ピピピッと鳴る目覚まし時計を止め。
服を着て、財布を手にして静かに部屋から出る。脱衣場で顔を洗い髪を軽く水洗いする。乾かしたあと、リビングに行き朝食を早く食べ家を出た。
少し肌寒くて、暗いがちょうどいい。
ヘルメットをつけ、原付を走らせる。
朝市は早めに行かないと新鮮な魚が売り切れる。そのため午前7時までには着かなければならない。
「4時半か……」
(スピード上げたら見つかるか…?)
スピード違反で捕まるのだけは勘弁だ。
時速30kmギリギリの速さで原付を走らせる
(何とか間に合ったか……)
今日も朝市は賑わっており、明るい。
俺はそんな朝市が大好きだ。
(アサリか…この前食べたからなぁ)
(お、イカ)
(このデカさで5000円は安いな…)
(しかもまだ生きてる…)
「すみませーん!!!」
「はい!」
「この5000円のイカください」
「はいはい」
「あー、あと水を少しくんでください」
「はい!」
「このイカはねぇいいよぉ!」
「さっき釣った」
「え、そうなんですね」
「嬉しいなぁ」
「お兄ちゃんかっこいいねぇ!顔」
「はははW」
「おまけあげる」
「えー!伊勢海老じゃないですかー!」
「ミソたっぷりはいっとる」
「ありがとうございます!」
「いいよいいよ」
「また来ます」
「待ってるよ」
やっぱり朝市が好きだ。俺を待ってくれる 。
上機嫌で原付にイカと伊勢海老が入った箱を置く。
(しまった、紐を忘れたな)
(あ、出せるのか)
俺は馬鹿だ。
手から太く、切れにくい紐を出し固定する。
ヘルメットをつけ、原付を走らせた。
帰る時の景色は来る時とは違い、
朝日が海から顔を出し、雲は赤く染っており暖かくなっていた。風邪は まるで俺を優しく包み込むかのように暖かく吹いた。
また来よう。そう思えた。