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レンコン 煮付け
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彼が丁寧に竜馬に何度も礼を言うので、つい謙遜してしまった・・・とはいえ彼から花江さんの病状の報告を受けて安心した
あれから元気にしているらしい、しばらく話し込んだ後、彼はベンチに置いてあったピクニックバスケットのような籠を取り上げて、竜馬に差し出した
籠自体はどこにでもあるようなものだったが、なにか貴重品が入っているような恭しさだった
「祖母から友情の印に、ぜひあなたにお受け取り下さいとのことです」
竜馬は面食らい、籠の蓋を開けた・・・すると空の太陽のあかりを受けて輝く茶色い目が竜馬を見上げた
「わぁ・・・」
・.。. .。.:・
鼻が長くて美しい金色の毛の子犬が、フワフワのピンクの毛布にくるまれていた、その毛並みはまるでジャスティンの金髪のように鮮やかだ、耳は垂れ、小さな体つきの割には、前足が太いのが大型犬になる証拠だった
まだ短く、可愛らしい尻尾が小さく揺れてためらいがちに竜馬に挨拶していた、竜馬はあまりの愛くるしさにすっかり魅了され胸が熱くなる、ハハハっと声を上げて笑いながらそっと抱き上げた
花江さんは息子さん一家でゴールデンレトリバーのブリーダーで、今竜馬に抱かれている子犬はマックスの子供だと言う
すっかり心をこの仔犬に奪われた竜馬は、花江さんの贈り物をありがたく受け取り、自分が育てると言った、そしてこの仔犬はメスだったので、竜馬はその場で花江さんの名前を貰って「ハナ」にすることにした
ブリーダー件ドッグトレーナーの花江さんの息子さんはとても喜んでくれて、何でも相談にのってくれると言うので、心強いと竜馬は握手して別れた
一人残った時・・・籠の底に入ってる封をした手紙に気が付いた、仔犬を下におろしたくなかったので、なんとか抱っこしたまま親指で封を開け、手紙を開いた
送り主は花江さんだった―今度ここに来るときは彼女を連れてきてください、一緒にお散歩しましょう―と書かれていた
ハハッ「花江さんはきっと、僕が飼いたいと言ってたマックスを犬だと思ったんだろうな」
竜馬は仔犬を持ち上げて太陽にかざして眺めた・・・手足をだらりとさげ、尻尾を振って愛くるしい瞳で竜馬を見ている、背中は金色だが、お腹はクリーム色の産毛がびっしり生えている、どこもかしこも小さくて丸くて可愛らしい
キューン・・・「やぁ・・・初めまして・・・僕が君のパパだよ」
優しく仔犬を胸に抱いて話しかける・・・とても軽くて温かい、しかし、しっかりとした鼓動が指に伝わってくる
「お腹すいてるかい?僕もなんだ、それじゃ一緒にミルクを探しに行こうか?大丈夫・・・ジョギング中だけど君のごはんを買うぐらいの持ち合わせは持っているよ・・・フフフフ・・・・」
優しい日差しの中、竜馬はハナを抱いて家路についた
・.。. .。.:・
「確認しますが、この会議には最大限の守秘義務が課されていますか?」
「もちろんです 」
竜馬は社長オフィスで秘書の江藤に向き合って言った
「それなら正直に言おう」
秘書歴30年、秘書室長の「 江藤・ユンジン・米子」は スーツ姿で目の前を歩き回る松下竜馬をさりげなく眼鏡越しから見つめた
オフィスの壁一面の窓は、遠くは淀川まで見渡せ、文句なしの背景となっている、その景色と同じぐらい、自分の新しいボスはゴージャスだ、彼も眺めも、いとこのパク・ソジュンから定年前に是非にと推薦状をもらって、この会社に社長秘書業で務め出したのは悪くなかった
そしてこの数か月、一緒に働いたアメリカからやってきた、若く魅力的な最高経営責任者C E Oは仕事一筋のようだ
秘書歴30年の江藤は、いつでも仕事にプロフェッショナルを求める事業家の元でやってきたが、これほど冷淡な提案をする人物は、お目にかかったことがなかった
「僕はこの事業で大きな成功を収めましたが、さらに高みを目指したいと思っています、考えたんですが、この度、新しい部署を作る事にしました 」
「かしこまりました 」
「そのためにも(販売事業部設置)のために、ある一族に目をつけています、その一族のためにチャリティイベントを協賛したい」
竜馬の滑らかな額に皺が寄った、その事で頭がいっぱいのようだ、江藤はノートパソコンの隙間から彼を伺った、たしかこの仕事を紹介してくれた、いとこの「パク・ソジュン」の話では・・・ボスは優しい心の持ち主だと聞いていたが・・・・
今は彼は野心家のロボット人間のように見える、いとこは誰かと間違えているのではないだろうか
「何か問題でも?」
竜馬が江藤の方を見て、怪訝に目を細めた
「いいえ 」
江藤は眉一つ動かさず、無表情で答えた、心の中で思っていることをボスに見透かされるなんてプロの秘書として失格だ
