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柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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柘榴とAI

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距離を置いてしまった場合のtimelimit:10は、とにかくやり辛い。
向こうより先にこっちが見つける事が、非常に困難な相手なのだ。
特殊な装備を使っている訳じゃない、つまり技術のみでそれをやってのける。
まるで人間の注意が逸れる瞬間とか、注目し辛いポイントを全て押さえているかのように。
決して小柄という訳でもないのに、何故か“見つけられない”。
そんでもって、今私達が戦っているのは結局“劣化版”でしかない。
だというのに……。
「ナナさん後ろ!」
「うそっ!? さっきクリアリングしたばっか――」
先程のダメージで、左手首から先が動かなくなってしまったらしい彼女に対し。
暗闇から足音など立てず接近してくる狩人。
その手にマチェットを掴み、既にナナさんに対して刃を振り上げているではないか。
「任せろ!」
これに対していち早く反応したのは、出っ歯さん。
彼女を押し退ける勢いで飛び出し、あの派手なコートの裾を振り回す様にしながら間に立ちはだかってみれば。
「……チッ」
珍しく、悔しそうな相手の声が聞えて来た。
不思議に思いながら此方も走り、援護できる位置取りをした訳だが。
どうやら出っ歯さんのコートが、相手の刃物を絡め取ったらしい。
勢い良く振り回された裾に対して、刃が若干刺さったのか。
コートをはためかせながらその場で横一回転した出っ歯さんの近くに、相手のマチェットがキンッ! と高い音を立てながら転がったのが見えた。
「攻めます! カバー!」
「どぉっせぃ!」
敵にタックルする勢いで突っ込んだ私に合わせて、ナナさんは出っ歯さんの背中から飛び出し。
地面に寝ころぶような体勢でハンドガンを連射。
コレを防ぎながら暗闇に逃げようとする10に対し――
「逃がすか!」
こちらもマシンガンを連射しつつ突っ込んでみれば、相手の防弾装備に防がれてはいるものの……着実にダメージを与える事が出来ている。
いける! なんて、思った時は絶対。
「ここっ!」
「うっそ……シロちゃんマジ!?」
怯んでいる“フリ”をしている相手に、此方が近付いた瞬間。
急に鋭い動きを見せて回し蹴りを放ってくるNPC。
その靴底には、スパイク。
octopus8に貰ったブーツ程ではないにしろ、彼も似た様な装備を使って来るのは知っている。
まさに暗殺道具とも言えるソレは、彼の身体のいろんな所に隠されているのだから。
だが……知っていれば、対処出来ない事は無い。
向こうの蹴りを飛び越える程に高く跳躍して、こっちも相手の顔面に向かって靴底を叩きつけた。
そして。
「貫け!」
グリッとブーツを捻る様な動作をすると、ズバンッ! という音と共に射出されるアンカー。
此方の行動に違和感を覚えたのか、10のコピーは顔面に蹴りを受けながらもすぐさま姿勢を変えようとしたが。
突き出した棘は彼の顔面を削り取る様にして突き出され、赤いダメージエフェクトをまき散らすが……また、浅い。
即死判定が取れる程のダメージを与えられず、こっちの攻撃が回避されてしまった。
「出っ歯さん!」
「むわぁぁかせろぉ!」
零距離とも言える場所に私が居る為か、銃は使わず。
彼は急加速しながらNPCに特攻。
近距離戦闘を行っていた両者がバランスを崩した所で、もう一人が突っ込んで来た形。
傍から見たら泥仕合もいい所だろう、って感じではあるのだが。
出っ歯さんのタックルは相手に直撃し、相手にも少なくない被害を与えつつ……変な体勢で蹴りを繰り出した私も、着地など出来ないであろう程バランスを崩していた。
そんな訳で、背中から地面に落ちそうになったところで。
「ほいっ! キャッチ!」
「ありがとうございます!」
私が地面に激突する寸前、スライディング状態でナナさんが飛び込んで来て受け止めてくれた。
そのお陰で落下ダメージも、ダメージによる継続デバフも無し。
むしろすぐさま立ちあがり、相手の追撃に向かえる状態に。
「クロ! 俺に構わず撃て!」
『ナイス出っ歯! スマン!』
一時的に手持ちの武器を失ったNPCに対し、揉みくちゃになりながら出っ歯さんが絡みつく。
流石にコレは予想外だったのか、彼の拘束から抜け出そうと必死になっている10のコピーだったが。
一瞬だけ他所へ視線をやった、次の瞬間。
「……え?」
グイッと出っ歯さんを引っ張るみたいにして、彼の身体の内側に“隠れた”。
しかも凄く変な体勢で、上半身を捻るみたいにしているのだ。
逃亡でも、防御でもない。
ましてや狙撃に警戒して身を屈めたにしては、随分と変な姿勢。
だが、その後すぐに行動の“答え”が分かった。
