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「あの会長と繋がっているから、どうにも嫌になったんです。ウレインのことは、誤解しちゃったけど良い人だと思う。でも……あの会長と同じ組織の人とは、あまり関わりたくないの」
ここまで言えば、私が本気で嫌がっているのだと伝わるだろう。
「そういう……事でございますか。ふむ……」
受け入れざるを得ないはず。
とはいえ、サービスをタダで貰っておいて、どの口が言うのかという後ろめたさはずっとあるけど。
「ならば! こうしましょう! 私が商工会を……」
――うん?
何か、話がさらにややこしくなるようなことを言おうとしている?
「――ちょ、ちょっと。まさか私のせいで商工会を抜けるとか何とか、大事にするんじゃないですよね?」
「あぁ、いえいえ。商工会を、もう一度私の手に戻そうと思います」
「…………ふぇ?」
理解が追い付かないまま、ヘンな声が出てしまった。
「ふふ。お可愛い反応ですね。その、今の会長は若過ぎると思いませんでしたか? あれは世代交代を促した結果なのですが……。やはり、少々早かったようですね。今一度私が会長に戻り、もう少し育成期間を設ける事にします」
「ええええぇ?」
でも言われてみれば、あの黒髪センター分けよりも、ウレインの方が似合っている。
佇まいも、隠しきれない貫禄も、懐の深そうな真っ直ぐな目も。
「そうと決まれば、すぐに長老会議を開くとしましょう。聖女様、現会長の失礼を改めてお詫び申し上げます。それでは、今日はこれにて失礼致します」
「……は、はい」
――とんでもないことになったわ。
呆気に取られて、数分くらいは会議室で呆然としていた。
ホテルを出て行く話も、なし崩しに言い負けてしまったし。
結局、彼の方が一枚も二枚も上……というか、ごり押しの仕方さえ小娘以上に人の言うことを聞かないって、ずるい。
そんなことをグルグルと考えながらエレベーターに乗り、部屋に戻ってはリズに一部始終を伝えた。
長くなるならベッドがいいと言われて、二人並んで寝そべりながら。
おなかいっぱいで、横になっていた途中だったらしい。
シェナも同じ理由で、隣のベッドで少し苦しそうな寝顔をしていた。
「サラって、とんでもクレーマーみたぁい」
「ちょっと! 今それすっごい気にしてるんだからね!」
そう。勝手にウレインが手のひら返しをしたと思い込んで、初手はケンカ腰で話を始めたから。
思い返せば性質の悪いクレーマーと違わないなと、自分でショックだった。
「だってさぁ。会長と面会くらい、してあげればいいのにぃ」
「嫌よ。あいつ話にならないし」
私が魔族だというのは、黙っていたようだけど。
でも、会長は本当に、嫌な奴だったし。
「そうなのぉ?」
「そうなの! でも……確証が無いのに、ウレインには悪いことしたわね……」
よく分からないけど、頑張ったのよねと、リズは私の頭を撫でた。
……そうだ。
あの嫌な会長との面談は断れたのだから、成果はあったのだ。
あったけど……。
ウレインが会長に戻るだとか、そのための長老会をするだとか、私を取り巻いて何か大きなことになっているのが、なんだか苦しい。
「真綿で首を絞められるって、こういうことかもしれない」
「なんのことぉ?」
綺麗なのにあどけない表情で、私を撫で続けるリズ。
この人のすごいところは、妙なことに巻き込まれないように、深入りさせられるのを本能で避けていることだと思う。
「リズはいいなぁ」
「もぅ。なんのことよぉ?」