「具体的には、どのようなチャリティをお考えで?」
江藤は話を戻そうとして尋ねた
「僕の方は投資と人員削減のメビウスが、新しく販売事業部と広告マーケティング部を新設すると、世間の注目を集めるものであれば名目は何でも構わないと思っています」
「かしこまりました、期限は?」
「二か月以内といった所でしょうか?」
驚いた江藤が眼鏡の奥で目をパチパチして言った
「わたくしに奇跡を起こせと?」
今度ばかりはさすがの竜馬も口元を緩めた
「そう願いたい、でないと効果が薄れます、ソジュンのお墨付きの鉄壁の秘書殿には、出来ないことなど何もないと聞いています」
ハンサムな上に口も上手い坊やね・・・人を魅了する術をその若さで誰から教わったのか・・・
江藤はため息をついて答えた
「やってみましょう 」
その時社長デスクの電話が鳴り、江藤が一息つけると胸をなでおろした
「宗一郎か?」
インターフォンを押すと声が聞こえた
「依頼していた弁護士から契約書が送られてきた、目を通さないといけない」
竜馬が江藤に説明した
「ちょっと失礼させて頂きます、あなたはここで仕事を続けてください」
「かしこまりました」
竜馬が出て行ってから、江藤は社長オフィスを見渡した、このCEOオフィスは簡素で個人的なものが全く無い、家族の写真もなければ友人と一緒の写真や額縁なども飾っていない、観葉植物さえもなく、これほど温かみのない環境は今まで数々のオフィスで働いてきた江藤も珍しい
つい最近、社長がオフィスに導入した 「フレキシブル・ワークスペースシステム」のせいだ、彼は仕事に個人的な情熱や感情は全く必要ないと考えている、それ故の彼の成功だとはとはいえ
あまりにも無慈悲な経営者はどうしたものか・・・
どうやらこのCEOに慣れるのは大変らしい、今夜にでもソジュンに電話しようと江藤は思った
・.。. .。.:・
「ハナ!!」
竜馬は腕を組み、1メートルの距離感を挟んで、金色の小さな小悪魔を睨んで言った
金色の小悪魔は怒られていることをわからず、茶目っ気たっぷりの目で竜馬に尻尾を振っている、遊んでもらっていると思っているのだ
物のみごとに、しっちゃかめっちゃかにされたリビングを竜馬はため息をついて眺めまわす、ハナはこの数日間で10個のティッシュの箱の中身を全部出し、それをぶちまけて、観葉植物をなぎ倒して、床を湿った土だらけにし、おまけにその上で十分楽しく転げまわったものだから、ソファーと床、廊下、壁のいたる所にハナの背中についた泥がこびりついていた
新しいインテリアで漆喰塗りだと言い通そうか・・・そしてソファーの背にひっかけていた竜馬のダンヒルのビジネスワイシャツを、ビリビリに引き裂いて、布状にしてそれをおもちゃにして遊んだ
さらに皮のソファーと椅子の足は、全部ハナの歯形がついて、リモコンのボタンのゴムの部分が欠けて無くなり、ボタンが押せなくなっていた
「どうしてこんなに悪さするんだ!僕が片付けている間、ゲージに入ってなさい! 」
プンプン怒ってひょいと片手でハナのお腹をすくってリビングの端のゲージに入れる、ハナはゲージから出たくて飛び跳ねている
「ステイ!」
竜馬はきっぱり言って、棚からダイソンのスティツク型掃除機を出してきて、ブツブツ言いながら掃除機をかけはじめた
ハナが吠えまくる、こんな所に閉じ込められて不愉快だと訴えているのだ
「ダメだ!今日はバツとして一日ゲージから 出さないからな! 」
ゲージにいるハナに向かって人差し指をかかげて睨む、そして壁の土の汚れを雑巾でふき取る作業に入った
ハナがキャンキャン吠える 『こんな所に私を入れるなんてひどいじゃないの!もうここから出してくれてもいいんじゃない ?』と訴える吠え方だ
「ここで甘い顔をするから、コイツは同じことをするんだ・・・ここは心を鬼にして・・・ 」
竜馬がブツブツ言いながら、あの可愛い小悪魔を見ないようにして片付け作業を続ける、ハナが『いいかげんにして!』と またひと吠えした
前とは違う声だ、竜馬を思い通りに操るための吠え方を彼女はいろいろ揃えている、悲し気な・・・かん高い仔犬の鳴き声は、ハナの奥の手の一つで 『パパ!!助けて!!』 の意味だ
悲痛な鳴き声をキャンキャン出している、操られているとわかっていてもその鳴き声を聞くと、ふき取り作業中でも、ついその鳴き声に気を取られてハナを見てしまった
「キャンッッ!!―パパ!こんなことしないで!―」
とハナが悲しそうな声で鳴く、竜馬とハナは見つめあった
2分後、竜馬はハナをゲージから出した
・.。.
コメント
1件
ふふ、竜馬がハナに振り回されてる様子、すごく可愛かったです!あれだけ仕事ではクールなCEOなのに、仔犬の鳴き声に負けてゲージから出しちゃうところがもう…(笑)花江さんからの手紙の伏線も気になりますね。優しいパパ業と厳しいビジネスのギャップ、これからどうなるんだろう?続きが楽しみです!