽しみ。
電車の中で皆揃ってワイワイしながらお菓子食べたりとか、トランプとか、出来ちゃったりするのだろうか。
そう考えると、ソワソワしっぱなし。
学校行事の旅行とかだって、一緒の班になった人達とも気まずかったし。
ずっと黙って席に座っていた記憶しかないので。
けど今は、喋って良いんだ。
皆で楽しめるんだと考えれば、ワクワクが止まらない訳で。
昨日の夜とか、全然眠くならなくて困った程だ。
「今回は私が保護者代理だからねぇ~? シロちゃんシロちゃん、そんなにソワソワしてると危ないぞ~? ホレホレ、お姉さんと一緒に手を繋いでもろて」
「はい!」
ナナさんがそんな事を言って来たので、そのままガシッと彼女の手を掴んでみると。
何故か、プルプルし始めた。
あ、あれ?
言われた通りにしたのだけれど、何か間違っていたのだろうか?
「可愛い、何この可愛い生物。連れて帰って良いですか」
「ナナさん、これから向かう所ですから。白川さんだけ連れて勝手に帰らないで下さい」
そんな彼女に対し、黒沢君だけは物凄く冷たく突っ込んでいたけど。
凄い、今ですら楽しい。
友達同士だけで旅行って、こんなに良いモノだったのか。
という事で終始ナナさんと手を繋いだまま、到着した新幹線へと皆で乗り込んでいくのであった。
旅行だぁ! おー!
◆
「皆様、お待ちしておりました。初めまして、佐々木 天馬と申します」
電車内でも、既に満足です! って言える程楽しい移動時間を過ごさせてもらったのだが。
駅についてみれば、今度はお迎えに来てくれたテンと、そのご家族の姿。
話に聞いていた、彼の息子夫婦だというお二人なのだろう。
私達からすると、皆大人って感じの御一行。
こういうイベントの時に、家族全体が協力するって……なんか、良いよね。
わざわざ迎えに来ていただいたのは、ちょっと申し訳ないけど。
というごく普通の感想を胸に抱きつつ、私達はピタリと動きを止めてしまった。
だって……テンの息子さん、の奥様。
そちらの方が、まるでツアー旅行のガイドさんみたいに、ポップを手に持って目印にしてくれていたのだが。
そこに書かれていたのが。
「ガンサバイブオンライン、“ナンバーズキラー”御一行って……え、えぇ?」
「うむ! 分かりやすいだろう!? 俺が予約する時に、そう伝えた! お迎えに来て下さるというのに、初対面では分からないかもしれないと危惧してな!」
「お前、お前ぇ!? こんな頭のおかしいポップを、これからお世話になる方々に持たせてんじゃねぇよ! いやホントすみません! コイツいつもこうなんで! もう、もう下げて大丈夫です! 本当にすみませんでした!」
黒沢君とグレーさんが、出っ歯さんの頭を掴んで必死に奥様へと頭を下げていた。
これに対し、「あらあら、良いのよ~? よくいらっしゃいました~」なんて緩い反応を見せるお相手と。
この状況にお腹を抱えてプルプルしているナナさん。
テンと息子さんはものっ凄く笑顔という、結構カオスな光景が広がってしまったのだが。
「さて、それでは皆様参りましょうか。車も準備してありますから。ささっ、どうぞこちらへ」
「え、えっと……今日から数日間、お世話になります!」
とりあえず生き残りである私が、お二人に深々と頭を下げるのであった。
なんかちょっと、最初から前途多難な気がして来たんだけど、気のせいかな。
相手がどれくらいこの場所で待っていたのかは知らないけど……ちょっと、あのポップを持ったまま待たせるのは。
私でも恥ずかしいかもしれない。
お仕事なら、仕方なくやりますけども。
そんなこんなありましたが、皆揃ってマイクロバス? みたいな大きめの車へと乗り込み。
やって来たのは……。
「すげぇ! 滅茶苦茶立派な建物! 超和風! そして道場!」
「俺は、ここで……強くなるのだぁ!」
グレーさんはこういう日本家屋みたいな場所が好きなのか、物凄くテンションが上がっていた。
これと同様、違う意味でテンションの高い出っ歯さんも拳を振り上げている状態。
あの、ですね。
まだ門を潜ったばかりで、お庭なんですけども。
とてもとてもご立派で、非常に綺麗な空間。
あまりこういう所で騒ぐのは、ちょっと……などとやっていると。
