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Side Hedgehog


メンバーカラーの6色がマーブルになったひとつのキノコ。

それはかなり大きくて分厚い。記憶の中の、この森を探検し始めて最初のほうに見つけたキノコと全く同じだった。

周りの景色もおんなじ森だけど、もはや違いは曖昧だ。別の場所かもしれないし、また戻ってきてしまったのかもしれない。

やっぱりここはふつうの森じゃない。何というか、魔法みたいな特別なものが漂っている感じがする。

大我は「やっぱ綺麗」なんて言ってて、樹は「マジかよ」って引いていた。

「でも、俺もちょっと小腹空いてきたんだよね」

ジェシーが言って、慎太郎がそれならとそいつに手を伸ばす。俺と北斗、樹が揃って血の気を引かせる中、クマの手はキノコの茎みたいな部分を折る。そしてカサを器用に6つに分けた。

「はい、どうぞ」

それぞれに差し出すが、受け取ったのはジェシーと大我くらいだった。

「食べないの?」

「食べられるわけねーだろ…俺と樹、一応肉食だよ?」と北斗。

でもさ、と大我が樹上で揺れながら言う。「これがもし毒キノコだとしたら、今の動物の俺らはやられて、代わりに元の世界で人間になるかもしんないよ?」

5匹の頭の上にはハテナが浮かんでいた……ように見える。さすが大我。さっぱり意味がわからない。

「とにかく食ってみようぜ!」

俺を載せている慎太郎が、先陣を切ってキノコの欠片をぱくっと口に入れた。みんなは目を丸くする。そのとき、クマの身体がぱっと消えた。

俺は支えてくれるものがなくなって、地面に放り出される。とっさに身体を丸めた。

「うわっ、こーち大丈夫……って慎太郎は⁉」

ジェシーが叫んだ。慌てて俺はシマウマの足元に駆け寄る。

辺りを見回しても、クマの姿もヒトも見当たらない。

「ってことは、戻っちゃった…?」

北斗が恐る恐る口にする。それはみんなが思っていることだった。

ライオンの金色の瞳が、怯えの色を映す。

「じゃあ俺も食べよっ」

今度は、大我が軽率にも持っていた一切れをかじる。次の瞬間、コウモリが森から音もなく消え去る。

4匹は無言だった。視線を交わす。静かに覚悟を決めた。

「どっか行くなら…6人でだよな」

俺がつぶやいたのを皮切りに、ジェシーと樹、北斗もキノコを一口含む。空気に包まれるような不思議な感覚がして、意識がふわふわとどこかへ飛んでいった。


続く

ストーンズ動物記

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