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部屋のドアの前でチョリソーが聞き耳を立てている。
迷宮には通路だけで無く、部屋も何カ所かある。
部屋には魔物が居たり、時々宝箱が置いてあるんだ。
チョリソーがドアから離れてこっちに来た。
「居るな、鳴き声がするが、種別は解らねえ」
「室内戦か、試してみてえけどな」
「俺が開けて、フロルが盾を構えて突っ込む」
「敵が多かったら、私がファイヤーボールを撃つわ」
「詠唱しといて、あとちょっとの所でドアを開ける。五体以上ならファイヤーボール、以下だったら詠唱破棄、でどうだ?」
「そうね、そうしようか」
銀のグリフォン団のメンバーは隊列を組んでドアの前で準備を始める。
『そは灼熱の諸元の組成、根源の地より来たれ……』
詠唱があと一節、という所でチョリソーがドアを開け、ランタンをかざした。
部屋の中にはゴブリンが四体居た。
我々を見つけて慌てて立ち上がる。
エリシアが詠唱破棄、チョリソーがボーラを投げる。
フロルが吠え声を上げてシールドバッシュで一匹吹き飛ばした。
ゴブリンは緑の肌をした小鬼で、体格はフロルと同じぐらいだ。
だが、力は結構強いらしい。
斬りかかってきたゴブリンの斬撃をフロルが盾で受ける。
ガッチャーン!
チラチラするランタンの灯りの下で銀のグリフォン団のメンバーは戦っている。
体勢の崩れたゴブリンの片手をフロルが切り上げて、そのまま剣の裏側を使うように横振りに変化させて首筋を薙いだ。
これは、さっきペネロペが教えた技だな。
血が噴き出して、ゴブリンは倒れた。
ラトカが部屋に飛びこんで、立ち上がりかけのゴブリンの頭をメイスでどついた。
崩れ落ちたゴブリンをラトカがメイスで殴る殴る、さらに殴った。
ゴブリンは動かなくなった。
フロルが吹っ飛んだゴブリンの胸を突き刺す。
チョリソーが転んだゴブリンの首を刈って、戦闘は終了した。
みんな強いなあ。
ラトカもメイスで戦闘するんだね。
「手が痛いー」
「力を入れすぎだぜ」
部屋はゴミなどで散らかっていた。
部屋の隅に宝箱があった。
さっそくチョリソーが取り付いたが、すぐ首を振って蓋を開けた。
「中は空だなあ」
「まあ、しょうが無い」
残念ながら宝箱は空だったようだ。
「ペネ姉ちゃん、あの技使いやすいな」
「良いだろ、また別の技も後で教えてやるよ」
「おおっ、ありがとうっ」
フロルは嬉しそうだな。
もう一つの部屋にも行ったが、そこは魔物も宝箱も無かった。
「宝箱はどれくらいで補充されるんだろう」
「三日ぐらいだな、なかなか当たるもんじゃないぜ」
三日に一度か。
「勝手に中に入ってるの?」
「そうだぜ姫さん」
「誰が中身を入れるの?」
「さあ?」
「ダンジョンの宝箱の中身を誰が入れるかは、色々な説があるね。ダンジョン自体の機能というのが一般的だよ」
「不思議ねえ」
「魔物も自動的にポップするからね、同じ仕組みで宝物も顕現しているのだろうって説が一般的だよ」
ダンジョンの魔物は倒されて二時間ぐらいで再出現する。
大体、いつも同じぐらいの数の魔物が迷宮を徘徊していると言われる。
迷宮の魔物は自然な生き物では無いらしい。
研究ではまったく同じ個体が時間をおいて発生したりするので、魔力で作られた複製ではないだろうかという説もある。
「ところで、フロル君」
「なんすか姫さん」
「迷宮って、おトイレはどうするの」
「無いです」
「無いのっ!!」
エリシアとラトカがずいずいと前に出てきた。
「おトイレ、無いの、だからお部屋の隅でちゃっとやるのよ」
「ええっ!」
「大丈夫、出したものとか、迷宮に吸収されるから、一時間ぐらいで無くなるのよ」
「迷宮に食われるだね」
「さすがハカセは詳しいな」
「迷宮は有機物を分解して取り込むんだよね」
「そうそう、剣とか盾とかは残るけど、死体とか、着てる物は迷宮の床に取り込まれちゃんうんだよ」
「そうなのねえ、そうしないと死体とか汚物でいっぱいになるわね」
この機能があるから、誰も清掃していないのに、迷宮は割と綺麗なんだよね。
まあ、スライムとかも死骸を食うけどね。
「よし、一階の探索は終了だ。一度地上に戻って、昼食にしよう」
「意外と狭いんだね」
「一階は転移ホールがあるからね」
そうか、転移ホールの分があるから、ちょっと狭いのか。
「助かるわ」
リネット王女はお腹を押さえてそういった。
迷宮はジメジメしていて、ちょっと寒いからね。
バリッとした見事な軽甲冑だから脱ぐのは大変だろうな。
「一度出て、また入るんだね」
「まあ、一階だからな、三階以上だと帰るの大変だから弁当を持って行くけど」
「昼からは二階か?」
「そうだな、一階は安定してるから、二階を見て、強そうだったら戻ろう」
「賛成よ」
パーティの適切な階層という物があるみたいだね。
銀のグリフォン団のレベルだと、まだ一階、二階が安全かもしれない。
「もう一枚、前衛が欲しいなあ」
「入ってやろうか」
「ペネ姉ちゃんは強すぎだ、バランス取れないぜ」
「残念だ」
ペネロペが前衛をやると、他の銀のグリフォン団のメンバーは、やることが無くなるからね。
居るうちは良いけど、離れた時に困りそうだ。
我々はのんびりと地上へ戻った。