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私はルークとニーノの三人でジークフリート達の眠る泉に来ていた。
時刻は早朝よりの深夜。
後もう少しで新年を迎えるということで、例の約束を果たすのと新年をお祝いするのを兼ねてこの場所を訪れていた。
「ミアよ、何故、この国が夜の国と呼ばれているのか知っているか?」
「え? 瘴気に包まれて常闇の世界だったからじゃないの?」
すると、ルークは呆れたように目を細めた。
「双子聖女の伝説以前より、我が国はその名で呼ばれていたのだぞ?」
「あ、そっか。なら教えて? どうして夜の国なの?」
「ミアお姉さまって意外と天然が入っているよね? 私はすぐに分かったわよ?」
へ⁉ それじゃ、分からないのは私だけなの⁉
「ほら、答えは簡単。夜空を見てみて」
私はニーノに促されるまま夜空を見上げる。
その瞬間、私は目を奪われた。
夜空には星々の川が流れ、宝石の如く無数の輝きがちりばめられていた。これほど美しい夜空を私は見たことがなかった。
「綺麗……夜空が美しいから夜の国って呼ばれているのね⁉」
「確かにそうなのだが……元の世界に戻ってからだいぶ経つが、今頃気付いたのだな」
ハアッと二人の呆れ返ったような深い嘆息が耳についた。
「だって仕方ないじゃない⁉ あれから国の復興とか傷病者の治療とか忙しくって夜空を見上げる暇もなかったんだもん!」
私はぷうっと頬を思いっきり膨らませながらそっぽを向く。
「それはオレも同じなのだが……そんなに不貞腐れなくてもいいだろうに」
そう言ってルークは乱暴に私を自分の胸元に引き寄せる。
「暖めてやるから機嫌を直せ」
「もっとギュッとしてくれたら考えてあげる」
「お安い御用だ」
ルークは私の要望通りギュッと抱き締めてくれた。
おかげで心も体もぽかぽかよ。
「ねえ、二人とも。私がいることを忘れないでよね……?」
今度はニーノがほっぺを膨らませ始めてしまった。
「それなら執事長のベルさんも連れて来ればニーノもぎゅってしてもらえたのにね」
私がそう言うと、ニーノは酷く狼狽しながら顔をボッと真っ赤に染めた。
「そ、それはそうなんだけれども……恥ずかしいからそれは言わないで。ふにゃあ……」
ニーノがふやけていると、地平線の彼方が白み始めるのが見えた。
「そろそろだ。カウントダウンを始めるとしよう」
そうして私達は地平線の彼方からゆっくりと顔を覗かせるお日様を眺めながらカウントダウンを始める。
ゼロと叫ぶ頃、私達の夢は叶うだろう。
悪夢は二度と私達の前に現れることはなかった。
fin