TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

侵略者たち

一覧ページ

「侵略者たち」のメインビジュアル

侵略者たち

23 - 021 白銀の女騎士(3)

♥

9

2024年12月11日

シェアするシェアする
報告する

 白銀の女騎士と、俺との距離は僅か数メートル。 目の前に血を流して横たわっている人物に、俺は眩暈がするような気分に襲われた。


「お前が……やったんだな……」


 俺の声は、わなわなと震えている。


 ゴゥッ!!


 反射的に刀を抜き、自分でも抑え切れないほどの蒼炎が吹き溢れる。


 キィン!!


 白銀の女騎士は、無言のまま俺の刀を易々と防いだ。


「剣筋が甘いな。我流だろう、貴様」


「うるっせぇ!!」

 ボォ!!


 刀が通じないのなら、と、蒼炎を噴出させる。

 しかし、女騎士はスルリと背後に回った。


「攻撃が単調。いざとなればその蒼炎を、馬鹿の一つ覚えのように吹き出すと思っていたぞ。データ通りだ」


「クソッ……!」


「落ち着いて、優!! 緑さんはまだ息がある!! 私の治癒魔法ならきっと治せるから!!」


 そのルリの言葉に、一瞬、冷静さを取り戻すと、学の瞳が、驚愕に震えている姿が映る。


「学……?」


 どうやら、学はただただ、白銀の女騎士を眺めている様子だった。


「どうして……姉さん……!」


「姉……姉さん……?」


 女騎士は、学と向かい合うと、武器を下ろした。


「久しいな、学。お前もこんなところにいたら、処罰を受けるのも時間の問題だ。早く技術班へ戻れ」


「ちょ、ちょっと待て……! なんで学の姉ちゃんが、ババアを殺そうとしてるんだ……! なあ……!!」


「それは、学くんのお姉さんが、UT変異体の育成班所属で、誰よりも強いと認められているからですよ」


 そこに現れたのは、大きな剣を持った大柄の男だった。


「誰だ……お前……」


「僕は、UT特殊部隊 総隊長 ビアンカ・D・ドレイク。そこにいるお姉さんに育成指導された者です」


「UT特殊部隊の……総隊長……!!」


「私は、アリス・F・マーマレード。UT特殊部隊の中隊長をしております」


 更に、ビアンカの背後から青髪の女が現れる。


「UT特殊部隊、並びにUT刑務局を手足のように動かせ、このように総隊長や中隊長までも、彼女の指示に従わざるを得ない。それだけ、この任務が重要と言うことです」


 そう言いながら、ビアンカはニコニコとババアに近付くが、俺は蒼炎で威嚇をしながら、その歩みを止めた。


「我々に歯向かうと……そういうことですか? もうすぐ刑務局の方々も来るでしょう」


「ババアは……ここで治療する……。絶対に殺させやしねぇ……絶対に……!!」


 その言葉に、ビアンカは武器を構える。


「少し……本気を出しましょうか」


「本気を出してくれるのか、そいつは光栄だな」


 そんな緊迫感の中で現れたのは、


「お前……ロディ……!」


「ほう……指名手配班のロドリゲス・B・フォードマンさんですね……。まさか貴方が加勢に来るとは……」


「ビアンカよ、久しいな。剣がよければ、剣で対峙してやっても良いぞ?」


 ロディは、余裕の笑みを浮かべながら、何も持っていなかった手から、スルリと剣を出現させる。


「総隊長……ここは私が……」


 アリスが武器を取った瞬間、炎が舞い散る。


 ゴッ!!


