テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
今週はなんだか、ずっと身体が重かった。
部活も勉強も手を抜きたくないのに、
どこかで無理をしていたのかもしれない。
休み時間も眠気とだるさが、
なかなか消えなくて、友達と冗談を
交わす声さえぼんやり遠くに聞こえた。
放課後。教室にはもう誰もいない。
遠く体育館の窓ガラスに、
夕方の光が反射してきらきらしているだけ。
さっきまでの喧騒が嘘のように静かで、
正直、持っていたバッグすら重く感じた。
そんな中――
ちょこん、と自分の机に腰掛ける
元貴の姿があった。
カバンはすでに机に置いてあって、
帰りの準備も済んでいそうなのに、
俺が何も言わないから
待っていてくれたんだろう。
元貴『……若井、どうしたの?
体調悪い、?』
元貴は俺の顔を見るなり、
ほんの少し心配そうに声を掛けてきた。
滉斗『あー、、なんか、疲れたみたい…』
もう、隠す気力もなかった。
俺はふらふらと元貴の隣まで歩いて、
そのまま机に突っ伏す――と見せかけて、
彼の腕にそっと頭をもたせかけた。
滉斗『…ちょっとだけ、こうしててもいい?』
頬が元貴の柔らかいシャツに押しあてられて、
心地いい甘い香りがふわっと鼻をくすぐる。
元貴『珍しいね、若井がこんなに甘えるの』
元貴が、驚いたように、そして、
ちょっとだけ嬉しそうに笑った気配がした。
すぐにその手が、
俺の髪をふわりと撫でてくれる。
――この手が、たまらなく好きだ。
部活でチームメイトに気を張っていたことも、
勉強で頭がガチガチに固まっていたことも、
全部、この瞬間にほどけていく。
滉斗『疲れたときくらい、
俺だって甘えたいよ、』
寝返り打つみたいに、
俺はもっと元貴に近づいた。
二の腕や肩口、どこでもいいから
少しでも多く触れていたかった。
元貴がそっと指先で首もとをなぞってくれる。
冗談みたいにこそばゆくて、でも、
それすら嬉しくて、
もっと甘えてしまいたくなる。
滉斗『…ずっと、こうしてたい……』
本音なんて普段口にしないけど――
今だけは出てしまう。
心が弱ってるのか、それとも、
元貴にだけは見せたくなったのか、
分からないけど、ともかく安心したかった。
元貴『眠くなってきた、?』
元貴の声が、耳元で優しく囁いてくる。
滉斗『うん、元貴の匂い落ち着くから…』
正直にそう呟いた瞬間、俺の頭を
優しく抱きすくめてくれるのが分かった。
まるで子供みたいだって、自分でも思う。
でも、今だけは全部元貴に
委ねてしまいたかった。
元貴『若井…』
ひとつ深く、優しい声。
そして、僕の額にそっとキスをしてくれる。
元貴『お疲れ様、……大好きだよ、』
こっそり呟かれるその言葉が、
疲れや弱さなんて、全部、
綺麗に包んで溶かしてくれる。
ああ、こんな風に全部さらけ出せるのは、
世界中で元貴だけだ。
滉斗『元貴こそ、俺を癒してくれる
ご褒美みたいなもんだな』
俺は腕を伸ばし、胸元にそっと抱きついた。
心臓のリズムが同じ速さで
響くような静かな時間。
放課後の教室、夕焼けの光のなかで、
2人だけの静かで特別な幸せに浸る。
たまには、こうして素直に甘えていいよね――
そんなことをゆるめた心で考えながら、
俺は元貴の優しさの中で、静かに目を閉じた。
コメント
4件
お互い甘え、甘えられの関係が泣くほど微笑ましいです🥹✨️ 続き楽しみにしています!