「はいは~い。という訳で、現場に着きましたよぉ~! 本日から数日間お世話になる、武術道場……しかも何と、こちらが得意としているのは暗殺術! これだけでも、現代人としては血が滾るというか、思わず中二病が再発しそうになりますね! という事で、これからお世話になる方々のご紹介でーす!」
ナナさん、めっちゃ撮影してる。
事前に話は通してあったみたいだし、皆様ノリノリだけど。
息子さん夫婦、物凄くにこやかにピースしてるし。
テンに関しては微笑を崩さず、カメラに向かって静かに御挨拶していたけど。
「こ、こんなに騒がしくしちゃって良いんでしょうか……」
「駄目、だよねぇ……普通は。これは本当に、やらかしたかなぁ……」
黒沢君と一緒に、二人揃って口元をヒクヒクさせていた。
しかし現場の混乱は、これだけに収まらず。
「天馬爺ちゃん! お客さん来たのー!?」
「東京から来た人たちなんだよね!? こんにちはー!」
立派なお屋敷みたいな日本家屋から、5~6人の子供達が一斉に駆け出して来たではないか。
わ、わぁ? 大家族だぁ……なんて思っちゃったけど、違うか。
今回の合宿に参加する、“近所の子供達”って事なんだろう。
この人のお孫さんの話を聞いた限り、私と同い年だって言っていた気がするし。
「どわわわ、ちょ、ちょっとだけ待ってねぇ? みんなーこんにちは~。私、ネットに動画を上げるお仕事してるんだけど。皆の事も写しちゃって大丈夫かな? お父さんやお母さんって、お家の中に居る? 許可貰わないと、ちょぉっとカメラ向けられなくなっちゃうんだけど……」
ナナさん、流石プロ。
物凄い対応の速さで、カメラを逸らしてから子供達の前に座り込んだ。
そしてどうやら、私達の話はテンの方から親御さんにも伝えてあるらしく。
今居る子供達はむしろ、“テレビに出られるんだ!”みたいなテンションで集まって来た御様子。
テレビでは無く、ネット動画なんですけどね。
そんな訳で、ちゃんと許可を貰った事を確認してから一人ずつカメラの前で……本名ではなくあだ名を自己紹介していくという謎の時間が。
まぁ、色々危ないからね。
個人情報は晒さない方が良いんでしょうって分かるんだけど。
「よぉし、それじゃ皆で強くなっちゃうぞー!」
「「「お~!」」」
「「うぉぉぉ!」」
彼女の掛け声と共に、子供達は可愛らしい声を上げ。
出っ歯さんとグレーさんも、一緒に野太い声を上げ始めると言う。
「ホント、なんて言うか……すみません。騒がしくしちゃって……」
「すみませんすみませんすみません」
黒沢君と私に関しては、ずっとペコペコしている事になってしまった。
「いえいえいえ、賑やかで楽しいですよ? それにこんな場所ですから、いくら騒いでも周りから苦情が来る事などありませんよ。年寄りばかりですし、皆若い人達は大好きですから。田舎へ遊びに来たんだと思って、お二人も存分に羽を伸ばして下さいね?」
何かもう本当に申し訳なくなるくらいに騒いじゃっているけど、テンに関してはずっとニコニコ。
だ、大丈夫かなぁ……コレ。
とか何とか不安になりつつ、私達は揃って今回の合宿場所へと足を踏み入れて行った。
紹介ページには道場の写真が多かったけど……お家の方も、物凄く立派だぁ。
なんかちょっと私の実家を思い出してしまいそうになったけど、此方のお家は活気があって凄く落ち着く。
というか、居心地が良いって感じる。
こんな所に皆でお泊り出来るのか……しかも、数日間も。
よ、よぉし、頑張ろう!
それに、きっとご飯の用意とかもあるだろうし。
私はそっちでも、出来ればご協力させて頂こうと思います。
コメント
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第148話、一気に夏の空気が来たね!🌞 シロちゃんが「おー!」って拳あげちゃうとこ、可愛すぎて思わずにやけちゃった。ナナさんに目撃されて照れるのも、すごく人間味あって好きだな。 あと、テンさんの「ナンバーズキラー御一行」ポップには笑ったww 黒沢くんとグレーさんが謝ってる横でシロちゃんがちゃんと挨拶してるのが、このグループのバランス感じさせるな〜。 子供たちまで出てきて、もうカオスだけど温かい雰囲気が伝わってきて、これからの合宿が本当に楽しみ!