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Side.赤


空いていたベンチに腰掛け、子どもたちにゴーサインを出す。

「慎太郎、勝手にほかの場所に行かないこと。いいね」

しっかりと釘をさしておく。

「はーい」

わかっているのかわかっていないのか、呑気に返事をしてしょうくんと駆けていった。

空は晴れ渡り、遠くに白い雲がぽつんと浮かんでいる。こういうのをピクニック日和というのかな、と思った。

「なんかここでお弁当でも食べたい気分だね」

しょうくんパパも言う。そうだね、と笑って相槌を打つ。

二人は小さな丘を登り、その上の滑り台に上がっている。目視できて安心だ。

ほかの子に続いて、しょうくんが滑り降りてくる。下りたところで後続の慎太郎を待つ。いいよ、というように手を振った。

「優しいね」

「ん?」

「しょうくん、ちゃんと待ってくれてて合図も出してる。いい子だ」

「そうかなあ。一人っ子だし、あんまそういうとこは考えられてないと思うんだけど」

首を傾けるが、

「そんなことないよ。そういうお友達がいてくれて嬉しい」

心から思ったことを、彼はいつもの笑顔で受け止めた。


周りでは、たくさんの子どもたちがきゃっきゃっと声を上げながら遊んでいる。平和な空間だ。

慎太郎としょうくんも、また丘に登ろうとしている。

が、

「あっ」

丘の階段の途中で、慎太郎がつまづいた。前を行くしょうくんも振り向く。

思わず立ち上がり、走り出す。「慎太郎!」

丘の中腹で、うずくまっていた。そばのしょうくんは困った表情だ。

「どうした、大丈夫か」

顔をのぞきこむと、今にも泣き出しそうだ。

右膝を怪我していて、わずかに出血している。どうしたらいいかな、とハンカチを取り出して当てた。

「痛いね…大丈夫だから」

パパも追いついてきて、

「ああ…、一旦車戻ろうか」

抱き上げて階段を下りる。車に乗せると、我慢していた涙が溢れてきた。痛いと泣き叫ぶ。

「ごめんごめん、ちょっと絆創膏貼るからね」

何かあったときのために鞄に入れていた絆創膏を貼り、頭をなでる。

でも、その手も振り払われた。「やだっ…!」

ごめんね、と後ろの二人に謝り、運転席に座る。

しょうくんとパパにも乗ってもらい、車を発進させる。

こうなったら今日中は機嫌が直らないな、と心に暗雲が立ち込めた。

窓の外は、相変わらずの快晴だった。


続く

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