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若井side
長い部活の後、涼ちゃんが
『ちょっと話したい、お願い』と言ってきた。
その真剣な表情に、どこか胸騒ぎめいたものを
覚えながら、俺は屋上までついていった。
ドアを押して出ると、夕日と冷たい風が
校舎の上を滑り抜けていった。
2人きり。校庭の声も遠い。
滉斗『――それで、なんだよ?』
涼ちゃんは、いつもの冗談っぽい
口調を封印して無言。
しばらく柵の向こうを見て、
それから不意に、俺の方を見た。
涼架『今日さ、元貴元気なかったよな』
滉斗『え、そう?』
急に名を出されたことで身構える。
涼架『……若井に、
言っておきたかったことがあったんだ、』
涼ちゃんの手が軽く震えているのが見えた。
滉斗『……何?』
短い沈黙――。
言葉の隙間に、潮風のような緊張が流れる。
涼架『……俺、若井が好きだ』
まっすぐ、揺るぎない声。
言葉の重みが体に刺さる。
滉斗『本当に?……前から?』
涼架『ずっと、ごめん、
隠してた…でも、本気だよ』
はっきりした告白。
断るべきだ、と頭では分かっていた。でも――
ちゃんと返すその一言の前、
俺はドアの近くの気配に気づけなかった。
元貴side
プリントを渡すため、
屋上に向かって行った涼ちゃんを、
追いかけるべく、
屋上のドアの前に来た僕は、
ドアの向こうから漏れ聞こえる2人の会話に、
足を止めてしまった。
涼架『……俺、若井が好きだ、』
――涼ちゃん…
信じられないけど、錯覚じゃなかった。
やっと、彼は若井に気持ちを伝えたんだ、
――若井、なんで答えるんだろ…
しばらくして、若井の声が続いた。
滉斗『……うん、ありがとう、
お前の気持ち、ちゃんと受け取るよ、』
受け取る、って――
どういうこと、?
了承…ってこと、?
頭が真っ白になる。
そのまま、ドアを開ける勇気もないまま、
その場を離れてしまった。
――僕じゃ駄目になったのかな、
――若井には他にも、もっといい人がいる、
――僕、もう必要なくなったの……?
心臓がしぼむ音がした。
耐えきれず、階段の踊り場に座り込む。
ねぇ、若井…
僕、いなくても平気になったの、?
涼ちゃんのこと受け入れるなんて…
僕のこと飽きちゃった、?
次々に疑念が浮かび、涙が止まらなくなる。
そんな僕を、後から探しにきた若井が見つける。
滉斗『おい、元貴!
何やってんだよ!大丈夫か!?』
元貴『大丈夫なんかじゃ……ない、
あのさ…屋上で、、聞こえちゃったよ、』
滉斗『え、?』
元貴『“受け取る”って…
僕にはちゃんと言わないのに、
他の人になら優しくできるんだね……!
僕なんか……』
若井は動揺して、何度も否定する。
滉斗『違う、違う!そういう意味じゃ――、』
元貴『うるさい!!
僕のこと、もう好きじゃないの、!?
もう……僕、邪魔なの、!?』
涙が止まらないまま、
若井に掴まれた腕さえ振り払う。
滉斗『お前だけだよ、俺が好きなのは、!!』
その声がどこか遠く感じて、
元貴『嘘だ…だったら、なんで…
…なんで僕じゃないの……!』
ぶつけるように泣き叫んで、
持っていた涼ちゃんのプリントを若井に
押し付けて、若井から逃げる様に帰った。
夕焼けがうっすら昇降口に差し込み、
怒りと悲しみでくしゃくしゃになった心だけが、
しばらくそこに取り残された。
第48話がどっかいっちゃったので、
次回は第49話からになります…!😭
ご理解の程よろしくお願いします…!😭
コメント
4件
ただでさえ気持ちが不安定でしたもんね😭omrさんの気持ちが分かりつつも、そうじゃないんだよって分かっているこっちはハラハラします… 主さん…何とかしてあげてください…😭(?)