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そんな訳で、皆で挑んだ10番目の賞金首のコピー。
私にとっては、もはや慣れ親しんだ相手と言えるのかもしれないが。
サブキャラで、しかも皆と一緒にと言うのは初めて。
だからこそ緊張した面持ちのまま、暗い路地へと歩みを進めて行った訳だが。
「なんっ!? はぁ!?」
私達の後ろに控えていた筈のグレーさんから、妙な声が上がった。
慌てて身軽な前衛が振り返ってみると、そこには。
背後から刀を突き立てられている、ウチのパーティのタンクが。
これまでは一対一を望むかのように、あえて姿を見せて来た相手。
だが今の私達はパーティ。
なので着実に、一人ずつ狩りに来た結果と言う事なのだろうか?
初手、完全なる隠密攻撃を貰ってしまった。
そんなのが、仲間の後ろで刃を突き立てたまま口元を吊り上げていた。
「グレーさん!」
「まだ飛び込むなシロ! 我々まで慌てればすぐに全滅する! 敵を見失わない事だけに集中しろ!」
彼の救助に向かおうとした私に対して、珍しく出っ歯さんが冷静な声を上げた。
本来なら一番に飛び込みそうなのに、バッと腕を横に突き出し、私の行く手を阻んでくる。
「けどっ!」
「グレェェェ!」
「まか、せろっ!」
これ等の行動も予測していたのか、攻撃を受けて既にキル判定寸前のグレーさんは。
自らの腰に付いた手榴弾のピンを引き抜いてから。
「これで勝てればラッキーって事で……後は頼む!」
ズドンッ! と凄い音を立てながら、攻撃を受けたグレーさんは迷わず“自爆”を選んでみせたが。
此方同様、相手はすぐに反応して爆発から逃れる位置へと身を潜める。
「行くぞ! 絶対に逃がすな!」
「りょ、了解!」
「位置情報を常に共有して! 私もずっとサポートに入れる場所に動く!」
残された前衛組に関しては、次の瞬間から一斉に動き始めた。
手榴弾によって巻き上がった土埃を突っ切りながら、出っ歯さんは相手に突撃、その補助に近い状態で私が続く。
手にしたサブマシンガンを乱射して牽制しながらも、一番槍が飛び込む隙を作ろうとしたのだが……。
「っ! 出っ歯さん上です!」
「ちょ、ちょぉぉ!? これ、そういうゲームだったか!?」
ソロで対戦している時には、相手の身体能力に随分と驚かされた事が多かったが。
やはり初見だけど、どうしたって驚きの方が先行する様で。
隠れていた場所の壁を蹴り、普通の人なら「その高さまで跳ぶ!?」と言う様な場所から奇襲をかけて来るコピーキャラ。
これに驚き、出っ歯さんが脚を止めてしまった……が。
「スタイリッシュアクションなら、負けないかんね!」
此方にも一人、“そういう動作”が得意な人が居るのだ。
柘榴とAI

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#没入感フィクション
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メインアカウント程の能力値は無いにしろ、感覚はその身に宿しているナナさん。
私達を追って来た彼女が、相手同様壁を蹴りつつ空中でハンドガンを乱射。
やはりsevenとして、他のNPCとも戦闘経験を積んでいるのだろう。
もしかしたらこう来るかも、という事前情報が無いと出来ないでしょって程の対応の速さで、襲い掛かって来た10番目を止めようとしている。
これに対し、相手方は。
「……フ」
「ぶへらっ!?」
痛そうな声を上げる出っ歯さんの顔面を足場にしつつ、空中で体勢を変える。
攻撃よりも防御を優先したようで、腕で頭を守りながら……もう片方の武器を持っている手は、身体の後ろへと構えているのが分かった。
この動作、もう何度見たか分からない。
空中戦とも呼べるような、やけに高度を取った跳躍の後。
変な体勢で身体に武器を隠す様な構え方、あの後は絶対――
「っ! ナナさん防御! ナイフが飛んできます!」
「嘘でしょこの状態で!?」
敵が地面に降りるまでの僅かな時間。
それこそ瞬き一つで終わってしまいそうな、この間に。
相手は身体を丁寧に捻りながら刃物を投げて来るのだ。
着地を狙おうとする敵に対しての、timelimit:10の得意技。
当初私も、コレに何度やられたか分からない程。
ほんの少しだけ注意を逸らしたその瞬間には、目の前に刃物が迫っていた事が何度もあった。
「ちょっ……とぉぉ! 痛いっての!」
両腕を顔の前でクロスさせる様にして、どうにかナナさんは防御した様だが。
