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ロボロさんが倒れたと聞いてすぐに駆け付けた。手術前は状態が酷く、頭からは血が流れ、お腹も切れて少し中が見えていて、吐血もしていた。手術中は俺たちが居ては邪魔なので外で待機しようとしたが、「自室に帰って気を落ち着けてこい。」と言われてしまった。そのため、部屋で待っていた。そして、ロボロさんが起きたと聞いたので、急いで医務室まで行った。ロボロさんは起き上がっていて、万全とまではいかないが回復しているはずだった。だったのに、ロボロさんは俺の事を忘れてしまっていた。他の人にはそんな反応を見せていなかった。だから俺だけを忘れているのだろう。
何でいつも俺ばっかり、、、!
そんなことを考えていると、コンコンコンというノック音。続けて「入ってもいいですか?」というエミさんの声。今にも泣いてしまいそうな、震えた声を歯を食いしばって出した。
「いいですよ。」
「では、失礼します。」
そうして入ってくるエミさん。俺は今泣いていて、きっと顔がぐしゃぐしゃのはずだから、と思いエミさんに背中を向ける。そして俺が質問しようとする前にエミさんが話し始めた。
「ショッピさん、今回の事はあんまり気にしないほうがいいですよ。きっとロボロさんもすぐにショッピさんの事を思い出しますし。」
それに、とエミさんは続けて言った。
「人は、大切な記憶ほど忘れやすいものなんです。きっとロボロさんにとって、ショッピさんは誰よりも大切な人だったんでしょうね。」
それだけ言い残して、エミさんは部屋を去っていった。大切な記憶ほど忘れやすいか。なんて不条理で、なんて、なんて、、、。
俺の複雑な気持ちは何故か少し、嬉々としていた。
ショッピと呼ばれた奴が出て行ってからしばらくした。相変わらず場には重苦しい雰囲気が漂っていて、なんだか心地悪くなってきた俺は直球にあいつとの関係を聞くことにした。
「なぁ、アイツと俺ってどういう関係なん?」
「、、、だいぶ急だな。」
「まぁ、少し気になってな。」
静かな医務室にグルさんと俺の声だけが響く。
「そうだなぁ、、ざっくり言うと相棒だな。」
、、、相棒?まさか、俺がそんな存在を忘れる訳、、!
「シャオロンの相棒は⁉」
「、、ゾムだ。」
「トントンの相棒は⁉」
「、、俺だ。」
そうやって質問しても、皆きちんとペアがいて、グルさんはただただ淡々と答えるだけだった。分かっていたことだ。皆にはペアがいる。誰がペアなのかもわかっている。残っているのは俺とアイツだけ。いやでもまて、アイツが幹部じゃなければ?俺だけペアが居ないのをみんなが案じて、そうだ!そう言う事や!そして俺はつい口に出してしまった。
「ショッピ君やっけ?幹部ちゃうんやろ?皆俺にペアが居らへんからって気を使わなくても別に!」
そこでバチンッという痛々しい音と激痛。手が伸びて来た方を見れば、泣きそうな顔のシャオロンがいた。
「ショッピ君に謝れ!あいつはロボロの背中を追ってこの軍に来たんやぞ⁉お前が倒れたって聞いた時も、誰よりも早くやって来て!」
そこでシャオロンは言葉も話せないほど涙を流し蹲った。シャオロンが蹲る前の一瞬、俺は悔しそうなシャオロンの表情を見た。言ってはいけないことを言った。そんな罪悪感が押し寄せて来た。
「クソッ!」
と俺は自分に対してキレた。なぜあんなことを言ったのか。一目見ればわかるほど俺を大切にしていた彼を、どうして俺は拒絶してしまったのか。悔しさと自分への怒りを込めて自分の腹を思いっきり殴った。皆は驚いた顔をしていたし、完全に治りきっていない腹が悲鳴を上げて、口から血が出てくる。治療しようとするしんぺい神に、言ってはいけないことを言ってしまった皆に「ごめん。」と、それだけ言って、俺はその場から逃げ出した。
扉を開けて中に入る。
「ショッピ君⁉」
と、皆さんの俺を呼ぶ声。俺は一礼して
「きちんとロボロさんに向き合って、俺の事思い出してもらおうと思います。」
と言った。実は先程まで皆さんの会話を聞いていた。ロボロさんが皆さんの相棒を確認するところから。本当に自分の事を忘れているんだなと悔しかった。でも悔しがってるだけじゃ、何もかえられないから。そう思い俺は、ロボロさんが向かったであろう、一つ空いている窓の方へ向かった。
あぁダサい。空気だけ悪くして自分だけ逃げだすのか。
「クソッ!」
とまた、自分の腹を殴る。すると
「そんなことしたらお腹痛んじゃいますよ!」
そんな聞き覚えのある声がして、振り返ると彼がそこにいた。俺が拒絶してしまった彼が。
「何のために来たんや?もうお前の知っとる俺はここには居らへん。」
冷酷に告げた。