「安心しなよ、中隊長さん……。アンタの相手は、ここにいるから……」


 目にも止まらぬ速さで駆け付けたのは、ロスタリア・A・バーニスだった。


「早く……誰か早く、緑さんの拘束を……!」


 そう叫んだ女騎士の背後には、鮪美。


「よう、司令官殿……? 死神の手は要るかい……?」


「鮪美……! 貴様まで裏切ると言うのか……!」


「白銀の女騎士、佐藤歩。俺たちB型世代の頃から、現在も尚、UT変異体の育成訓練に当たる強者……。久々にご教授頂きたいもんだ……」


 それぞれが臨戦態勢を敷く中、ただ一人、武器を持たず、その白刃を縦横無尽に歩いていた。


「や、やめてくださいよ……皆さん……。姉さんも……姉さんは優しくて、格好良くて……他の皆さんも、口が悪かったりするけど、みんな優しい人で……」


 学は、ボロボロと泣きながら、どこを見るでもなく、全員に訴えかけていた。


「学……」


「もう……やめてください……もう……やめてくださいよ!! 姉さんは優しかったじゃないですか!!」


 学は泣きながら、女騎士、佐藤歩の甲冑を掴んだ。

 しかし、バッ! と、その手を突き放すと、学は尻餅を突かされる。


「お前みたいな弱い弟、私は知らない」


 そう告げると、総隊長 ビアンカに撤収の合図を向け、自身も武器をしまった。


「緑一派、UT刑務局の二人、そして、ロドリゲス・B・フォードマン。二日後、お前たち全員を処断する。刀の手入れでもしておくがいい」


 そう言って、歩率いるUT特殊部隊は撤退した。


「二日後か、我々も準備をしないとな!」


 ガチャリ


 先導を切って発言したロディに、鮪美から手錠をかけられる。


「ロス、16時27分、β司教逮捕だ」


「あいっス、連行しておきます」


「ちょ、ちょっと待て、刑務局の者たち!! 今は我々とて手を組むしかないだろう!! 我々はこれから、UT特殊部隊を相手取るんだぞ!! ん……? 私のことを逮捕しているが、貴様らも犯罪者じゃないか!! ハーハッハッハッハッハ!!」


 ザッザッと、いつもの砂利道を静かに歩く。


「ルリ、婆さん、どうだ?」


「無事。私は最強の魔法使いだから、それに、緑さんはなんとしてでも治すし……」


「そうか。学ー!」


 学は未だ泣きじゃくり、反応がない。


「お前、姉ちゃんのこと、好きか?」


 地面に座り込んで動かない学の横に、俺は座った。


「俺は、ババアのことを親のように思ってる。だから、今回の話を聞いた時、何をどうしたらいいか分からなくなっちまったよ」


 そんな俺たちの会話に、ロディたちも黙り込んだ。


「僕の両親は小さい頃、何者かに殺されたんです……。それで僕ら姉弟は、UT開発局へ拾われました。それからは強い姉さんが、僕の母親代わりをしてくれたんです……」


 再び、学はぐすぐすと泣き始める。


「そうか。じゃあお前にとってあの姉ちゃんは、姉ちゃんでもあり、母親でもあり……」


 学がふと横を見ると、みんなが学の横に並んで座っていた。


「”大事な人”なんだな」


 そうして、学の潤んだ瞳には、俺の笑った顔が映る。

 静かに、俺たちは立ち上がる。


「ババア、今日の帰りは遅くなるから、夕飯は要らねぇ」


「皆さん……どうして……」


 不安そうな学の目に、鮪美が答えた。


「さっき、監察から情報が入った。お前の姉ちゃんは踊らされてる。指令を出したのは警察庁長官に違いないが、そこに今回の情報を流したのは別の奴だ。ソイツの報告によればどうやら、『船橋・LU・緑は、異世界の侵略者たちの力を使い、UT技術の乗っ取りを企んでいる』というものだった。あの真面目な女騎士のことだ、逆らうこともなく、任務となったら即時即決で動きやがる」


「目を覚させられんのは、家族のお前しかいねぇよ」


 そこに、意識を取り戻したババアは、なんとか上半身を起こすと、ニタリと笑い、まだ何十本も残ったタバコをぐしゃっと潰した。


「まったく、私も悪ガキ共の躾には毎度困らされるね。ガキ共、一丁、暴れておいで」


 その言葉に返したのは、もう涙を溢してはいない、学だった。


「はい……行ってきます……!!」


 そうして俺たちは全員、武器を背負った。


 ――


 ◇緑一派

 鯨井・LU・優(蒼炎)

 ルリアール=スコート(魔法)

 佐藤 学(発明家)

 船橋・LU・緑(元UT変異体育成班)

 ロドリゲス・B・フォードマン(βの司教)


 ◆UT刑務局

 鮪美・B・斗真(死線)

 ロスタリア・A・バーニス(瞬身)


 ◇緑抹殺部隊

 佐藤 歩(白銀の女騎士)

 ビアンカ・D・ドレイク(UT特殊部隊 総隊長)

 アリス・F・マーマレード(UT特殊部隊 中隊長)

この作品はいかがでしたか?

9

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