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結婚相手を間違えました

8 - 第8話 近付くふたりのその裏で③

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2025年02月20日

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家でたまたま妻――美鳥みどりにその話をしたら、「そうくんには彼女が出来て家を出たみたい」と聞かされて。

娘の耳にそのことが入るのも、そう遠い未来ではないだろうねと夫婦で溜め息をついた。


「年は離れていますが、うちの娘とかいかがでしょう?って部長さんに打診してみたら?」


そう美鳥みどり茂雄しげおに提案していた矢先だったのだという。

結葉ゆいはが、ハムスターを飼いたいと二人に持ちかけてきたのは。



「ゆいちゃんには悪いと思ったんだけど……何だかこれもご縁なんじゃないかと思っちゃって。お母さん、お父さんに頼んで先方さんにゆいちゃんの釣書と写真、渡してもらったの」


写真は二年ほど前のものだけど、そんなに見た目が変わっていないから、と成人式の時に振り袖を着て撮ったものを使ったらしい。


ハムスターのことももちろん、結葉ゆいはがその少し前に、そうの彼女絡みでのアレコレを、そうの父親経由で聞かされたことを知った小林夫妻としては、わらにもすがる気持ちだったのだ。


とりあえず向こうが結葉ゆいはのことを気に入ってくれたなら、一度ハムスターにかこつけて、娘を偉央いおの経営している動物病院へ送り出してみよう、と茂雄しげおと話して。


「あちらは結葉ゆいはのことをとても気に入って下さったらしい」


是非すぐにでも話を進めたいと言われたのを、事情を話して少しだけ待ってもらって、美鳥みどり結葉ゆいはに福助の通院先として『みしょう動物病院』を勧めた。

ついでにそこの先生がすごくハンサムなのだという情報も添えて、意図的に結葉ゆいはがそれを意識するように仕向けて――。


偉央いおの方には、世話人を通じて、結葉ゆいはが事情を全く知らない、ただの患者の飼い主客のひとりとして病院を訪れる旨を伝えた。


まるで奇跡みたいに、偉央いおの専門が小動物だったことにも、茂雄しげおとふたり縁のようなものを感じて、勝手に盛り上がってしまったのだと美鳥みどりは言った。


結葉ゆいはの反応を見て、娘も満更ではなかったと思った美鳥みどりは、今こうして結葉ゆいはに全てを打ち明けたのだ。


御庄みしょう先生、ゆいちゃんに何も言わなかった?」


きっと、今日結葉ゆいはが行った際、釣書を見ている偉央いお結葉ゆいはが見合い相手になるかもしれない女性だとすぐに気が付いたはずなのだ。


何らかのリアクションはなかったのかと美鳥みどりが気にするのも無理はないことだろう。


「べっ、別に何も――」


強いて言えば、診察室に入ってすぐ、結葉ゆいはがキョロキョロ室内を見回していたのを、静かに見守ってくれていたことが引っ掛かった結葉ゆいはだ。


普通ならすぐにでも声を掛けて、結葉ゆいはの暴走を止めた方がスムーズに診察が進んだはずで。


それをしなかったのは、もしかしたら偉央いおの方も診察室を見回す自分を観察していたのかも知れないと気が付いて、結葉ゆいははにわかに恥ずかしくなる。



「わ、私っ、診察室でキョロキョロしちゃって……」


突然恥ずかしそうに俯いた娘を見て、美鳥みどりが小首を傾げた。


御庄みしょう先生、何も言わずに私が先生の存在に気付くのを、待ってて下さってた……気がする……」


その時、偉央いおがどこを見ていたのかとか、何を考えていたのかまでは結葉ゆいはには知るよしもないのだけれど。



「それだけ?」


美鳥みどり結葉ゆいはの横に再度腰掛けて問うてきて……。

結葉ゆいはは「往診……」とつぶやいた。


「福助の飼育環境を見たいから……って。往診ついでにうちに寄りましょうか?って……言われた」



実はこれ、結葉ゆいはが、帰宅後真っ先に両親に聞きたかったことだ。


思わず成り行きで「お願いします」とか言ってしまったけれど、

〝――御庄みしょう先生が家にきても大丈夫か否か〟

それをふたりに確認してから、OKならいつが都合がいいかを煮詰めていかないと、と思っていた。



「ゆいちゃんは先生に何てお答えしたの?」


美鳥みどりが優しく手に触れてきて、結葉ゆいははグルグルと自分の中だけで考えていた思考を止めて、小さく吐息を落とした。



「つい勢いで『お願いします』って言っちゃって。でもお母さんたちの都合を聞かなくちゃって思い直して。両親に聞いて、またご連絡差し上げたんでも構いませんか、って……お話した……」


そんな結葉ゆいはに、偉央いおは「ではどうなったか、掛けていただけますか?」と、自分の携帯番号をメモ用紙に走り書きして、結葉ゆいはに渡してきたのだった。



「私の携帯番号は問診票に書いてあったからお伝えしなかったのだけど」


何だか色々種明かしをされた後で、今日の先生とのやりとりを考えたら、無性に恥ずかしくなってきてしまった結葉ゆいはだ。


「お母さんっ、御庄みしょう先生……私のこと」



ソワソワと言い募る娘を見て、少なくとも御庄みしょう偉央いおの方は、実物の結葉ゆいはを見ても幻滅はしなかったのだろうと……。

いや寧ろもっと気に入って下さったのではないかと、美鳥みどりはそんな風に思った。

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