「実際さ、オレたち運命だって思わない?」
「えっ?」
「だってさ。オレらが知らない時からオレたち繋がってたんだよ?」
「そういえば、前にもそんな話してたね」
「そう。親父が作ったこの会社の商品を透子が好きになってこの会社に入社してくれた」
「そうだ・・・。私がそもそもそれを好きにならなければ出会えなかったのかもしれないんだ」
「そう。そして、透子の支えになっていたネックレスは、オレの母親が作ったモノだった」
「うわっ、ホントだ!知らないうちに、私樹とすごく関わってた」
「そっ。前話してた時はさ、オレが今の道を歩んで来たから出会えたって言ってたけど。透子もさ、知らない間に自分からオレに関わってたんだよ」
「確かに。私が自分でそれを選んでた」
「だからオレらは知らない間に運命で繋がってた。出会うべくして出会う運命だった」
何気なく過ごしていた日常が、何気なく手にしていたモノが、すべて今の樹と繋がっていた。
きっとお互いの存在なんて知らなかった、その時から。
いつか出会うこの運命への道を、きっとお互いがその時から歩み続けていた。
でもその運命に気付かせてくれたのは樹。
樹がその運命の扉を開いてくれた。
「そう思うと不思議だね。お互いにその運命を知らない間に繋げてたってことだね。でも、それも樹が好きになってくれなかったら、すべて成り立たなかった。もしかしたら、ずっと出会わずに一生を過ごしていたかもしれない」
「それはあり得ないかな」
「え?」
「多分オレが透子を好きになることは必然だった。きっといつどのタイミングで出会ってもオレは透子をきっと好きになってた」
「うん。そうであってほしい」
「絶対に。いや、ってか出会わない運命ってないから」
「もう出会っちゃったもんね」
「うん。それもオレは両親に感謝しなきゃだな。二人が透子と結び付けてくれた」
「ホントにそうだね。お二人のおかげで樹と出会えた」
「だから、透子に出会えて初めて親父に心から感謝出来て、親父とちゃんと向き合えた」
「きっとここまで樹が歩んできた道も、過ごして来た時間も、きっと無駄なことなんて何一つなかったんだよ。この今の幸せに繋がる樹にとって全部必要なことだったんだと思う」
「うん。少しでも何かが違っていたら、今の幸せはなかったかもしれない。そう考えたらゾッとするけど」
「怖いね。出会えなかった時のこと考えたら」
もし私は樹と出会わなければどうなっていただろう。
樹と出会わなかった人生なら、どんな人生を過ごしてきたのだろう。
今まで樹が私に与えてくれたモノがたくさんありすぎて、あまりにも大きすぎて、樹と出会わなかった人生も、樹と出会わなかった自分の姿も、今は想像すら出来なくて。
今が幸せすぎるから。
樹と一緒にいる今が幸せすぎるから。
そんな無意味なことはもうまったく想像もしたくはないけど。
「もうオレには透子いない人生なんて考えられないから」
「私も。樹なしの人生は意味がない」
「だからこの先は一緒に幸せになろう」
「うん」
「これからはもっと今以上遠慮なく透子愛しまくるから覚悟して」
「それはちゃんと覚悟しなきゃね。じゃあ、私もそれに負けないくらい樹愛しまくるからちゃんと受け止めてね」
「喜んで。透子のすべてを受け止めて幸せだって実感させてあげる」
「うん。最高の幸せ期待してる」
「あっ、そうだ。ちょっと待ってて」
「ん?」
すると、樹がその場を立って部屋を移動する。
そしてしばらくして何かを手にして戻って来た。
「はい。これ」
「えっ・・何?」
「婚約指輪的な?」
そう言って差し出してくれた小さい箱に入った綺麗に光る指輪を受け取る。
「これ。うちの新ブランドで作ってもらった透子だけのオリジナルの婚約指輪」
「えっ・・これわざわざ作ってくれたの?」
「うん。これ婚約指輪ではあるんだけど、このプロポーズした記念に忘れずにずっとつけててほしいなって作った指輪」
「嬉しい」
「今日プロポーズしようって決めてたから。その時やっぱり婚約指輪は必需品でしょ。わざわざ新ブランドの発表会のあとだし」
「そこまで考えてくれてたんだ」
「ずっと透子につけてもらいたくて透子のこと考えて作った。このデザインなら普段からずっとつけてられるでしょ」
「うん。素敵・・・」
「ちゃんとこれからそれつけて、ずっとこれ見る度にオレ思い出してほしい。透子はオレのモノだって印」
きっとずっともちろん想い出す。
いつでもどこでも。