視界が塞がれた事と、腕にナイフが突き刺さった影響で見事にバランスを崩し。
ナナさん本人は勢いよく飛び出した影響で、派手に落下。
この間に音も無く着地を済ませた敵は、そのまま流れる様な動作で身を地面に這わせるくらい低く伏せ。
先程ナイフを投擲した“身体の捻り”を使って、私と出っ歯さんを連撃で足払いしようと蹴りを繰り出して来るが。
「ふっ!」
「どわぁっ!?」
回避の為にすぐさま跳躍した私と、派手に転倒する出っ歯さん。
もう、何度も経験したから覚えている。
この蹴りを貰えば相手は絡みついて来て次のナイフを首に滑り込ませて来る、回避すればそのままもう一度身体を回転させて回し蹴り。
跳躍してしまった以上こっちはすぐに対処出来る筈が無い。
では、これに対しての対処法は……。
「こっちのペースに、持ち込む!」
知っていたからこそ出来る、としか表現出来ないけど。
飛び跳ねたと同時に銃を構え、そのまま相手に向かってフルオートで乱射。
6keyの能力ならそもそも足払いに対して反撃出来たり、回避後だって相手の蹴りをあえてその身で受けながら引き金を引くって真似も可能だったのだが。
生憎と今の私は46leather。
賞金首程のパラメーターも無ければ、当然射撃だって上手くない。
緊急事態の連続について行ける程の感覚と、筋力を有していないのだ。
更に言うのなら、このキャラは体重が軽い。
一発でも蹴りを貰えば、それこそ派手に吹っ飛ばされる事だろう。
当たらなくても良い、とにかく相手の追撃を許すな。
コレをやられてしまうと、間違いなく今ここで出っ歯さんがキルを取られる。
だからこそ……がむしゃらに撃ちまくった。
その結果。
『シロさんナイス対処! 一旦二人を連れて下がって! 深追いするは危険過ぎる!』
私の乱射に対し、NPCはとにかく防御優先の体勢に移ってくれたらしく。
防弾服で頭を守りながらも後退したところで、今度はクロさんからの援護射撃が入った。
相手の肩にヒットしたのは見えたが……浅い。
直撃では無く、掠っただけ。
しかし対物ライフルの威力はそれでも相当なモノらしく、相手の左腕はもう使えないだろうという所まで抉れるようなエフェクトが発生。
このまま持久戦に持ち込めば、勝てる可能性は大いにある。
これで私が求めている“答え”が見つかるのか? 言われると、正直分からないが。
それでも今は、“皆で勝つ”事が最優先の為。
「ナナさんのカバーに入ります! 出っ歯さん早く起きて! クロさんは援護をお願いします! 一度仕切り直します!」
『了解!』
「す、すまんシロ……後れを取った」
「ひぃぃん……こっちも腕に深々とぶっ刺さったよぉぉ。絶対この試合中デバフ残るってぇ……」
すみませんグレーさん、貴方のアバターだけはこの場に残して逃げさせていただきます。
と言う事で、相手が居た方向に向かってとにかく乱射しながら一時撤退。
分かってはいたけど、物凄く強いって知っていたけど。
46leatherでやると、本当に……“桁違い”だあの人。
もっと言うなら、パーティ戦だと攻め方が全然違う。
こういったバリエーションも賞金首には必要なんだという、物凄く良い勉強になる。
なるんだけど……やはり“ゲーム”である以上、勝ちたい。
なら、私がやる事は。
「相手は追尾とステルスのプロです! クロさんは相手を探すのではなく、私達を“見て”下さい! その場その場で対応するしかない!」
『分かった!』
「出っ歯さんは“何が起きても”絶対に止まらないで! スピードだけなら私達の方が上です! こっちのやり易い環境に持ち込みます!」
「承知! 今度は、絶対にダサイ姿は見せん!」
「ナナさんは負傷した以上完全にサポートに入って下さい! 10は無茶した所で勝てる相手じゃありません!」
「うひぃ、やる気だねぇシロちゃん。オッケェイ! 出来る事だけに、全力で集中するよ!」
と言う訳で、私達は一旦その場を全力で撤退するのであった。
だけど、分かる。
相手は、今の私達ですらしっかり見ている。
コメント
1件
おつかれさまです、くろぬかさん!第130話、めっちゃ熱かったです🔥 チーム戦ならではの連携と焦りがリアルで、特にシロちゃんの「知ってるからこそ出来る対処」がカッコよかったです。グレーさんの自爆には「うわぁ…っ!」って声出ましたし、出っ歯さんの「ダサイ姿は見せん!」の言葉にグッときました…! 十番目のコピー、本当に強敵ですね。「パーティ戦だと攻め方が全然違う」って台詞に、敵の賢さと怖さが詰まってて震えました😭✨続き、楽しみにしてます!