テラーノベル
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打ち上げ兼収録。飲食店で一人不機嫌な男、佐野勇斗は頬杖を突いて不機嫌の原因である人物を見つめていた。
(…柔太郎の奴、またかよ)
左手前から太智、勇斗。
机を挟んで右手前から仁人、柔太郎、舜太。
いつもの風景といえばそれまでだが、楽屋やこういった現場で柔太郎は必ずと言っていいほど舜太の隣に座る。
お試しで付き合うようになって3ヶ月。始まりは柔太郎からだったが、想いを打ち明けてくれたときには勇斗も意識していた。
無邪気に柔太郎にスキンシップをする舜太を見るたび苛立ちが止まらない。付き合う前は気にならなかった筈なのに、回を重ねることに気にしている自分がいる。同時期に加入した年下組の二人が仲が良いのも絆が強いのも当然だと頭では理解しているのに気に入らない。そんな自分も嫌だった。
(俺のことが好きなんじゃねぇのかよ)
じ、と見つめていると柔太郎と目が合った。思わず反射的に目を逸らしてしまう。まずい、と思ったが、その瞬間隣の太智から話を振られて何もなかったように笑って対応した。それから収録は何事もなく進んでいき、その日はお開きとなったが、仲の良いM!LKのメンバーは大体その後も数人残るのがいつもの流れ。勿論ムードメーカーでメンバー大好きな勇斗も大抵残るのだが、今日はどうにもそんな気にはなれなくてスッと立ち上がった。
「あれ、佐野サンもう帰るん?」
すぐさま太智が見上げながら声をかける。
「明日も撮影あるし今日は帰るわ。お疲れ」
「あー今度やるドラマの撮影やっけ?それやったらしゅあないな。残念やけど、また今度な」
ひら、と手を振り店の外へ。柔太郎がちらちらと心配そうな顔でこちらを見ながら、何か言いたげな素振りをしていたが、気付かない振りでタクシーに乗り込む。
「あー、俺カッコ悪りぃー…」
タクシーに深く座りはぁー…と深い息を吐きながら呟く。座席に後頭部を預けて右拳を額に当て最年長なのに余裕もない自分に嫌気がさしていた。その時、左ポケットに入れていたスマホが振動する。相手は見なくても分かる。だが、今は返す気になれない。
『勇ちゃん、何かあった?大丈夫?』
LINEを確認したのは、家に着いてシャワーを浴びた後だった。
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