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わかってる。あいつらは、似てない。
──蓮司と、日下部。
どっちも、昔から俺を壊す側にいたけど、
どっちも、今の俺を見てるけど、
でも、見てる“深さ”が、違う。
蓮司は──笑ってる。
何があっても、何をしても。
俺が何を差し出しても、舐めても、媚びても、
「いいね、それ」って、笑うだけ。
汚れてても、壊れてても、関係ない。
きっと、壊れた俺を“おもしろい”と思ってるだけ。
可愛いとか、エロいとか、そういう目を向けるくせに、
中身なんか、ひとつも覗こうとしない。
俺のことなんか、どうでもよくて。
ただ、“壊れていく様子”が、好きなだけだ。
だからたぶん、
蓮司といるときのほうが、まだ楽なんだ。
期待しなくていいから。
「助けたい」とか言ってこないから。
やることは最低でも、
言葉は全部冗談みたいで、
そのくせ、触れ方だけはやたらと優しい。
──ムカつく。
なのに、ムカつかないふりする自分が、もっとムカつく。
日下部は……ちがう。
あいつは、俺の目をちゃんと見てくる。
「わかりたい」みたいな顔して、
でも、何もわかってない。
喋ろうとしてくる。踏み込んでくる。
なのに、肝心なところでは言葉を濁して、
俺の痛みを、“おまえのせいだ”みたいに投げ返してくる。
ガキの頃、何度も殴ったくせに、
今さら「助けたい」とか言うつもりなら──
殺せよ。
中途半端な“正しさ”で近づいてくんな。
「おまえは本当は悲しいんだろ」とか、
「耐えてるのは偉いことじゃない」とか、
──知ってるような口きくな。
全部、俺に言い聞かせてんじゃなくて、自分の罪を薄めたいだけだろ?
蓮司は、“なにも気づかないまま”俺を壊していく。
日下部は、“気づいたふりをして”俺を直そうとする。
そのどっちも、もう──いらない。
だけど、
俺がたまに、あいつらを目で探してしまうのは、
どっかでまだ、「見ててほしい」と思ってるからだ。
馬鹿みたいだな。
どこまで落ちても、
どこかで「わかってほしい」と思ってるなんて。
それが、たぶん──一番、壊れてる。