ズバンッ! と遠くで響く銃声に続き、出っ歯さんの身体に穴が空いた。
間違い無く、クロさんからの狙撃。
仲間もろとも、目標を仕留めようとした結果。
ゲームなんだから、もちろんこれだってアリだ。
なんだけど……。
「避けた……」
「嘘でしょ? いや、え。偶然?」
攻撃を受けたのは出っ歯さんだけで、貫通した銃弾は地面を貫いているのだ。
まるでどこに弾が飛んで来るのか分かっていたみたいに、NPCの身体は綺麗に射線を逸れている。
そして相手は、キル判定を貰った出っ歯さんをすぐさま退かし、そのまま暗闇へと飛び込んで行く。
何となく、だけど。
答えの方向性が分かった気がする。
あの人は、他人の“敵意”に非常に敏感なんだ。
だからこそクロさんが撃つ瞬間を察知して、そのタイミングだけおかしな行動を取った。
偶然にしか思えない程の、奇跡にも近い避け方をして生き残った。
でもそんな映画みたいな能力、現実で習得出来る訳が無い。
けど実際相手は生き残り、戦闘は続いている。
コレが現実で、何を言おうと覆らない相手の“実力”。
私の想像が全て正解なら、本当に相手は“対人戦の達人”とも言える。
6keyを使っている時でさえ、目の前で発砲したのに避けられた事があった。
出鱈目に動かれて当たらなかった、これだったら良くある事だが。
今の光景を見れば、それら全てが偶然だったとはとても思えない。
間違い無く、“狙って”避けた。
それにさっきの変な体勢。
アレはクロさんの位置を予測、もしくは把握した状態で“視覚的情報”を操作したんだ。
出っ歯さんからはみ出した部分から見える足や腕、これ等の情報を元にクロさんは撃つしかない。
つまりそっちを使って“自分はここに居る”と思わせた状態で、致命傷となりそうな部分に関しては逸らす。
狙撃手に偽の情報を教え、確実に此方の数を減らして来た。
この想像通りだとしたら……やっぱりあの人、ヤバイ。
「ど、どうする!? こっちは振り出しに戻ったのに、向こうは既に二人キルしてるよ!?」
やっば! なんて連呼しているナナさんは周囲にハンドガンを向けつつ、ずっと警戒を続けているが。
私達の周囲にはやはり深い暗闇ばかりが広がりで、相手の姿は目視出来ない。
これに関してはクロさんも同じなのか、発見報告を上げて来る事は無かった。
状況だけ見れば、確実に私達の負け。
完全に相手の土俵に誘い込まれた形。
このまま戦闘を続けた所で、次の襲撃で犠牲になるのは私とナナさん。
そして敵の姿が発見出来ぬまま、いつの間にか背後に迫ったNPCからクロさんがステルスキルされ、終了。
これまでの経験上、向こうのペースに呑まれた場合は絶対にこうなると予想出来る。
今回はイベント戦だし、皆でワイワイ楽しんでいるだけだ。
だからこそ、それもそれで楽しい経験とも言えるのだろう。
全部終わった後、勝てなかったーって皆で騒ぐだけでも充分楽しそうだ。
けど……そう、なんだけどさ。
「ごめんなさい、お二人共。ちょっとだけ、変な事しても良いですか」
感情が抜け落ちたみたいに、心の中が静かになっていくのが分かった。
戦闘中だと言うのに、目の前にステータス画面を表示させ……このキャラに残っていたポイントを振り分けて行く。
「ちょいちょいちょい、シロちゃん……それは駄目だってばぁ……」
私が何をしているのか気が付いたらしいナナさんが、無線を切りながらコソコソと声を上げて来るけど。
これまで見えなかった相手の“答え”が、目の前にあるのだ。
私一人では見つけられなかったソレが、この戦闘なら見つかりそうなのだ。
だったら私は……ソレが知りたい。
そして何より、“負けたくない”。
それからもう一つ、コレが一番強い原動力となっているのが自分でも分かる。
「これ以上……“友達”が傷付くのを、見たくないので」
なんて言ってから、ステータス変更を確定。
筋力、反射能力、その他特徴となりそうな項目を全て……“6key”に近付けた。
完全にあの能力を手に入れたって訳じゃないけど、むしろ全然足りないけど。
それでも……これまで以上に、“マシ”な筈だ。
「クロさん、これより“超近接戦”に切り替えます。なので……すみません、ちょっと援護し辛いと思います」
『……シロさん?』
彼の声を無線越しに聞きながら、手にしていたサブマシンガンを投げ捨てた。
私には、“こっち”だけあれば良い。
「行きます」
クロさんから貰ったハンドガンを、ホルスターから引き抜いて正面で短く構え。
姿勢を低くしたまま相手が逃げて行った先へと踏み込んでいくのであった。
さぁ、やろうか。
“この方法”だったら……私だって、貴方の勝ち方を知っているのだから。
コメント
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めっちゃ熱いエピソードだった…!シロちゃんが「6key」を目指してステータス振り直す決断、震えたわ。敵の“敵意感知”能力の分析も解像度高くて「なるほどそう来たか」ってなった。そして「友達が傷付くのを見たくない」って心情が刺さる…。超近接戦に切り替えたシロちゃん、マジでカッコよすぎる🔥続きが気になりすぎる!