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異能探偵局

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10 - Ep9 記憶 / 二宮

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2024年03月28日

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 二宮は、行方の言葉が気になり、全く眠れずにいた。

スパイって……誰なのよ……」

 ぐるぐると廻る思考は止まることを知らず、ずっと二宮の頭の中を巡らせていた。

「あー! もう、考えても分からないことを考えていたって仕方ない!! 私に出来ることは……!!」

 二宮は思い切りベッドから起き上がると、適当なノートの白紙を開き、シャーペンを手に取った。

「私は行方くんみたいに頭が良いわけじゃない……。私に出来ることは、しっかり状況判断して、自分に出来ることを精一杯やること……!!」

 そして、ノートに向かって乱雑に書き始めた。

 まず、最初に出会でくわした犯罪者。

 フードを被った取引担当の少年、『ジュース』

 彼の異能力は恐らく、自身の身体向上の異能。

 でなければ、跳躍や壁の破壊は出来ない。

 そして、次に出会した白髪の男、『キキョウ』

 彼の花の異能は、相手の異能を無力化する。

 最後に現れたのは、仮面の男

 恐らくは瞬間移動の異能を持っている。

 夏目の場合、印に対してワープを行うが、仮面の男の場合はどのような条件に寄るかは不明

 そして、少し見た程度だが、書類に載っていた面々は、特に異能力者と言うわけではなさそうだった。

 次に、異能探偵局が交戦に出られる人員。

 まずは春木班、春木春臣。異能は『トランス』

 自身のあらゆる箇所を変身させることが可能。

 以前見た時は、拳を岩に変えて戦っていた。

 恐らくだが、二宮の炎を防ぐ防御も可能。

 次いで、春木班、ラム。異能は『メデューサ』

 見た者を石にしてしまう危険な異能。

 背後を突かれない限りは無敵に思えるが、どれくらいの人数を石化させられるかは不明。

 次に、夏目班、夏目夏人。異能は『ワープ』

 印を付けた場所にワープすることが可能。

 交戦的とは思えないが、以前見た時は、自分の入っていた檻にそのまま閉じ込めることもしていた。

 あまり目立って表に出ないが、底は知れない。

 何故なら、行方が並々ならぬ信頼を置いてるからだ。

 次いで、夏目班、行方行秋。無能力者。

 優れた身体能力は無いにせよ、『異能探偵局の頭脳』と呼ばれる程、頭のキレる現役東大生。

 異能科学を学んでおり、自身の発明により、異能攻撃の対処が出来る武器ボックスを扱う。

 そして自分、二宮二乃。異能は『火炎』

 出来る行動は三パターン。

 まず、手や足から炎を出して空中・高速移動

 次に、前方に向かって高火力の火炎放射

 最後に、自身に炎を溜め、一気に爆破させる爆炎。

 しかし、これらをまとめて改めて思う。

「私にはトリッキーな技が何も使えない……!」

 今までの異能探偵局の戦闘、そして相手を見ている限り、頭脳戦になることが多い。

 そして、三嶋や二宮のように、No.が高位で、純粋な火力が直結する異能は、簡単に防がれてしまうのだ。

「これが本当の戦い……。犯罪者と戦うこと……」

 二宮は、正直ナメていた節があった。

 No.2の実力、高火力があれば、犯罪者をバンバン捕まえて、すぐにヒーローと呼ばれるのではないかと。

 しかし、現実は甘くはなかった。

 高校生の今が一番、異能力の発達しており、中でもNo.2を誇る自分ですら、大人の異能力者や、無能力者である行方に驚かされる日々。

 二宮は痛感していたのだ。

「異能の力だけじゃ超えられない壁……」

 朝日が差し込む中、二宮は机の上で寝てしまっていた。


「ねえ、二乃。貴女はどんな異能が欲しい?」

 二宮の夢に現れたのは、かつての母親だった。

 そして、抱かれているのは、異能発現前の二宮二乃。

「ママみたいな炎を出せる異能! あ、でも、パパみたいに空を飛べる異能もいいな〜!」

 二宮の母は、手から炎を出す異能力者。

 父は、空中浮遊の出来る異能力者だった。

 二人とも、そこまで力が強い訳ではなく、私生活に多少の楽ができる程度で、戦闘向きではなかった。

 異能は、両親のどちらかの異能が強化されて遺伝されるか、両方の異能が組み合わさるか、はたまた覚醒遺伝で、祖父母の代から発現するか、そのどれかだった。

「わあ……炎だ……!」

 二宮は、暫くすると手から小さな炎を発現させた。

「あら、私と同じ火の異能なのね!」

「うん! 私も嬉しい!」

 そんな温かい空間の中で、辺りは一変する。

「ママ……ママ……!!」

 辺り一面は火の海地獄。

 そう、幼少期の二宮の収まらない『火炎』が出火原因で自分の家を燃やしてしまったのである。

「ママ……!!」

 火の海の中で、二宮は母を見つける。

 しかし、既に肺には煙が充満し、酸素も底をつき、母は立てなくなってしまっていた。

 これが、異能発現してから暫く経った現在、一番に注視されている『成長してしまった子供の抑え切れない異能暴走による被害』であった。

 珍しいことではないが、科学班は、この事態の対処をする為、急を要していた。

「二乃……聞いて……絶対にこの異能を悪事に使ったらダメよ……。約束して……貴女の異能は、誰かを守る為の力なのよ……」


 気が付くと、二宮は涙を零し夢から覚めていた。

 母からの最期の言葉。

 それ以降、暫くの記憶が二宮にはなかった。

「また……この夢……」

 辺りは既に夕方になっていた。

 そんな中、突如として二宮の携帯は鳴り響く。

 着信相手は、行方行秋だった。

「もしもし……」

「二宮、今から出られるか」

「え……大丈夫だけど……」

「そうか、では迎えに行くから、十分後に家の前で待っていてくれ」

 そう言うと、プツリと電話は切られてしまった。

「なんなのよ……こんな気分の時に……」

 二宮はフラフラと支度をし、家の前で待った。

 暫くして、バイクを走らせる行方が現れた。

「乗ってくれ」

 行方は表情を変えないが、なんとなく二宮には、一抹の不安感が胸を締めていた。

 何も言わずに行方の後部座席に跨ると、確認した行方はバイクを走らせる。

 辿り着いた先は、夕日の綺麗な橋だった。

 夕日の光が川にキラキラと映し出されていた。

「何……ここ……」

「二宮、今からここに、“スパイが来る”

 その瞬間、二宮は背筋がゾッとなるのを感じた。

 半ば半信半疑ではあるが、行方の言葉に嘘はないことが肌で感じて分かっていたからだ。

 そして、暫くするとコツコツと一人の男が現れる。

「待ってました」

「急に呼び出してどうしたの? 行秋くん……?」

 現れたのは、行方たちの上司、夏目夏人だった。

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