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Side.赤
「やーっ、シャキーン!」
テレビに映っているのは、戦隊モノの番組。主人公が変身し、敵と戦うのに合わせて慎太郎も声を上げている。
おもちゃの剣を振り回して。
「ちょっと静かにしなさい」
なんて言っても、聞く耳は持たない。
「慎、声を小さくするんだよ」
正面に回り込み、顔を見ながら言う。
「んぅ…」
でも剣だけは振り回したいらしい。
それを横目にソファーでスマホをいじっていると、いわゆるパパ友から連絡が来た。
『こんにちは。今、時間ある?
良かったら、晴れてるし一緒に公園行こう』
幸いなことに今日は予定がない。快晴でお出かけ日和な週末だ。
「慎太郎、しょうくんと公園に遊びに行く?」
「うん、行く!」
その笑顔に、こちらまで頬が緩むのを感じた。
しょうくんのパパに車で迎えに来てもらい、公園に向かう。
「どうしたの、あのサッカーボール?」
後ろで彼が抱えているものを見て、運転席のパパに訊く。
「いやあ、こないだワールドカップ見てから『サッカーやりたい!』ってせがまれて。俺もちっちゃい頃やってたし、遺伝子かなあって」
そっか、と苦笑する。
「慎太郎くんは? 学校とかどう?」
慎太郎は普通学校の支援級に通っている。そして友達のしょうくんは普通クラス。
「うん、まあ上手くいってると思う。体育が好きみたいだし、勉強はいまいちだけど慎のペースでいいかな」
そうだよね、とうなずいてくれた。
「ああ、最近なんとかライダーってのにハマってて。俺も昔はそうだったなーって懐かしいよ」
「へえ、うちと一緒じゃん」
実際、後部座席でお喋りしている2人はどうやらその話で盛り上がっているようだ。
「新しいのはすごいよね。撮影の技術もどんどん進化してるし、デジタルのおもちゃとかもあるし」
そうだね、と嘆息する。
「でも…そういう好きなものに一回ダイブしちゃうと、宿題とかにいくのが難しいんだよね。嫌々モードに入っちゃう」
彼はなんでも聞いてくれるから、思わず愚痴がこぼれる。
「そっか、大変だね。でも先生もそんな怒んないんでしょ?」
うん、と答える。怒鳴れらたり怖い表情を見るとパニックに陥る子が多いため、なるべく叱らないのがあのクラスの指針だ。
「好きなものがあったほうが楽しいし、勉強もお友達とゆっくりやればいいよ」
ありがとう、と微笑んだ。
後ろでは相変わらず、2人の笑声が響いていた。
続く